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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年02月22日19時50分掲載
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市民活動
新宿連絡会医療班 〜もう路上では死なせない〜 村尾知恵子
新宿連絡会(新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議)の医療班は、毎月第二日曜日に「おにぎりパトロール」と一緒に路上で生活する当事者を訪問している。ボランティアメンバーは医者、歯科医師、看護師、保健師、薬剤師など医療の専門家で、「今日はお医者さんもいるけど・・・」「体調はいかがですか・・・」と声を掛けながら、医療班ニュースと必要な場合、市販薬やマスク、カイロなどの衛生用品を渡したり、血圧を測ったりしている。
中高年層が、仕事を失い、生計を支えられなくなり住居を失う。厳しい寒さ暑さに晒され、安心して睡眠をとることが困難になり、飢餓状態を経験することもある。強いストレスに耐えなければならない。体力、免疫力は低下し高血圧、糖尿病、胃潰瘍、肝硬変による腹水、心不全による浮腫、吐血、全身衰弱、肺炎、結核、長年の肉体労働からくる腰痛、身体疲労、労災によるケガや事故の後遺症もある。
慢性的な病を抱えている方が多いが、ほとんどの人が健康保険を持たないので、気軽に医療機関を受診するような状況ではない。それでも福祉事務所の窓口で医療券を利用して受診できる方法もあるため、医療班は、これまで当事者とメンバーの医師による合意の上で「紹介状」を書いて渡し、本人が福祉事務所の窓口に提出して治療を受けられるようにしている
しかし、当事者の側でも手続きの煩雑さもあり、最初から受診をあきらめている場合や、「まだまだ大したことはない」と紹介状があっても受診に向けた行動を起こさないケースも多い。そうこうしているうちに、病状は徐々に悪化して動けなくなって救急搬送される事態となることもある。たとえホームレスの方であれ、救急車を呼んで治療を受けることはできる。主要な病院には無料低額診療事業という、費用を払えない人を治療できる制度もあるのだ。しかし現実には搬送を拒否する消防署もあるし、搬入を拒否する病院もある。それでもボランティアが付き添っていれば拒否されることは少ない。
昨年末に、新宿駅西口の近くで、女性が数日間ずっと横になったり座り込んでいて医療班も気になっていた。目撃した通行人からツイッターへの書き込みもあった。医療班と他の支援団体が協力して救急搬送し、現在も入院して治療継続している。しかし、残念なこともあった。都庁の高架下の段ボールハウスで生活していた女性は、言葉は交わすが一切顔を合わせることはなく、毎回「飲み物を買ってきて」と訴え、ボランティアは走って届ける。その繰り返し。体調が気になって毎回医師が声かけするが拒否されていた。そして今年の一月上旬に亡くなったことが後でわかった。段ボールハウスは片づけられていたが、彼女の声は私たちの記憶の中に残されている。
最近私が参加したおにぎりパトロールでは、小田急デパート前でたばこを吸い、カップ酒を飲みながら寒さで震え横になっている男性に会った。激しい腰痛があり動けない。道路に敷いた段ボールは尿と便で湿っていて、異臭がする。午前には自ら救急車を呼んだが断られたとのこと。路上仲間も近くで見守り心配していた。救急搬送を依頼して、私ともう一名が同乗。「入院は引き受けられないこともある、それを条件で」という医療機関がようやく見つかった。身体を洗うことから始まり診察を受ける。重症ではないからと入院は断られたが、着替える下着も服もなく、夜中に路上に戻すことはできない。「人道的な判断により」と強調されてなんとか朝まで処置室に居てもよいことになり、翌日の福祉事務所に繋げることができた。
最後の例では、翌朝福祉事務所にいくと、本人はこれまでに数回の入退院を繰り返していたことがわかった。このように受診制度の利用はその場限りのもので終わり、再び「路上生活」に戻らざるを得ない例も多く、健康問題の本質的な解決にはなっていない。基本的な居住環境、生活環境を整えることが最初の治療法といえるが、治療環境を自ら作る困難さは、容易に想像できる。
そんな中で、医療班は「どんな人間であっても必要最低限の健康を守る権利はある」と考えて行動している。しかし、それとはほど遠い現実を痛感する。路上生活者は自己責任であるかのような貧困容認社会。また厄介者扱いして社会福祉から排除する行政の差別的な対応がたびたび問題としてあげられている。
路上にいる人達のために大したことができるとは思っていない。路上で治療ができるはずもなく、健康を論じても始まらないのではないかとも感じる。
いちど経験した、あるいは仲間の話から、福祉の窓口への負のイメージはなかなか拭えない。受診を勧めても拒否される方は多い。余計なお世話と思っているのだろうか。それぞれ人の生きてきた背景を知る由もない訳で仕方ないかな。それでも、疾病を少しでも早く発見したり、疾病を抱える当事者を少しでも支えていきたいと、声をかけ繋がり生きていく活動として医療班の活動は継続している。
◇2月11日(日) 医療班「訪問健康相談」の実施状況
対応者は83名 うち血圧測定30名 市販薬対応64名 診察・紹介状は2名。
紹介状の方は、血圧の高い人だった。
今月の医療班ニュースのテーマは「冬の乾燥肌と保湿」で、138名にお渡しした。
村尾知恵子(むらおちえこ):ちきゅう座会員
※「ちきゅう座」からの転載です
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