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2018年05月14日14時44分掲載
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反戦・平和
安倍の「改憲論」とアメリカの呪縛 根本行雄
憲法記念日の5月3日、憲法改正に関する集会が各地で開かれた。安倍晋三首相(自民党総裁)は、改憲推進派の民間団体が東京・平河町の砂防会館で開いた集会にビデオメッセージを寄せた。「憲法に我が国の独立と平和を守る自衛隊をしっかりと明記し、違憲論争に終止符を打たなければならない」と述べ、昨年提起した改憲の実現に意欲を示した。 一方、9条改憲に反対する市民団体が東京・有明の東京臨海広域防災公園で開いた集会には、立憲民主党の枝野幸男代表、民進党の大塚耕平代表、共産党の志位和夫委員長、社民党の又市征治党首が出席した。野党4党首は、安倍政権による憲法改正を阻止する考えで足並みをそろえた。 現在、「改正」論議は、安倍政権の支持率の低下をごまかし、国民の眼をそらすための方便となりつつある。
自民党の「改憲案」が目指しているのは、9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)を維持したまま、自衛隊の存在を明記することだ。自衛隊の合憲・違憲論争に決着をつけようと安倍晋三首相が提起したものである。
毎日新聞(2018年5月3日)の記事によれば、毎日新聞社が4月21、22両日に実施した全国世論調査の結果を次のように伝えている。
「憲法9条の1項(戦争放棄)と2項(戦力不保持)を維持しつつ自衛隊の存在を明記した「9条の2」を新設する自民党の憲法改正案について、「反対」が31%と「賛成」の27%をわずかに上回った。賛否が割れる一方で「わからない」も29%おり、改憲に向けた世論の機運が高まっていない現状が浮かんだ。」
自衛隊という存在そのものが憲法違反である。それを「解釈改憲」という手法で、自民党という長期政権が自衛隊を増強させ続けてきた。その結末が、2015年9月の「安全保障関連法」の成立であり、自衛隊の憲法への明記であり、安倍の「亡霊」政治である。
多くの憲法学者が、「集団的自衛権の一部の行使を容認した閣議決定及び安全保障法制は、憲法違反であり、憲法によって制約される当事者である内閣が、みずから積み重ねてきた解釈を論理的整合性なく変更するものであり、立憲主義に反する」ものだと考えている。
当然、自民党は自衛隊の存在は「合憲」であるという立場を取っているが、もし現行憲法が自衛隊を認めているのであれば、憲法改正の必要がない。安倍を筆頭とする自民党の議員たちは、憲法に「自衛隊」を明記すれば、このような「違憲」状態を解消することができると考えているようだ。
しかし、憲法に「自衛隊」を明記しただけでは、「違憲」状態の問題解決にはならないのだ。
9条2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあるのに自衛隊が「違憲」とならないのは、政府が「自衛のための必要最小限度の実力組織は戦力に当たらない」との憲法解釈をとってきたからである。
9条3項または9条の2として「自衛のための必要最小限度の実力組織」を保持する規定を新設すれば、政府の憲法解釈を明文化できる。 しかし、その「最小限度」とは自国のみを守る個別的自衛権の範囲に限られるのか、それとも、同盟国も守る集団的自衛権を含むのか。 明らかではない。安倍政権は従来の政権が違憲としてきた集団的自衛権の行使を「安全保障関連法」の制定によって限定的に可能とした。それゆえに、政権担当者が恣意的に「最小限度」の解釈を変更できるということは、自衛隊を憲法に明記しても残ってしまうのだ。
1950年6月25日、朝鮮戦争が勃発すると、アメリカ軍は日本駐留部隊を朝鮮半島に出動させることとなった。その時点で、日本における防衛兵力・治安維持兵力が存在しないこととなった。7月8日、マッカーサー元帥は吉田茂首相に対し、「日本警察力の増強に関する書簡」を提示した。この書簡においては、「事変・暴動等に備える治安警察隊」として、7万5千名の「National Police Reserve」の創設が要望された。それが、1950年8月10日の、警察予備隊の創設につながったのである。
戦後、アメリカ駐留軍は、日本の軍国主義の復活を怖れ、日本国憲法の制定に影響力を行使し、9条の「平和主義」という原則が確立された。しかし、朝鮮戦争が起こると、その態度を変え、日本を兵站基地とするばかりでなく、前線基地として利用することを構想し、戦力の保持を要求し、憲法改正の動きを活発にする要因になった。
現在に続く、「憲法改正」論議は、押しつけ憲法論と共に、朝鮮戦争の勃発によるアメリカ軍の戦略の変更に起因しているのである。戦後の日本は、アメリカに大きく依存して経済成長を達成してきた。日本が独自の立場から国際平和や国際経済に貢献することはなかった。戦後、ずっと、アメリカの軍の「傘」のなかに入ったままの、対米依存の政治が続いている。アメリカの「呪縛」が続いているのだ。
安倍首相の祖父である、岸信介は、サンフランシスコ講和条約の発効にともない公職追放解除となるとすぐに、1952年4月に「自主憲法制定」、「自主軍備確立」、「自主外交展開」をスローガンに掲げた日本再建連盟を設立し、会長に就任した。1953年の選挙に大敗すると、自由党に入党した。公認候補として衆議院選挙に当選して吉田から憲法調査会会長に任じられて自主憲法制定を目指したが、54年に吉田の「軽武装、対米協調」路線に反発したため自由党を除名された。岸は「真の日本独立を実現するためには、先ず保守合同で政局を安定させて、その勢いで政治的には「民族の魂が表現された憲法」を造って、自主防衛すべく、経済的にはこの狭いところに八千五百万人という人口を如何に養っていくために自立せねばならないと主張した。
安倍は祖父の岸信介の遺志を引き継ぎ、「自主憲法制定」、「自主軍備確立」を目ざし、実現させようとしているのだ。安倍の政治は岸信介という「亡霊」にあやつられている政治だ。
現在、安倍政権下で、自衛隊の日報問題、森友・加計学園問題、裁量労働制データ等における公文書の隠蔽、改ざん、ねつ造、虚偽説明問題など、腐敗、堕落した政治が露呈してきている。このような政権担当者に、「憲法改正」という重要問題を担っていくことができるだろうか。責任遂行能力があるだろうか。
現在、「改正」論議は、安倍政権の支持率の低下をごまかし、国民の眼をそらすための方便となりつつある。安倍よ、国民の眼はごまかせないぞ。
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