スイスのヌーシャテル大学などの研究チームは10月6日、世界各地の蜂蜜の75%が少なくとも1種類のネオニコチノイド系農薬を含んでいるとの研究結果をサイエンス誌に発表した。2000年代に入って世界的に使用が広がったネオニコチノイド系農薬は、ミツバチの大量死の原因とみられているが、今回の研究結果は、ネオニコチノイド系農薬の汚染が世界規模に広がっていることを明らかにした。ミツバチのみならず、地球的な規模で、花蜜に依存する野生の送粉者(ポリネーター)に影響を及ぼしていることも示している。(有機農業ニュースクリップ)
研究チームは、世界各地から198の蜂蜜のサンプルを集め、そこに5種類のネオニコチノイド系農薬(アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド、チアメトキサム)が含まれるかを調査した。その結果、75%のサンプルで、少なくともいずれか1種類のネオニコチノイド系農薬を含んでいたとしている。サンプルの45%は少なくとも2種類を含み、10%は4種類、もしくは5種類を含んでいたとしている。
少なくとも1種類のネオニコチノイド系農薬が見つかったサンプルは地域的に最も多かったのは北米で、86%から見つかったとしてしている。アジアでは80%から、ヨーロッパでは79%から見つかり、南米のサンプルでは57%だったとしている。太平洋の真ん中の島や、西アフリカの沖合の島のサンプルからも見つかったという。
研究チームは、今回の調査で検出されたネオニコチノイド系農薬の量は、人の健康には影響にないレベルだとしている。
共同通信によれば、「ミツバチの生態に影響を与える恐れがある。他の農薬が加わることで、より深刻になるかもしれない」と研究チームが指摘しているという。
・Science, 2017-10-6 A worldwide survey of neonicotinoids in honey http://science.sciencemag.org/content/358/6359/109
・Science, 2017-10-5 Pesticides found in honey around the world http://www.sciencemag.org/news/2017/10/pesticides-found-honey-around-world
・共同, 2017-10-6 蜂蜜75%にネオニコ系農薬 ミツバチ大量死に関連か https://this.kiji.is/288732793692636257?c=113147194022725109
・Nature, 2017-10-5 Controversial pesticides found in honey samples from six continents http://www.nature.com/news/controversial-pesticides-found-in-honey-samples-from-six-continents-1.22762
日本でも8月、千葉工業大の研究チームによって同様の研究結果が報じられている。共同によれば、東北から沖縄の9都県の73サンプル全てでネオニコチノイド系農薬が検出され、6割以上が暫定基準を上回ったという。
・共同, 2017-8-28 蜂蜜やミツバチ、広がる農薬汚染 9都県で検出 https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG28H21_Y7A820C1CR0000/
ネオニコチノイド系農薬の検出が最も多かった米国では、種子コーティング用のネオニコチノイド系農薬の使用量が2005年ごろから急速に増大している。
今年6月には、バイエルクロップサイエンスなどが資金提供した、英国、ドイツ、ハンガリーで行われた大規模な屋外調査の結果、ネオニコチノイド系農薬に曝されたミツバチのコロニーの減少が確認されたと発表されている。
EUでは2013年12月より、イミダクロプリドなど3種類のネオニコチノイド系農薬の使用を一時的に禁止し再評価を進めている。近くこれら3種類が、正式に全面的に使用が禁止されると見られている。カナダ政府は2016年11月、段階的にネオニコチノイド系農薬の一つイミダクロプリドの段階的禁止を明らかにした。また、ミツバチの大量死に直面したカナダ・オンタリオ州は、2015年から段階的にコーンと大豆への使用を原則的に禁止している。
(参考) ・ネオニコチノイド農薬関連年表 http://organic-newsclip.info/nouyaku/neonico-table.html ・ネオニコチノイド農薬:各国の規制状況 http://organic-newsclip.info/nouyaku/regulation-neonico-table.html
【関連記事】 ・No.828 ネオニコチノイド系農薬 初の大規模屋外調査でも有害とダメ押し http://organic-newsclip.info/log/2017/17070828-1.html
・No.846 浸透性殺虫剤タスクフォース 新たな知見盛り込む評価書2版を発表 http://organic-newsclip.info/log/2017/17090846-1.html
・No.811 ネオニコ種子コーティング 圃場周辺を広く汚染 94%の飼養ミツバチが拡散した農薬に曝される http://organic-newsclip.info/log/2017/17050811-1.html
・No.750 カナダ イミダクロプリドの段階的禁止へ踏み出す http://organic-newsclip.info/log/2016/16110750-1.html
・No.644 カナダ・オンタリオ州:ミツバチ保護でネオニコ規制強化 http://organic-newsclip.info/log/2014/14120644-1.html
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