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2017年12月08日21時17分掲載
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教育
黒染めの強要は人権侵害だ 根本行雄
11月27日、生まれつき頭髪が茶色いのに、学校から黒く染めるよう強要され不登校になったとして、大阪府羽曳野市の府立懐風館高校3年の女子生徒(18)が約220万円の損害賠償を府に求めた訴訟は、大阪地裁で第1回口頭弁論が開かれた。生徒側は「黒染めの強要は、生まれつきの身体的特徴を否定し、人格権を侵害する」と主張し、府側は「適法だ」と反論している。この人権侵害の背景には、「いじめ」の温床になっている学校の現状があり、「日の丸・君が代」の強制を当然のことだとする教育行政の体質があり、「社会のかび」である個人の自分本位主義がある。
毎日新聞(2017年11月12日)にて、「頭髪指導 高校6割「地毛登録」 大阪府立、ほぼ全校が指導 毎日新聞アンケート」という記事(遠藤浩二記者、原田啓之記者)を読んだ。 毎日新聞が大阪府立高校に頭髪指導に関するアンケートを実施した。
府立懐風館(かいふうかん)高校(羽曳野市)の女子生徒が、生まれつき頭髪が茶色いのに黒く染めるよう強要されたとして府に損害賠償を求めた訴訟をきっかけに、アンケートを実施。全日制137校のうち71校(52%)が回答。66校は「訴訟に関わる」などの理由で回答しなかった。 地毛登録制度があると回答したのは45校。ある高校は指導上のトラブルを避けるため、入学時に地毛が茶色い生徒は申し出るよう呼びかけ、保護者に確認できれば指導対象から外している。一方、24校は「極端な色の生徒が少ない」などの理由で制度を設けていない。 頭髪指導を「している」と回答したのは69校。2校は「していない」と回答した。内容別では、染色・脱色の禁止(63校)、パーマ禁止(58校)が多く、「ヘアアイロン」で変色した場合でも黒に戻すよう指導する学校もあった。頭の側面を刈り上げ、頭頂部を長めに残す「ツーブロック」は高校生らしくないと禁止する例も。地毛が茶色でも黒く染めるよう求める、と回答した学校はなかった。 校則などに頭髪の規定があるのは67校。うち2校は「黒色に限る」と色を明記していた。指導に従わない生徒への措置は授業の出席停止(6校)、行事の参加禁止(6校)、停学(2校)など。頭髪指導が必要な理由では、就職・進学への影響(10校)、規律や生活の乱れ防止(5校)、保護者や地域の要望・評価(5校)などを挙げた。
学校というところは、日本国憲法を学び、基本的人権を尊重し、擁護するところではなく、「校則」をつくり、それが基本的人権の一つである「表現の自由」を制限し、基本的人権を侵害していることを「教育」の名において正当化し、基本的人権を侵害していることに無自覚になり、当たり前のことだと思い込んでいる。服装も、ヘアスタイルも、人格の表れであり、表現の自由の領域だ。表現の自由が制限できるのは、特殊な事情がある場合だけであり、自主的にそれが順守される場合だけだ。 学校教育は制服の強制などをはじめとして、管理者の都合を優先し、民主主義を軽視し、専制主義、全体主義の横行する場となっている。
□ 黒染めの強制の背景には、「いじめの温床」となっている学校の現状がある。
毎日新聞(2017年10月26日)は、「文科省 学校いじめ最多32万件 小学校で急増 16年度」という見出しで、次のような情報を伝えている。
全国の小中高校と特別支援学校が2016年度に認知したいじめは、前年度比43.8%(9万8676件)増の32万3808件で、過去最多を更新したことが、文部科学省が26日に公表した問題行動・不登校調査の結果(速報値)で明らかになった。3年連続の増加で、初めて30万件を超えた。
□ 黒染めの強制の背景には、もう一つ、日の丸、君が代が強制されている学校の現状がある。
1999年に、日の丸を国旗、君が代を国歌と定めた「国旗国歌法」が成立した。政府は「強制はしない」との説明を繰り返したが、文部科学省は、国旗掲揚、君が代起立斉唱を徹底するよう指導を強め、都道府県別の実施状況調査も繰り返し実施している。 現在、学校では、日の丸の掲揚が義務付けられ、教職員に対する君が代斉唱時の起立が義務付けられている。基本的人権である「思想および良心の自由」(日本国憲法19条)を侵害する条例が法制化され、実効性をもって、教職員たちに強制されている。その実施率はほぼ100%となっている。それが学校における「いじめ」の横行を支えている。
□ 戦争への道につながっている
どのような悪法であっても、それが法制化されると、唯々諾々として、それに隷従していく人々がいる。それを作り出しているが「学校」という場だ。 民主主義が確立していないところでは、どこでも支配者に迎合していく、事大主義、権威主義、順応主義が横行する。自己本位主義がはばをきかせていく。それは戦争への道につながっている。自分だけのことにかまけて、不正を、差別を、暴力などの人権侵害になどに対して、「見ざる、言わざる、聞かざる」を決め込み、権力者の犯罪を容認していく。それが戦争につながっていく。
トクヴィルは『アメリカの民主政治』のなかで、次のように述べている。 「陪審は人々に私事以外のことに専念させるように強いることによって、社会のかびのようなものである個人の自己本位主義と闘う。」『アメリカの民主政治』(下)井伊玄太郎訳 210ページ 講談社文庫
安倍晋三という人物は憲法を順守しないで、口先だけの人間であるが、それに気がつかない人々がたくさんいる。安倍のような人間とそれが所属する政党を支持する人々は戦争への道をつながっていることを容認にしているのだ。そういう人々が学校でも、職場でも、「社会のかび」がはびこっている。彼らは人権の侵害を黙認し、不正や差別や暴力などの人権侵害を容認しているのだ。トラックに押し込められ、屠殺場へ送られていくブタのように、こういう人々が戦争へとつながる道を唯々諾々として運ばれていくのだ。
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