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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2017年03月12日12時18分掲載
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「息が欲しい」といって死んでいった 永尾俊彦著『国家と石綿』 大野和興
ぼくらは「いしわた」と呼んだ。四国山脈の真っただ中の山村で育った。小学生低学年だった。学校に自慢気にもってきて、これがいしわただとみせびらかしたやつがいた。奥の方の集落から通ってきているやつだったが、彼がそれをどこで手に入れたかはわからなかった。珍しくて、いじりまわした。いしわた、せきめん、アズベスト。様々な名前で呼ばれる。「富国強兵・殖産興業」にとってなくてはならない重要鉱物だと知ったのは、ずいぶん後のことだ。埃となって舞い、肺に取りついて、人を死に至らしめるということを知ったのは、それから更に後のことだった。
石綿による被害が表に出るのは、2005年まで待たなければならなかった。 尼崎市にあった農機具メーカークボタの工場周辺の住民が、飛散した石綿で中皮腫というガンを発症次々と死亡している事実が発覚したのだ。この工場では、石綿で強度を強めた水道管を作っていた。
石綿はあらゆる工業製品や建築資材、そして武器製図に使われていたから、問題はどこまで広がるか、見当もつかなかった。政府は1971年に石綿を人体に有害な化学物質として指定していたが、ほとんど何の対策も講じていなかった。戦前も戦後も国策の中心に座っている「殖産興業」の邪魔にになると考えたからだ。石綿産業を末端でほこりにまみれて支えたのが在日コリアンをはじめとする貧困層だったことも、そのことをさら促進した。
喉をゼーゼーと鳴らし、「息が欲しい」といって、多くの人が死んでいった。
本書は、石綿産業の集積地域だった大阪・泉南を舞台に、国策のもとで呻吟する石綿被害者の実態を綿密な取材と洞察力で明らかにする。それは、表からでは絶対に見えない“もうひとつの日本の歴史”でもある。被害の実態と、それとたたかう人々の思いが具体的、実証的に積み上げられ、石綿被害が国家犯罪であることが証明されていく。
著者は毎日新聞記者を経てフリーのルポライターとして活動している。ジャーナリストがなしうる最良の仕事の一つがここにある。
(現代書館、2700円+税)
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