移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件の一部を改正する件(案)」等に係る意見募集にあたり、2018年2月21日付で以下のパブリックコメントを提出いたしました。
●意見募集(パブコメ) 「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件の一部を改正する件(案)」に関する意見募集案件詳細
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300130129&Mode=0
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「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件の一部を改正する件(案)」等に係る意見 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
私たちNPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、この社会で暮らし、働くさまざまな移住者の生活と権利を守り、自立への活動を支え、よりよい多民族・多文化共生社会を目指す個人、団体による全国ネットワークです。標記について、以下の意見を述べます。
1. 日系人受入れの「経験」に対する間違った対応 <意見> 周知のとおり、バブル景気の労働力不足の時代、政府はいわゆる「単純労働者」は受け入れないとした一方で、1989年12月の入管法改定(翌90年6月施行)で、就労に制限のない在留資格「定住者」を創設し、改定法施行の直前の90年5月に出された定住者告示により、日系三世と配偶者、及び未婚未成年の子に「定住者」が付与されることが示された。これを契機として、かつての日本人移民の子孫である日系南米人が多数来日し、企業城下町といわれる特定地域に集住することになった。そして、彼/彼女らは、間接雇用の形態で、生産需給に応じて供給される「柔軟な労働力」として製造現場を支えた。 しかしながら、労働コストを削減したい企業にとっては「歓迎すべき労働力」である一方で、再生産活動の場である地域社会においては、日本語能力の不足ゆえのコミュニケーショントラブル、生活習慣等の違いによるトラブル、就学年齢相当の子どもの不就学、「不十分な」日本語ゆえの学校教育からのドロップアウトなどの「外国人問題」が顕在化した。 さらに、就労の場においても生活の場においても、同国人に囲まれたなかで過ごす者も多く、滞在が長期化しても日本語を習得する機会に恵まれない者も少なくなかった。その結果、リーマンショックの際には多くの日系南米人が収入を激減させたり、仕事を失った。生活保護に頼って生活せざるを得ない者もいるなか、「帰国支援」という名のもとに、2万人以上の日系南米人が日本を去ることとなった。そのなかには、10年以上日本で働いた者や、日本で学校教育をうけ、日本語を母語として育った日系三世の子ども(日系四世)も含まれていた。 ところで、政府は、これまでの日系人受入れをどのように総括しているのだろうか。なぜ「問題」が生じてしまったのかを、きちんと分析しているのであろうか。今回提案されている日系四世の受入れスキームをみると、さまざまな「問題」の責任を彼/彼女らに負わせ、政府としての「責任」も「反省」もないと言わざるを得ない。 日系四世のなかには、幼い頃に扶養家族(日系三世の未婚未成年の子)として来日あるいは日本で出生したものの出国し、海外滞在中に成人したり、婚姻するなどして、再来日することができない者もいる。今回の改定によって、日系四世の再来日の機会が保障された点は一定程度評価するものの、それは、「日本人との家族的つながり」を根拠とした日系三世とは異なる方式での受入れである。 深刻な労働力不足のなか、日系四世の労働力に対する期待がある一方で、ふたたび「問題」が生じることへの懸念から、「日本と現地日系社会との結付きを強める懸け橋になる人材を育成する」という目的(タテマエ)を掲げ、日系三世のような、就労に制限のない比較的安定的な在留資格ではなく、最長5年の単身者、日本語要件、サポーターによる管理等の制限的な受入れを導入しようとしていることは、統合政策への取組みという点でも適切な選択ではない。
2. 特定活動告示第43の該当要件について <該当箇所> 特定活動告示第43号及び別表第10
<意見> 今回提案されている特定活動告示第43号による活動は、告示第5号及び第5号の2と同様の活動(ワーキングホリデー)であるにもかかわらず、告示第5号及び第5号の2にはない要件(以下に列挙)が課せられている点について、説明すべきである。
