Q 具体的に政治を動かしていくための仕切り直し、というような決意で民主党に移られたんですか?
辻元清美 民主党は小選挙区制度のもとで政権交代をして政権を担いました。私の場合、小選挙区で当選していますが、社民党を支持してくださる方たちだけでなく、民主党、国民新党を支持している方たちにも投票していただいたんですよ。それは、政権を担って新しい政治をつくれ、という声でした。 政権を民主党、社民党、国民新党で担ったわけですけれども、8か月で社民党が政権離脱したんですよ。で、私はこの3党で政権を担わしてください、ということで当選させていただいたので8か月で政権を離脱してしまうのはある意味、無責任ではないか、と。だから私は、育ててくれた社民党を辞めることになりました。批判もたくさんいただきましたが、仕事で返すしかないと思いました。 選挙制度の違いで議員の姿勢も変わります。小選挙区で勝とうと思ったら、自分の選挙区でどれだけ実質的な、実体的なものを作っていけるかを訴えないといけない。全国比例になると、むしろ主義主張を先鋭化させることで、共感する人を全国で集めることができる。
Q 「実体的」というのは田中角栄さんが選挙区に橋を作ったみたいな?選挙区で何か具体的に形に残す、と?
たとえば私の選挙区である高槻市は35人以下の学級を、早い段階で実現しているわけですね。また私は議員立法でNPO法を作りました。いま自分の選挙区にNPO団体が100団体以上できています。男女平等政策でも、ただスローガンをいうだけではなく、私の選挙区の島本町では選挙を通して10年以上前に議会の男女同数を達成しているんですね。というように実際にやらなきゃいけないわけですよ。
●官邸入りして考えた「果たしてリベラルは国の統治ができるか」
Q 民進党から立憲民主党が生まれた時に、民進党時代の混沌とした部分がなくなってすっきりした、という人がいました。右派の人たちが抜けたことで。これについて、辻元さんはどうご覧になりますか?
私は、一定の幅がないと政権は担えないと思っています。私は鳩山政権時代に国土交通副大臣をやったり、東日本大震災の時は菅政権で総理大臣補佐官をつとめて官邸で働いたりしているわけですけど、その時の私のテーマは「権力の市民化はできるか」ということでした。「果たしてリベラルは国の統治ができるか」「リベラルは権力を持った時、果たして機能するか」ということが永遠のテーマですね。その答えはなかなか見つかっていないんですけれども。
Q 辻元さんご自身がリベラルと言う立場ということで、国の権力を握った時にリベラルであり続けられるか、と?
重要なことは、統治をしていけるか、です。それで、民主党政権の時には政策の決定過程に、NPOの人に入ってもらったりとか、あと官邸に市民やNPOの人たちの代表者で円卓会議を作ってそこで法律や税制の改正をやったりとか、いろんな取り組みをやってきました。それが未だ、トライし続けているという状況なんですよね。
Q 先ほどの話で幅がないと政権を担えない、ということでしたが、立憲民主党になったときに、一部の人が「希望」に行ったり、無所属になったりということがあり、人によっては立憲民主党になってすっきりしたという人もいますが、辻元さんから見るとダウンサイジングして弱くなったのでしょうか?
両面あります。確かにわかりやすくなって、すっきりしたけれど、純化路線をたどっても政治のパワーはなかなかもてないんですよ、混じりっけがないと。もちろん限度はありますけどね。自民党は宏池会から安倍さんみたいなウルトラ右派までいるわけですよね。それで政権を担っているわけですね。私は、言ってみると、自民党の宏池会の左派ぐらいの重心のところで政権を担っていくのがいいんじゃないかと思っていますけれども。
●政治家としての背骨はピースボート時代の経験にある
私は「ピースボート」(※)が原点で、ピースボートも運動として今も成り立っていて30年以上続いています。そしてピースボートはこの間、ノーベル平和賞に決まったICAN (核兵器廃絶国際キャンペーン) の国際委員会のメンバーの一団体ですよね。当時から「理念と運営とオリジナリティー」とずっと言ってきました。理念だけを追求しても運営が立ち行かなくなったら継続した社会運動になっていかない。で、この運営も経済活動にコミットメントしないと世の中は変えられないと思っているわけです。たとえば先ほどの自然エネルギーも、採算をとって自然エネルギーの方が儲かるよ、とすればみんなそっちに来るわけですよ。ピースボートなんかも単なる旅行じゃなくていろんな社会的な問題とか見ながら、みんな楽しくてお金を払ってみんな乗ってきて。その運営主体があるから被爆者の人のいろんな活動をサポートしたりすることができるわけですよ。
それとか、カタログハウスという会社が「通販生活」という雑誌を出しています。その雑誌は、環境にいいとか、いろんな商品を買うことを通じてネットワークを作ってチェルノブイリの子供の基金を集めたりとかしていますよね。でもあれ、通販生活と言う商売として成り立たせながら社会を変革する運動というところがあるわけですよ。最初から、ピースボートを始めた34年前からそういうことをイメージして活動を続けてきたんですよ。ですから政党とか政治も、ある意味で、よく言う・・・なんかこう批判して一匹狼的に100%正しいことを言い続ける、というのは格好いいんだけれど政治的な力にはならないですね。やっぱり地方の県連も作って、その運営、経営もして地方自治体議員も増やして、というようなことをやらないと、社会全体を変えていくことはできないと。これは運営の部分ですけど。それと、オリジナリティー。それは立憲主義と民主主義にしっかり立脚した政治ができるか、ということなんです。
※ピースボート 1983年に辻元清美氏らが立ち上げた平和を考える船の旅。現在、ホームページによると3か月で約20か国を訪れながら世界一周をするプロジェクト「地球一周の船旅」を行っている。と、同時に世界に広がったネットワークを生かし、国際NGOとしても地雷廃絶キャンペーンや、環境保護運動、核兵器廃絶運動などに取り組んでいる。 「ピースボートの記念すべき初航海は、1983年9月2日から横浜を出航し小笠原、グアム、サイパンといったアジアの国々をまわるクルーズでした。このクルーズが生まれるきっかけとなったのは、その当時国際問題化した『教科書問題』です。これは、日本の歴史教科書検定のさい、日本のアジアへの軍事侵略が『進出』と書き換えられるという報道に対して、アジアの人々が激しく抗議したというものです。このとき今まで自分たちが学んできた歴史は本当のことなのだろうか?という疑問と、実際はどうだったのだろうかという関心をもった若者たちが、『じゃあ現地に行って自分たちの目で確かめてみよう』と考えたのが出発点でした。」(ホームページより)
聞き手 村上良太
※辻元清美氏の活動ブログ
http://www.kiyomi.gr.jp/blog/
■政治を考える 辻元清美氏に聞く リベラルが政権を担う日 その1
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201711141923462
■野党共闘を考える 市民連合の中野晃一教授(上智大学)に聞く その1
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201711080022143 ■野党共闘を考える 市民連合の中野晃一教授(上智大学)に聞く その2
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201711080111133 ■野党共闘を考える 共産党幹部・植木俊雄氏に聞く 共産党はどのように共闘を決め、どのように進めてきたのか その1
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201711182057166 ■野党共闘を考える 共産党幹部・植木俊雄氏に聞く 共産党はどのように共闘を決め、どのように進めてきたのか その2
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201711182139086
■ハンナ・アレント著 「革命について」 〜アメリカ革命を考える〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201401201800171 ■8月30日 国会前・安保関連法案反対集会 人々の声1
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508302035170
■8月30日 国会前・安保関連法案反対集会 人々の声2 ハンガーストライキ
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508302121030
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