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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2017年05月10日15時31分掲載
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長いスパンで見抜く「大切なもの」とは―― 映画『オリーブの樹は呼んでいる』 笠原眞弓
地中海は、オリーブ文化圏といえるだろう。その1つの国スペインでの物語である。立派なオリーブの樹が並ぶ、スペインの農園の中。1人の老人が“その樹”に毎日会いに行っている。
ヨーロッパが好景気だった頃、古木のオリーブの樹が売買されていた。農園の樹齢2000年の樹を、息子が売ろうとしていた。ある日、反対する老人を無視して樹は掘り返され運ばれる。その日から老人は口を利かなくなった。
見終わったとき不思議な感慨があった。孫娘アルマの祖父を思うばかりの無謀な計画と、それをとめようとしつつも協力する友だち、知らずに付き合わされた村の人々の優しさの織りなす物語というだけでない。もう一つの何かが。
主人公は、樹齢2000年のオリーブの樹だった。この樹が売られていくということは、スペインのスピリッツが売られることなのか? オリーブは、人類が最初に栽培した植物といわれているらしい。そんなことからも、地中海地方のオリーブと人々のつながりは、日本人にとっての稲かもしれない。
先祖から受け継いだオリーブの古木をお金に替えたことに対して、村人も何となく棘のように胸に刺さっていたのだろう。だから人々は、「ロマン」に付き合ったとも思える。
アルマの父は、生活のために現金を得たかった。それは、悪いことだったのだろうか? 周りの金回りがよくなると、何となく自分もお金持ちになった気分になるものだ。日本でもバブルのころは、車がバンバン走り外食産業はいつも満席。街は不夜城だったし、フリーランスはカッコよかった。いつでも再就職できるからと小金をためては仕事を辞め、世界を歩いていた若者もたくさんみかけた。
いいことであれ悪いことではない。だがしかし……、である。 話しを映画に戻そう。祖父は、「この樹は生まれてくる前からここにあって、死んでからもここにあり続ける。一緒にいられるのは一瞬なのだ。この樹を切ってはならない」と反対する。それなのに、父親は売ってしまう。人間にとって、70年、80年は一生でも、樹にとっては、季節が一回巡っただけなのかもしれない。その日から口を利かなくなった祖父、元気を失っていく祖父を見るたび、父親を攻めるアルマ。祖父を元気にしたいと思い詰めたアルマの行動は……。
ここで駆使されるのが、インターネットであり、大企業のエゴイズムによる古木の移植である。2000年かかって大きくなった樹を、瞬時に探し出すネットの時間。環境に配慮している企業を印象付けるために利用される、ローマ兵も見たであろう樹を移植する傲慢。その移植先は、ドイツ。セキュリティーに放り出されてもあきらめない彼らの前に、ドイツの環境団体が……。途中に挿入される自由の女神のレプリカと、それを叩き割る叔父。他にも読み取れるいくつかの暗喩を探すのも、また面白い。
そして最後、父の作業をアルマがじっと見ている。そこに、人知を超えた「赦し」を感じる。
新たな2000年は、どんな日々を刻むのか。
監督:イシアル・ボジャイン「ザ・ウォーター・ウォー」 脚本:ポール・ラヴァーティ「天使の分け前」「わたしは、ダニエル・ブレイク」 99分 スペイン
シネスイッチ銀座 5/20から上映。その後全国順次公開。
(C) Morena Films SL-Match Factory Productions-El Olivo La Pelicula A.I.E
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オリーブの樹1
オリーブの樹2
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