●想定される相手国(ブラジルやペルー、フィリピン等)と二国間協定を締結していない。 ●通算5年間という長期間の滞在が認められている。 ●国内の特定の個人又は団体(サポーター)の存在を前提としている。 ●日本語能力を要件としている。 ●「地域社会への影響等の観点」から総数を制限している。
18〜30歳の青年が、最長5年間滞在できる制度であるにもかかわらず、家族(配偶者や子ども)の帯同を可能とする措置がなされていない。配偶者が個人で告示第43号に該当すれば帯同可能であるが、子どもを伴うことができない。年齢的に子どもがいる青年が多いことを考えると、家族結合の権利を侵害しているといえよう。告示第5号及び第5号の2にはない要件を課すのであれば、家族の帯同を認めるべきである。 「懸け橋」となる人材を育成するのであれば、受入れ国である日本が、公費を使って日本語習得の機会を提供すべきであり、入国にあたっての日本語要件を課すべきではない。 ワーキングホリデーの場合には、取決めによって事前に年間発給枠が決められている国・地域もあるが、なぜ告示第43号(日系四世)では、「地域社会への影響等」によって事後的に総数を制限しなければならないのかが不明である。また、「地域社会への影響等」とは具体的にどのような「影響」を想定しているのかが明記されていない。彼/彼女らが「柔軟な労働力」として活用され、景気停滞期など受入れ国である日本の都合で一方的に入国が制限されることを回避するためにも、制限にあたっての判断基準、及び制限を決定する際の手続きを示すべきである。
3. 「日系四世受入れサポーター」について <該当箇所> 指針第二第一項第1号〜第3号、及び参考資料2
<意見> 「サポーター」に関しては、日系四世受入れにあたって重要な役割を果たすにもかかわらず、指針第二第一項第1号〜第3号には「特定の個人又は団体」とあるだけで、参考資料2として「役割等のイメージ」しか示されていない点は、極めて問題が大きい。列挙されているサポーターの役割をみると、本来、受入れ社会が行うべき生活支援や行政サービスのすべてを「無償」でサポーターに課している。「懸け橋」になる人材を育成するのであれば、その公的な目標を達成するために、国や自治体が一定の費用負担をすべきである。 加えて、在留状況の把握や入管への定期報告という「管理・監視」の役割を、非営利の民間人にのみ負わせるのは、受入れ社会としての責任をまったく果たしていないといえよう。 サポーターに上記のような過大な負担や責任を「無償」で課すとすれば、それに見合った「利益」を求める個人や団体がサポーターとなることは、技能実習制度における監理団体やフィリピン新日系人の仲介団体の事例からも容易に推測できることであり、新たな人権侵害や強制労働が生み出される可能性が危惧される。とりわけ雇用主がサポーターの場合、自由な転職が困難となるなど、不当な支配力が及ぶ恐れがあり、雇用主をサポーターとすべきではない。 制度の重要な役割を果たすべき「サポーター」の詳細が不明であるにもかかわらず、パブコメ募集締め切り後の1か月程度で公布・施行するのは時期尚早と批判せざるを得ない。
4. 在留期間更新の要件について <該当箇所> 指針第二第二項及び第三項
<意見> 現行制度において、在留期間の更新に日本語要件が課せられているものはない。在留期間の更新ではないが、技能実習・介護では、1号での入国時、及び2号への在留資格変更時に日本語要件が課されている。職種の特性上、介護従事者に一定の日本語能力が求められることはある程度理解できるが、なぜ、告示第43号(日系四世)に日本語能力を求めるのかが不明である。技能等の移転を目的としている技能実習制度においてすら、介護以外の職種では、入国時、あるいは在留資格変更にあたって日本語能力は求められていない。 日系人に対して「定住者」の在留期間「5年」付与の要件として一定の日本語能力を課していることと合わせて考えると、1.で指摘した通り、彼/彼女らの労働力を期待する一方で、日本語能力の不足がさまざまな「問題」を引き起こしたという、当局の自己防衛的な「反省」ゆえの措置に過ぎない。かりに「懸け橋」として日本語習得を求めるのならば、受入れ社会が無償で日本語習得の機会を提供すべきであり、「自己責任」とすべきではない。 また、3年を超えて在留する場合の「日本文化および日本国における一般的な生活様式の理解が十分に深められているもの」とは何を指すのか、何をもってその判断をするのかを具体的に明らかにすべきである。さもないと、景気変動に応じて恣意的に在留期間の延長が行われない可能性も考えられる。
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