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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2017年06月10日10時56分掲載
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医療/健康
夜勤ナースの独り言(39)
夫に脳腫瘍が発覚してから約2か月後の昨年6月7日。待ちに待った手術日を迎えました。この間、腫瘍周りの浮腫みが増大して急激に具合が悪くなる事態もありましたが、何とか手術にこぎつけました。 約2か月間、不安が常に付きまとい、気が休まることが全くなく、「もしかしたら他の病院で早めに手術を受けるという選択肢もあったかもしれない」などとヤキモキして焦ることもありましたが、手術日を迎えてひとまず安心しました。
某大学病院は常に満床に近く、入院に関する説明の際、「もし、ご希望の大部屋(6人部屋)が空いていなければ、個室または2人部屋に入院してください」と伝えられました。 個室や2人部屋は、大部屋と違って差額ベッド代がかかるので、1泊の部屋代が1万2千円から2万円近くになります。そして予納金が10万円〜15万円。その他、身の回り品や食費など、数週間の入院だけでも最初にまとまったお金が必要になります。 看護師として仕事をしてきた私ですが、入院手続きや書類関係は全て事務の人に任せてきたので、私自身、入院費用についてはあまり知らずに過ごしてきて、今回夫が入院して初めて知ることも多くありました。夫の場合は、幸いなことに大部屋が空いたので、差額ベッド代無しで入院できました。
建物が古く、老朽化が激しい某大学病院の病室は本当に狭く、カーテンで仕切られたスペースは、車椅子1台がやっとベッドサイドに入れるくらいの広さしかありません。薄い仕切りに狭いスペースは、震災時の避難所にも似て、長く滞在すると体調が悪くなって病気も悪化するような・・・。 夫に限らず、入院患者さんはみんな心細くなるというか、不安になることと思われます。でも、「この狭いスペースでの生活が何年も続くわけではない」と思い、夫にはしばらく我慢してもらうことにしました。
脳の手術なので、夫は手術前日に髪の毛をバリカンで剃って僧侶のようになりました。生まれ変わるべく出家する感じです。 手術前日は結構忙しく、夫は脳浮腫のせいでフラフラしたり、眩暈がしたり、歩く速度が遅かったりするのに、麻酔科の医師との面談をこなしたり、術中にMRIを撮るため、そのマーキングのための検査に呼ばれたり、医師から説明を受けたりと忙しく動き回っていました。仕方がないとは言え、傍から見ていると、かなり無茶ぶりされているような感じです。
入院2日目。ついに手術当日です。夫は、朝早くから手術着に着替え、点滴に繋がれてスタンバイしました。手術室には歩いて向かいます。そして午前10時15分に手術室へ入室。私も、70代半ばの義父母と一緒に手術室前まで付き添いました。 東北で暮らしている義父母は、大事な長男の手術を見守るべく手術前日に上京し、病院近くのビジネスホテルに泊まりました。手術中にどんな事故が起こるか分からないので、万が一に備えて東京に呼び寄せたのです。 特に義母としては、腹を痛めて産んだ可愛い我が子(しかも夫は長男)ですから、さぞ心配だったことでしょう。義母は、手術室に入る直前まで夫の名前を呼んだり、手を握り続けるなどして、夫婦水入らずで会話する機会をくれず、正に“義母オンステージ”のようでした。もう少し私に役割を譲ってくれても良い気がするんですが・・・。「嫁姑問題は些細なことで勃発する」と言われるのも本当だと思いました。
今、1年前の出来事を振り返っていますが、あの当時は心に余裕が無く、夫の世話を焼きながら、東京滞在中のホテルの宿泊手続きなど義父母の面倒も見て、さらに義父母に頼り切られて、私は心身ともに疲れ果てていました。 そのうち、現実逃避するかのように「私の人生、自分のためだけに生きたい。もう他人と関わりたくない」と思ってしまうこともあって・・・。当時の私は精神的に病んでいたように思います。(れいこ)
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