NHK経営委員長と言えば会長と並んでNHKで最高の権力を持つポストである。現在、経営委員長をしている石原進氏は経営委員だった2014年に「政府が右というものを左と言うわけにはいかない」と就任会見で語って物議を醸した籾井勝人氏を会長に推薦した人物とされる。その後、2016年6月に経営委員長に就任している。石原氏は日本会議福岡の名誉顧問を以前つとめていたが経営委員長に就任後、誤解を生まないようにと辞した。しかし、過去にこのような日本会議の重鎮だった人物が経営委員長をつとめるNHKが果たして、森友学園の問題や加計学園の問題をきちんと追求できるのだろうか。どちらも日本会議関係者がキーマンになっている事件である。
そのことと並んで石原進氏に関して注目すべきは原発再稼働への並々ならぬ執念を示してきたことだ。石原氏は原子力の利用を促進する一般社団法人「原子力国民会議」の共同代表だったのだ。NHK経営委員長就任直後に日本会議福岡の名誉顧問と同様に「原子力国民会議」の共同代表も辞している。とはいえポストを辞したからと言って考え方が変わるものでもないだろう。
以下は、第二次安倍政権誕生直前の2012年12月に東大名誉教授の醍醐聡氏がつづったブログである。
「原発問題で政治的発言を繰り返すNHK経営委員・石原進氏(JR九州会長)は罷免が当然 (2012年 12月 1日)
原発問題で政治的発言を繰り返す石原・NHK経営委員 1つ前の記事で書いた前NHK経営委員長の政治献金問題を調べていく中で、現NHK経営委員の石原進氏(JR九州会長)が原発問題について、NHKの役員/経営委員としてはあるまじき重大な発言を繰り返していることを知った。主な発言を新しい順に貼り付けておきたい。
石原氏が経営委員に就任したのは2010年12月11日であるから、いずれの発言も経営委員として在任中のものである。その経営委員は放送法(第49条)でNHKの役員とされ、NHK放送ガイドラインで「報道機関としての不偏不党の立場」を堅持するよう定められている。 であれば、財界人として経済界の利害に沿った発言・行動をしたいのなら、政治的にも自主・自立を生命線とするNHKの意思決定・監督機関の委員を退くべきであり、経営委員の職にとどまりながら、原発問題が大きな政治的争点となっている状況の中で以下のような発言をするのは致命的な誤りであり、罷免に値する。また、視聴者の間から石原氏の経営委員辞任を要求する意見が出てくるのは当然のことと私は考えている。
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●JR九州・石原氏 「原発を全廃すれば日本の産業は死ぬ」 (産経新聞 2012年11月30日(金)7時55分配信)
■早期再稼働訴え 九州経済同友会の代表委員を務める石原進JR九州会長は29日、衆院選の争点の一つとなるエネルギー・原発政策について「原発を全廃すれば、電気料金が2倍となり、日本の産業は死ぬ」と述べ、原発の早期再稼働を訴えた。 石原氏は「基本インフラである電気は、大量、安定、低コスト、環境配慮−の4つをクリアしなければならない。太陽光など再生可能エネルギーは多額のコストがかかり、産業や生活に跳ね返る」と述べ、再生可能エネルギーは原発の代替電源となり得ないとの考えを強調。民主党が掲げる「2030年代の原発ゼロ」について「日本国家が潰れ、失業者だらけになる。国民の生活を二の次にしている」と批判した。
福岡市中央区のホテルニューオータニ博多で開かれた福岡大の永野芳宣客員教授の出版記念パーティーで語った。永野氏は新著「脱原発は《日本国家の打ち壊し》」で、脱原発を「エゴイズムだ」と厳しく批判している。パーティーには九州財界関係者ら約450人が参加した。
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●エネルギー・環境戦略:「30年代原発ゼロ」決定 産業界、一斉に反発 空洞化、雇用悪化を懸念 (毎日新聞 2012年09月15日 西部朝刊)
政府が30年代に「原発ゼロ」を掲げたことについて、九州・山口の経済団体は「原発ゼロは見直すべきだ」などと反発。企業からは「十分な議論がされていない」などの疑問の声もあった。 ■経済団体 九州経済同友会の石原進代表委員(JR九州会長)は「電気料金は最大2倍になると見込まれ、国内産業が立ちゆかなくなる」と指摘し、「長期にわたって一定程度の原子力比率を維持する必要がある」とコメントした。 福岡商工会議所の末吉紀雄会頭(コカ・コーラウエスト会長)も「経済・雇用への悪影響などが強く危惧され、全く理解できない」と強調。「中小企業にとって電気料金の値上げは死活問題。早期に原発を再稼働させ、電力の安定供給と料金上昇抑制の筋道を明らかにすべきだ」と注文した。九州経済連合会の松尾新吾会長(九州電力相談役)は「国を危うくするものと言わざるを得ない。原発の一刻も早い再稼働を強く望む」とした。 <以下、省略>
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●福岡経済同友会、玄海原発の運転再開を求め緊急提言 (佐賀新聞 2011年06月01日更新)
福岡経済同友会は31日、九州でも懸念される今夏の電力不足を解消するため、玄海原発2、3号機の運転再開を求める緊急アピールを発表した。「九州の企業活動のみならず、住民の生活にも大きな影響を与える恐れがある」として、佐賀県と佐賀県議会に近く要請するという。福岡市内で代表幹事の石原進氏(JR九州会長)と貫正義氏(九州電力副社長)が会見した。 アピールでは日本全体が深刻な電力不足に陥れば、復興に必要な経済活動が打撃を受けると指摘。国と九電に地元の理解を得るために全力を傾注することを求め、地元には「安全を十分に確認の上、原発の運転再開への理解を示してほしい」としている。 石原氏は「代替エネルギーで原子力を補うには相当な時間が必要。国、県、九電で徹底的に安全問題を詰め、安全を確認した上で原子力を活用すべきだ」と語った。
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●玄海原発「ここがダメならどこで?」 JR九州会長 (asahi com 2011年5月19日23時19分)
http://www.asahi.com/special/10005/SEB201105190040.html 石原進・JR九州会長は19日、佐賀県唐津市で開かれた講演会で「原子力発電所の維持は必要」と語り、九州電力玄海原発(同県玄海町)2、3号機の運転再開問題について「玄海原発は地盤も日本で一番安全。これがダメだったら、どこで原子力発電をするのかという話になりかねない」と発言。運転再開に向けて、積極論を展開した。 東日本大震災後の復興の課題を探る講演会(社団法人日本港湾協会主催)で、全国の自治体関係者ら約500人を前に、震災の九州経済への影響や九州が日本の生産回復に協力する方策などを語った。 約30分間の講演の後半で「電力供給の確保」に関連して玄海原発に言及。「経済産業省原子力安全・保安院がOKを出したので、地域でもぜひ協力してもらえれば」と運転再開に触れ、「玄海原発は津波の歴史もない安全な地域の原発」などとも述べた。 (田中良和)
醍醐聡(だいごさとし):東京大学名誉教授
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/
「醍醐聡のブログ」を転載したちきゅう座から再転載
※官邸の“NHK支配”ますます加速 安倍シンパが経営委員長に(ゲンダイ) 2016年7月
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/184784
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