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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年05月01日23時17分掲載
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中国
三十路女子の北京的生活(7)〜買い物はお財布いらず
変化のスピードが驚くほど速い北京ですが、その中でもここ数年で急速に広がったことの一つが、現金を持たずに買い物などで支払いをすませる“キャッシュレス化”、特にスマートフォンによる“スマホ決済”です。 なかでも日常的によく使われているのは“微信銭包”(銭包とは、財布の意味)という機能で、中国の人たちがよく使っている“微信”というLINEのようなスマホのSNSアプリに付属しているお財布機能です。銀行口座からチャージをしたり、友人同士でお金を送金しあったりしながら、微信銭包の中にお金を入れて使います。 今では、市場や小さな商店、病院、露店など、ほとんどの場所でこの機能を使うことができ、現金を持ち歩かずに生活することができます。 微信銭包というスマホ決済の登場で、中国社会に一気に広がったキャッシュレス化ですが、中国の多くの人たちにとって、そして中国で暮らす多くの外国人たちにとって、あっという間に、なくてはならないツールになりました。
私も、友人と食事をするときやデリバリーを頼むとき、買い物でお財布の中の現金が足りないとき、タクシーに乗って細かいお金がないときなど、よく利用していました。レストランでは、この機能を使って支払いをすると割引してくれたり、お得に食事ができるプランが用意されている場合もあり、逆に「使っていない人は損しちゃうな」と感じました。 また以前、急遽歯医者に行かなければならなくなり、歯科は保険が効かないので、診察料が予想以上に高くなってしまい、お財布の中のお金と自分の微信銭包に入っているお金だけでは足りなくなってしまったことがありました。そのときは慌てて夫に連絡し、微信銭包で送金してもらったことがあります。やりとりしている姿を病院の人に見られ、ちょっと恥ずかしいなとも思ったのですが、病院の職員さんは「そういう人、けっこういますよ」と笑いながら教えてくれました。
ここまで急速に中国でスマホ決済が広がった背景のひとつには、現金でやりとりをするよりも、偽札の被害にあう可能性を少なくできるというメリットもあるのかもしれません。 私自身も何度か被害に遭ったのですが、北京では偽札が多く出回っていて、買い物のときにお釣りで偽札を渡されたり、タクシーの運転手さんからは、渡したお金を「このお金使えないから、他のお札に変えて」と返され、その瞬間に偽札にすり替えられてしまったり、なぜかATMから偽札が出てくることもあり、偽札被害に遭うことも少なくありません。 多くのお店のレジ脇には偽札発見器が用意され、お会計のとき、中国で一番大きな額の紙幣である100元札(現在は1元=約17円)を渡すと、その機械を通して偽札でないかを必ずチェックをされます。偽札発見器を置いていないお店では、紙幣を明かりに透かしたり、手で触ったりと、時間をかけてじっくり入念に確認されます。「そんなにじっくり見るなら、偽札発見器置いてよー」と言いたくなってしまうほどです。もちろん、偽札を使ってお金を騙し取るようなことをしているのは、ごく一部の人たちなのですが・・・。 スマホ決済の広がりは、スマホで気軽に支払いができて便利ということと同時に、そういう偽札対策の意味でも中国の人たちに歓迎されているのかもしれません。
この機能を使っていて「中国らしいなぁ」と思ったのは、春節のお祝い事などのときに、グループチャットで“紅包”という、日本でいうお年玉のようなものが飛び交っていたことです。チャット機能を使ってお金のやりとりをできるのですが、例えば、ある人が50元をグループチャットに送ると、それがチャットでお知らせされ、早い者勝ちでお金をもらえます。しかし、50元分が10人分などに自動で金額が振り分けられるため、順番に関係なく、クジのように、20元などの大きい金額をもらえる人もいれば、0.3元などのように少ない金額が当たる人もいます。このような機能が付いて、現に使っている人たちがいるところに、縁起物や派手なことが好きな中国らしさを感じます。
微信銭包には便利なことも多いのですが、以前、飛行機で北京に到着した後、到着ロビーのコンビニエンスストアで買い物をしようとしてレジでお会計をすると、なんと店員が「現金は使えない」と言うのです。そのとき、スマホの調子が悪くて微信銭包を使えなかった私は、慌てて近くにいた友人に頼み、友人のスマホを使わせてもらってお会計をすることができました。 しかし、よくよく考えてみると、ここは空港です。中国語のできない海外の旅行者たちも利用するし、旅行で訪れた人たちは、微信銭包や中国の銀行カードを持っていない人も多いはずです。さすがにこの時は「空港なんだから、現金を使えるようにしておかないと困る人も多いでしょう」と呆れました。
また以前、中国語を勉強している友人が北京に遊びに来て買い物をしたとき、レジで店員さんが早口で何かを話していて、友人が「え?なんて言ってるの?」と困っていたことがありました。もう一度聞いてみると、店員さんは「カードで払いますか?それとも微信銭包で払いますか?」と言っています。ここ1〜2年でよく聞くようになった言葉で、私は聞き慣れていたので分かりましたが、たしかに中国語の教科書にはそんな会話例は出てきません。これは分からないはずだと思いました。 多くのお店では「現金ですか?カードですか?微信ですか?」と現金も選択肢に入れてくれるのですが、このときは「ついに選択肢から現金が外された」と驚き、笑ってしまいました。そのくらい急速に私たちの生活に浸透していったのがこの微信銭包です。 中国語を習っている人の多くは、買い物の場面を想定した会話練習のときに「多少銭?(いくらですか?)」と、現金でのやりとりを前提として習ったと思いますが、これからは、中国語の授業の内容も変えなければ通用しなくなってしまいそうです。(アキコ)
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中国で急速に広がるスマホ決済





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