アメリカの大物映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが自分の製作する映画に出演した多数のハリウッド女優らにセクハラを行っていたことが大々的に報じられて以来、セクハラの告発が欧州にも引火し、各地で過去の出来事が告発されている。そんな中、フランスの女優、カトリーヌ・ドヌーブが"la liberte d'importuner" (男にはimportuner”する自由がある )と発言したことが新たな話題を呼んでいる。
importunerというフランス語の単語(動詞)には「迷惑をかける、うるさがらせる」という意味があり、異性を相手にする場合は特にしつこく言い寄ってうっとおしくさせる、という意味合いが含まれている。日本では「口説く」と翻訳されている場合もあるが、いずれにしても相手に言い寄る行為をさし、しかもそれが歓迎されていないケースのようである。
このドヌーブさんの発言に対する女性からの批判も起きているが、同時に擁護論も出ている。ルモンド紙に擁護論を出した一人が精神分析医で作家のSarah Chiche(サラ・シーシュ)氏だ。多少エロチックな文書を相手に送ったとか、キスを試みたといったことがソーシャルメディアで相手の女性から暴露されて重大な性的犯罪者のようにさらされることには反対だ、と言う。ただ、口説く自由を男に認めるとしても、しつこいガールハントやつきまとい、レイプなどとは話は別だとことわりをつけた。また、ハーヴェイ・ワインスタインを告発した女性たちの勇気を讃え、誤解を生まない配慮も発言の中で行った。
https://www.dailymotion.com/video/x6cwf88 それでもフェミニストの中にはこうした"la liberte d'importuner" (男にはimportuner”する自由がある )の擁護論に対する批判も起きている。それに対して、サラ・シーシュ氏は行き過ぎた告発が一種のピューリタニズムとして、社会を萎縮させる可能性もあるとして、犯罪行為と口説きとを分けて考えることを勧めている。理屈としては理解できるが、その判別を誰がどのような基準で行うのか、ということを考えると(つまり男の側にそれが自分で判断可能なのか)現実問題としてはなかなか線引きの難しさもあるようにも思われた。ただ、こうした議論が出ることは、ともすれば「禁酒法」みたいに原理主義的に善悪の尺度を一律にあてはめがちなこういった問題を人文主義(ユマニズム)の伝統に照らして慎重に考えようとする意味で、フランス人らしい気がする。
■ルモンド紙で"la liberte d'importuner" (男にはimportuner”する自由がある )に賛同する女性たち
http://www.lemonde.fr/idees/article/2018/01/09/nous-defendons-une-liberte-d-importuner-indispensable-a-la-liberte-sexuelle_5239134_3232.html 寄稿した人々 Sarah Chiche (ecrivaine, psychologue clinicienne et psychanalyste), Catherine Millet (critique d’art, ecrivaine), Catherine Robbe-Grillet (comedienne et ecrivaine), Peggy Sastre (auteure, journaliste et traductrice), Abnousse Shalmani (ecrivaine et journaliste).
その他の賛同者 Kathy Alliou (curatrice), Marie-Laure Bernadac (conservateur general honoraire), Stephanie Blake (auteure de livres pour enfants), Ingrid Caven (actrice et chanteuse), Catherine Deneuve (actrice), Gloria Friedmann (artiste plasticienne), Cecile Guilbert (ecrivain), Brigitte Jaques-Wajeman (metteuse en scene), Claudine Junien (geneticienne), Brigitte Lahaie (actrice et presentatrice radio), Elisabeth Levy (directrice de la redaction de Causeur), Joelle Losfeld (editrice), Sophie de Menthon (presidente du mouvement ETHIC), Marie Sellier (auteure, presidente de la Societe des gens de lettres).
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