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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年02月01日19時32分掲載
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南北朝鮮会談:「北朝鮮は核・ミサイル計画を継続するための時間稼ぎを意図している」、朝鮮政府には「日米韓3か国の連携にくさびを打ち込む狙いがある」というプロパガンダ Bark at Illusions
朝鮮政府に対して対話を呼びかけてきた韓国のムン・ジェイン大統領に対し、朝鮮政府が韓国で開催されるピョンチャンオリンピックへの参加を表明するなどして韓国政府に融和姿勢を示したことで、南北朝鮮の閣僚級会談が2年ぶりに実現した。緊張が高まっている朝鮮半島での戦争を回避し、朝鮮半島の非核化を実現するための重要な一歩と言えるが、日本政府やマスメディアは「北朝鮮は核・ミサイル計画を継続するための時間稼ぎを意図している」(河野太郎外務大臣)、朝鮮政府には「日米韓3か国の連携にくさびを打ち込む狙いがある」(NHK国際部デスク高野洋、ニュースウォッチ9、18/1/9)などと主張して、対話姿勢に転じた朝鮮政府の意図を疑っている。
朝鮮政府が「時間稼ぎ」をしているという日本政府やマスメディアの主張の背景には、朝鮮政府はこれまで国際社会との約束を破って核・ミサイル開発を続けてきたという思いがある。
「小野寺五典防衛相は5日の会見で『過去、北朝鮮が対話姿勢を示して国際社会が支援し、結果としてだまされ続けた』と述べ、国際社会が安易に譲歩しないようクギを刺した」(朝日18/1/6)
「(朝鮮政府は)制裁圧力が強まると対話姿勢を見せて時間を稼ぎ、その裏で核・ミサイル開発を続ける。これまで何度も見てきた光景です」(報道ステーション18/1/10)
「(河野太郎は)北朝鮮が核・ミサイル開発に関する合意を守らなかった経緯に言及し『北朝鮮とは対話のための対話は意味がない』と強調した」(日経18/1/17)
しかしこのような認識は、実際に起きたこととは異なる。 1994年、米朝両政府は、朝鮮が核開発を凍結する見返りに合衆国などが朝鮮に対してエネルギー支援を行うことなどで合意したが(米朝枠組み合意)、朝鮮政府は合衆国側の合意の履行の遅延にもかかわらず、2002年に当時のジョージ・W・ブッシュ大統領が一方的に合意を破棄するまで枠組み合意に従って核開発を凍結していた。朝鮮政府が核開発を再開したのは、ブッシュが合意を反故にした後のことだった。 2003年1月に朝鮮が核拡散防止条約(NPT)から脱退した後、朝鮮の核開発問題を外交交渉で解決することを目指す6者協議(合衆国・朝鮮・日本・韓国・中国・ロシア)が始まり(2003年8月)、朝鮮が核開発を放棄すること・朝鮮に対して5者が経済支援やエネルギー支援を行うこと・日米と朝鮮の関係正常化などを盛り込んだ共同声明(2005年)が発表されたが、その直後に合衆国政府が偽ドル流通疑惑(中央情報局(CIA)による捏造事件だったと伝えられている)やマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑を理由に朝鮮に経済制裁を課したため、朝鮮政府は反発して核開発を再開し、翌2006年に最初の核実験を行った。 朝鮮が核実験を行った直後にブッシュ政権が朝鮮との直接対話に応じて6者協議が再開され、朝鮮政府は2007年に交わされた合意に従って核実験を停止し、原子炉の運転も停止した。しかし朝鮮の核放棄の検証方法で合衆国と韓国が合意にない検証制度を要求したため、朝鮮が反発。さらに合衆国や日本・韓国が合意されていた朝鮮へのエネルギー支援を打ち切ったため、6者協議での合意は事実上破綻した。 そしてオバマ政権は、合衆国が朝鮮に対する敵視政策をやめれば核・ミサイル開発を中止するという朝鮮政府の提案に一切応じず、制裁強化や米韓軍事演習の拡大を行い、その結果、朝鮮政府は核・ミサイル開発を加速させた。
こうした経緯を振り返ると、「過去、北朝鮮が対話姿勢を示して国際社会が支援し、結果としてだまされ続けた」とか、朝鮮は「制裁圧力が強まると対話姿勢を見せて時間を稼ぎ、その裏で核・ミサイル開発を続け」てきたという主張は間違っていることがわかる。むしろ朝鮮政府は合意を守る努力をしており、対話や交渉こそが朝鮮の核・ミサイル開発を止めてきたと言える。
