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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2017年06月22日10時18分掲載
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ノルシュテイン&ヤールブソワ作 「きつねとうさぎ」(ロシア民話) 言葉を操る者が支配者になる寓話
ノルシュテインとヤールブソワのロシア人のカップルは「霧につつまれたはりねずみ」など世界的に名高いアニメーションを作ってきました。夫のノルシュテインが作品の構成を作り、奥さんのヤールブソワが絵を描く、という割り振りのようです。今回紹介する「きつねとうさぎ」もそうした作品の1つで、アニメーションになっていますが、日本では絵本としても福音館書店から翻訳出版されています。
物語は非常にシンプルです。兎が暮らしていた家が狐に騙され、乗っ取られてしまう。森で兎が一人泣いていると、通りかかった狼が事情を聞いて、それでは私が助けてやろうと言って二人で狐の占拠する家に出かける。ところが出てきた狐はものすごい勢いで罵倒する。
「お前など引きちぎってバラバラにしてやるわ。お前の肉片は風に乗って散っていくだろう」
こんな激しい言葉を浴びせられた狼は這う這うの体で逃げ去っていく。その後出会う熊や牛も同様で、体だけは大きいが、心は臆病で狐の言葉にショックを受けて退散してしまう。
兎が森で泣いていると、今度は雄鶏が現れて、兎を助けてあげましょう、と言う。兎は小さな雄鶏にはとても無理だろうと思うが、雄鶏についていく。すると雄鶏は剣を手に、狐よりも先に大声で名乗りをあげた。
「僕は強い雄鶏だ!剣を取ったら世界一だ。お前を殺して毛皮の帽子を作るぞ!」
すると狐は驚いて這う這うの体で退散していき、雄鶏と兎は仲良く一緒に家で暮らしました、という物語です。ヤールブソワの非常に見事な絵がこの物語を色づけしていますが、この絵本は何かものを考えさせる読み物になっています。読んだ後に、何かが残るのです。つまり、これはどういう意味なんだろう、どういう寓話なんだろう、という謎解きを読者は始めるのだと思います。
それで考えていくと、この物語の鍵を握るものは言葉と想像力、ということになると思います。一見屈強で体の大きな熊や牛や狼は言葉を持っていなかった。しかし、狐は巧みに言葉を操る能力を持っていた。その言葉は獣たちの恐れているところにストレートに届いていく鋭い言葉だった。だから、熊や狼たちは自分の心の奥深くに潜んでいた恐怖を駆り立てられ、手もなく退散してしまう。ところが一見、軟弱な雄鶏は言葉を狐以上に操るのが巧かった。そこがこの闘いの決め手になったと言うことがこのロシアの昔話をアレンジした物語の教訓なのだろうと思います。
権力を持つ者は企業社会でも政治の世界でも言葉を操るのが巧みです。嘘がうまいということです。うまいだけでなくて、嘘をつくことにこだわりはありません。これは支配者たる者の(悪しき)資質とも言える要素でしょう。統治する民衆を時には喜ばせ、時には身動きできないほど恐怖に駆り立てる。中身は何もないのに、言葉を駆使することで人々を動かす。この能力がある者は体が小さくても支配者になれるのです。そして、現代ではこの言葉の使用にマスメディアという拡声器が絡んでいて、支配者はマスメディアという拡声器を自分の道具にしています。
村上良太
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