先日、秋葉原の都議会議員選挙の演説で根強い反対の声に出会った安倍首相だが、目下最大の悲願は言うまでもなく、憲法改正で緊急事態条項を通すことに他ならない。憲法9条が目玉のように未だにマスメディアは報じているが、安倍政権や日本会議にとって最大の狙いが合法的に独裁化を確立できる緊急事態条項だろう。緊急事態条項があれば9条の改正などしなくても憲法が実質的に停止できるからだ。
●緊急事態条項が発令されれば以下の可能性を考えておく必要があるだろう。
・集会の禁止(デモだけではない)
・新聞・ラジオ・テレビその他ネットが政府の統制下におかれる。報道機関に政府・公安機関職員が常駐し、放送・原稿内容に指示を出す。
・令状なく家宅捜索を受けたり、取り調べで連行されたりする。ジャーナリストはいつでもパソコンや端末を押収される。
・労働組合を改組して政府・財界傘下のものにする (これは過去にドイツや日本であった歴史である) ストライキ権は停止される
・自治体や企業の業務も政府の必要で変更させられる
・選挙が行われなくなる (今の議員がずっと続く)
・国会議員でなく内閣が法律を自由に作れるようになる (これらの法律は憲法に拘束されない)
・刑法改正でスパイ罪や内乱罪など死刑を大幅に増やせる
・旅行や移動が制限される
・演劇・音楽公演が許可制となり、検閲を受ける 反政府的なグループは解散を命じられる
・必要があれば政府の命じる労働に従事させられる
・財産や土地建物などが必要に応じて供出させられる
・税が重くなる
・拷問が復活する
・政府の意に従わない裁判官と教職員が大量解雇される
・緊急事態下に起きた人権侵害は処罰や補償の対象にならない
・・・
などなど、様々な恐るべき事態が起こりうる。緊急事態というのは一種の戦争であり、戦争と言う行為は敵を殺し殲滅するのが実態である。右翼作家がツイッターで書いたように、日本人であっても「敵」と見なされれば殺される。
首相の宣言によって日本が「緊急事態」に突入して、それが「戦時」に移行すると、たとえ具体的な戦闘がなくても戦争状態は継続しうるし、その場合、非常事態は国会議員の承認で何度でも更新されていくことになりえる。ナチスは緊急事態法である「全権委任法」を1933年に制定した後、4年ごとに緊急事態の更新を繰り返し、1945年5月のナチス政権の崩壊まで12年間緊急事態を続けた。ヒトラーは全権委任法を導入した1933年にすぐに野党を禁止し、一党制にしたうえ、労働組合を解散してナチス傘下の一大翼賛組織に統合した。これで労働者も市民も二度とストライキが打てなくなった。ドイツの場合、第一次大戦を止めたのは労働組合によるストライキだったから、労組解散は政府・軍部・財界の悲願だった。
こう書けば、いったいナチスと安倍政権がどうつながるのか、と思う人がいるかもしれないが改憲運動のブレーンである日本会議の百地章教授(憲法学)はナチスの全権委任法の研究をしたことをメディアのインタビューで語っているし、麻生太郎副首相は改憲の方法はナチスに学べと言った。改憲のためにナチスの手法を研究してきたのが安倍政権と言えるだろう。
思うに今、我が国で緊急事態条項の導入を急いでいるのは共謀罪と同じで、国民が政府に反抗できなくすることが狙いである。日本経済はこれからかなり厳しい時代を迎える。財政赤字も積みあがってしまったのだ。だから、国民が不満をぶつける可能性がある。その意味で与党の政治家は先手を打つ必要がある。
また、緊急事態条項ができれば内閣の人々は不都合なことを国会で質問されることもなくなる。そのようなジャーナリストは拘束されたり、個人や企業の財産・資産を没収されたりする。カメラもマイクも編集機も没収だろう。タイではクーデターの時に実際に起きたことである。トルコでも同様の事態となっている。政治の目的であろうとなかろうと、公共の場所で集まることが禁じられる。政府の許可を得た者だけが容認されるだろう。安倍政権にとっては今、抱えている嫌なことはすべて永遠に雲散霧消できる魔法の箱が緊急事態条項である。これを通すためには国民のためになるということをマスメディアを通して繰り返し、刷り込まなくてはならないだろう。今のメディアの状況を見れば緊急事態条項は来年春には改憲の国民投票で実現される可能性がある。
村上良太
■山口定著「ファシズム」2 〜全権授与法(全権委任法)と国家総動員法〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312031412342
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