今回の南北会談は制裁の成果だとする意見もあるが、ムン政権が圧力一辺倒だった場合に会談が実現していたとは思えない。実際、朝鮮政府は、対話を拒み圧力一辺倒の日本や合衆国政府ではなく、対話を呼びかけていた韓国政府とだけ会談を行った。
また、「日米韓3か国の連携にくさびを打ち込む狙いがある」という主張については、マスメディアは、
「北朝鮮は五輪参加で融和ムードを盛り上げる一方で、米国との合同軍事演習を中止するよう韓国に要求し続けている。米韓同盟にくさびを打ち込もうとする考えは明白だ」(毎日18/1/19)
「北朝鮮側の発言で気になるものもありました。それは、平和的な環境を用意する必要があるという発言です。この平和的環境が、現時点では何を意味するのかは明らかになっていませんが、北朝鮮が朝鮮半島の軍事的緊張を高めるとして反対してきた韓国とアメリカの合同軍事演習の中止などを求め、米韓の連携を分断しようとした可能性もあります」(NHKソウル支局安永和史、ニュース7、18/1/9)
などと、朝鮮政府が米韓合同軍事演習の完全な中止を求めたことをその根拠にしている。 しかし過去に朝鮮戦争で国を完全に破壊し尽くされ、その後も現在に至るまで合衆国の脅威にさらされ続けている朝鮮にとって、核兵器は合衆国による軍事攻撃を抑止するためのものであり、そのことを疑う識者はいないだろう。朝鮮政府が非核化に応じるために脅威となっている米韓合同軍事演習の中止を求めることは、当然のことではないだろうか。
また朝鮮政府が核開発問題については合衆国政府との問題だとして南北会談で取り上げることを拒否したことから、朝鮮政府には非核に応じるつもりがないという主張もあるが、朝鮮の核開発が合衆国に対する抑止策であることを考えれば、核開発についての最終的な交渉相手が合衆国政府であるのは当然のことだ。 こうしたことは、逆に言えば、合衆国の脅威がなくなれば朝鮮政府が核開発の中止を受け入れる可能性が十分にあるということになる。これまでも朝鮮政府は、合衆国の脅威がなくなることや合衆国との平和条約締結を条件に核開発の中断や中止を提案してきている。
またロシアと中国は、朝鮮の核・ミサイル開発の凍結と引き換えに合衆国が韓国との合同軍事演習を停止して交渉を開始するという提案を行っているが、朝鮮政府は「朝鮮半島の安定に向けロシアが参加した交渉なら検討する」と、朝鮮を訪問したロシア下院議員団に語っている(毎日17/12/3)ことから、朝鮮政府には核開発の中断に応じる用意があると考えるべきだ。2016年に韓国に亡命した朝鮮の元駐英公使・テ・ヨンホ氏も、今年のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の「新年の辞」について、「朝鮮半島の緊張緩和に向けて北朝鮮が核・ミサイル挑発を、米国が合同軍事演習をそれぞれ中断するという中国の提案を受け入れたものだ」という見解を示している(日経18/1/4)。
ところで、合衆国政府は、米海軍佐世保基地に強襲揚陸艦を新たに配備し(1月14日)、グアムに核兵器を搭載できるB52戦略爆撃機やB2戦略爆撃機などを集結(1月16日)させるなど、朝鮮政府が対話姿勢を示した後も朝鮮に対する軍事的圧力を強めている。 日本政府も韓国政府に対して朝鮮への圧力維持を要請したり、カナダで開催された朝鮮の核・ミサイル問題に関する外相会合(1月16日)で河野太郎が各国に対して朝鮮との断交や、朝鮮からの労働者の送還を求めるなどして、さらに朝鮮を追い詰めようとしている。 誰が戦争を回避するために行動し、誰がそれを妨害しようとしているかは、事実を見れば明らかだ。「北朝鮮は核・ミサイル計画を継続するための時間稼ぎを意図している」とか、対話には「日米韓3か国の連携にくさびを打ち込む狙いがある」という主張は、挑発行為を続けて朝鮮半島の緊張を高めているのが日米両政府であることを覆い隠すためのプロパガンダに過ぎない。
東アジアで100万人単位の人間が殺されると推定される壊滅的な戦争を回避して国民の生命を守り、朝鮮半島の非核化を実現するつもりがあるのなら、また朝鮮政府に拉致された日本人を取り返すためにも、日米両政府は挑発行為をやめて、対話姿勢を示している朝鮮に応えて交渉を開始するべきだ。
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