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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年04月18日16時21分掲載
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アジア
朝鮮半島非核化と東アジア 現在そしてこれからをどうみるか 大野和興
急速な展開を見せる朝鮮半島の動きをどうみるか。3月31日、都内で「どうなる、東アジアの安全保障―北朝鮮問題や米中覇権争いをめぐってー」と題する国際シンポジウムが開かれた。市民の立場からの外交を提唱するNGP「新外交イニシアティブ(ND)」が主催したものだ。中国、韓国、米国、オーストラリア、日本の論者がそれぞれの分析を示し、議論をたたかわせた。NDシンポでの論議を軸に、現局面の意味をいくつかの側面から見ていく。視点と枠組みを変えることで、見えるものも違ってくる。ここでは、アジアの民衆の視点、という軸足を定め、より長い時間軸をとり、空間的広がりも見据えながら考えてみたい。
◆南北対話の意味
NDシンポに中国から参加した賈慶国氏(北京大学国際関係学院院長)は、予定される習近平・金正恩の中朝首脳会談は「非核化・安定・平和」の三つを軸に進められるという。この三つは対話でしか達成できない。つまり、「戦争はしない」ということが前提になる。
韓国・韓信大学教授で同大学の「平和と公共性センター長の李起豪氏は、いま動いている事態の歴史的な意味を「第二次冷戦終結」と位置付けた。「それはアジアをめぐる大きな争いであり、どんなアジアを作るのか、誰のアジアのつくるのか」が問われている、というのだ。「それはこれまでの敵を友達に変えることでもある」と李教授は表現した。
◆非核化とは
李教授は言葉を継いで「だから、ここでいわれる非核化は北だけの非核化ではなく、朝鮮半島の非核化であり、東アジアの非核化なのだ」と述べた。この認識はシンポジウム全体を流れる共通認識でもあった。
李教授の話を受け、岡田充共同通信客員論説委員が次のように補足した。 「21世紀に入り、東アジアで深刻な戦争危機の事態が進んでいる。それをいかに食い止めるかが、いま朝鮮半島で展開されている事態の最大の優先課題だ」
当然、非核化はその過程の包摂される課題となる。金正恩委員長は南北会談や米朝会談で東アジア全体の非核化を提唱するはずだ。
米国から出席したグレゴリー・カラッキー氏(「憂慮する科学者同盟」上級アナリスト)も、同じ立場から「核軍縮」に言及、そうした枠組みの中での打開に言及した。同氏は米中の核軍縮や宇宙における安全保障問題で、米中両国政府や市民運動と連携してきたか科学者である。
◆日本に迫られる米「核の傘」体制の放棄
北朝鮮の非核化とは東アジアの非核化であり、それはそのまま、現在の核拡散防止条約(NPT)体制を問い直すことにつながる。1970年に発効した同条約は核保有を米国、ソ連(ロシア)、イギリス、フランス、中国の五カ国にしぼり、それ以外の国には核兵器を持たせないというもの。米国の「核の傘」を前提とする日本の核政策は当然このNPT体制のもとにある。
NPT体制は、人類の願いである「核なき世界」の実現とも矛盾する。その矛盾を乗り越えようと、世界の市民の運動の積み上げの中で、昨年4月、107の国々が国連の場で「核兵器禁止文書」賛同した。しかし、唯一の被爆国である日本は賛同を拒否、核保有五大国に追随する道を選んだ。
さらに今年2月、トランプ政権がオバマ前大統領が積み上げた核戦力削減への歩みを止める「核戦力体制の見直し」を発表、核使用の制限を緩和し、「使える核」に政策転換する方針を打ち出したことに対し、安倍政権は「歓迎する」ともろ手を挙げて賛同した。安倍首相はかねてから核武装論者であることはよく知られている。
「朝鮮半島非核化」は世界的な核廃絶に連動し、米国の核の傘にすがる日本の自公政権の「核戦略」をも揺るがすものでることがわかる。そのことは、ひいては戦後日本の規定してきた日米安保・日米同盟の見直しを迫る。それは五つの核大国を前提とするNPT体制の妥当性、アメリカの核の傘にある日本の安全保障体制そのものを問うことにつながる。
◆南と北
話を南北朝鮮問題に戻す。「対話による平和路線」へと事態を大きく導てきた韓国の文在寅大統領の思いがどこにあるのか。李教授は、文大統領の手法を「タイミングとスピード、トップダウン」と規定する。そして、韓国CIAをとても有効に使っていると評した。米国のトランプ大統領もCIAの重視し、その情報に頼っている。両国のCIAは当然つながりがあり、いつもやりとりしている。韓国民衆のキャンドル革命が産んだ理想主義者文大統領は、したたかな現実主義政治家でもあることがよくわかる。
韓国大統領の任期は5年。文大統領にはまだ4年の余裕がある。彼は焦らず、じっくり腰を据えて取り組むはずだ、と李教授はいう。文大統領がめざす朝鮮半島の平和のプロセス構築は金正恩委員長のニーズとも一致する。
南北はこれまで2回の首脳会談を行ってきた。2000年6月、2007年10月だ。そして今回で3回目となる。文大統領は2回目の廬武鉉大統領がやり残したことを引き継ぐことになる。彼が金正日総書記を会談したとき、文氏は彼の秘書室長だった。
この会談で8項目に上る合意が成立した。その中身は、軍事的敵対関係の終息と平和保障といった安全保障にかかわる分野と並び、「民族経済の均衡発展と共同繁栄のための経済協力事業」が具体的に盛り込まれた。それは工業団地形成、エネルギー、通行・運輸・通信・通関問題、造船協力、農業、環境保護、保健医療まで含む広範なものだった。これらはすべて未完のまま、残っている。これらは、開かれた貿易立国韓国にとっても、今後開放経済に向かうであろう北朝鮮にとっても、相互に利益になる。北朝鮮にとっては、経済協力はそのまま体制の保障につながり、さらに韓国を通してアジア市場にアクセスする道が開けるからだ。
◆中国、そして日本
台湾へのトランプ政権の介入に加え、米政権との貿易戦争が始まろうとしている中国にとって、朝鮮半島の平和は、これまでに増して重要な課題となっている。中国からシンポに参加した朱建栄氏(東洋学園大学教授)は「中国は平和が続く限り経済は発展し、米国と肩を並べることができると考えている」という。また、同じく中国から参加した呉従勇氏(中国国際友人研究会副会長)は、「中米関係は首脳同士の交流で随時調整できるし、貿易摩擦も国どうしの話し合いで解決できるというのが、中国の基本的なスタンスだ」と述べた。
こうした発言を受けて津上俊哉氏(元在中国日本大使館 経済部参事官)は「中国は考え抜かれた理性の外交を展開している。とてもリーゾナブルな外交だ」と評した。こうした発言を聞いていて感じたのは、南北平和に向けて最大のリスクはどうやらトランプのアメリカにあること、そして日本の安倍政権はそのリスクを助長する存在でしかないということだった。岡田氏は安倍外交が一貫して追求してきた「中国包囲網づくり」はもういい加減にしたらどうかという意味のことを述べていた。また、オーストラリアから出席した中国政治システムの専門家リチャード。マッッグレーガー氏はもっと辛辣かつ建設的な意見を日本のためにはいてくれた。
「日本は家を出られない40歳の息子だが、やっと米国の家から出られる環境が生まれた。荷物をまとめる準備を始めたほうがいい」
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