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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年07月11日21時39分掲載
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農と食
<種とナショナリズム>中 「稲も亦大和民族なり」 植民地統治と品種改良 大野和興
食料問題を考えるときの起点をぼくは米騒動に置いている。1918年7月、コメ高騰に怒った富山の漁村の女たちが立ち上がった。暴動はたちまち全国に波及し、民衆運動となった。1915年ロシア革命を目の当たりにした日本国家を震撼させた民衆の決起だった。
米騒動の再来をおそれた政府は食糧を国家管理のもとに置く政策に手を付ける。その一環としてコメの「北進南進政策」が提起され、北海道産米増殖、ついで植民地産米増殖計画が打ち出された。日本国家は帝国農業試験場の植民地におけるセンターを朝鮮と台湾に作りことから始めた。
植民地統治下の朝鮮で日本帝国が遂行した産米増殖とはいかなるものであったか。読みやすく入手しやすいものとして趙景達の『植民地朝鮮と日本』(岩波新書)から引く。総督府はソウルの南にある水原に勧業模範場をつくりコメをはじめとする農業生産指導を始まる。
産米増殖の狙いはコメ不足の日本への移出にあった。日本人のし好に合った「優良品種」が持ち込まれ、日本式肥培管理が「指導」された。「指導」には憲兵や巡査が動員され、定められた品種以外の栽培は禁止、苗代は踏みつぶされた。
気鋭の農業史研究者藤原辰史の『稲の大東亜共栄圏』は植民地朝鮮と台湾を舞台とする「品種改良による統治」を「緑の革命の先駆的形態」として描く。「緑の革命」との違いは国家主義が色濃く反映されていることだ。
藤原は朝鮮産米増殖の司令塔となった当時の育種学の最高権威寺尾博(農林省農業試験場長)の、「稲も亦大和民族なり」「育種報国」といった言葉が紹介している。当時朝鮮に持ち込まれた代表的品種は陸羽132号。宮沢賢治が「稲作挿話」でうたったあの品種である。
コメ品種改良は品種だけにとどまらない。水利をはじめとする土地改良、肥培管理技術の改良を伴う。総督府が強引に進めた土地改良は韓国農民に多大な負債を負わせた。それに化学肥料の負担が加わった。韓国農民の窮乏化は進み、それに乗じて日本の団体・個人が土地を買い占めた。
ぼくがこうした事実の一端に初めて触れたのは30年来の友人である韓国自然農業の創始者趙漢珪さんからだった。90年代初め彼はぼくを水原の試験場の連れて行き、日本が持ち込んだ「深耕多肥」こそが韓国の土をダメにした、日本は農業から韓国を侵略した、と話した。当時、趙さんとぼくはお互いに韓国と日本の村を案内しあったり、フィリピンやタイの村を一緒に歩いたりしていた。
当時の日本はコメは自給できず、1935年で需要量1100万トンの内200万トンを植民地からの移入米に頼っている。産米増殖で増産されたコメは日本のまわされたが、それでも足りず、朝鮮は飢餓輸出に追い込まれた。不足分は中国東北地方からの粟輸入でまかなった。
一方日本国内では植民地からの移入米増大で米価が下落、農民は困窮に陥った。佐賀の農民作家山下惣一は「1926年に一石(150k)40円していた米価が31年には17円に下がり、我が家でも牛2頭が借金のかたに差し押さえられた」と話している(山下・大野『百姓が時代を創る』七つ森書館)。
政府は困窮する農民を中国東北部(満州)へ農業移民として送り出した。新天地のはずだった満州で与えられた土地は地元農民から取りあげたものだった。移民農民は日本帝国の中国侵略の最前線に送り込まれ、侵略戦争のお先棒を担がされた。品種改良による植民地統治の結末である。
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