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2018年08月14日11時58分掲載
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社会
劣悪すぎる医師の労働環境 東京医科大学事件でパンドラの箱が開いた 根本行雄
2018年7月24日、文部科学省の私立大学支援事業を巡る汚職事件で、東京医科大学の臼井正彦前理事長(77)と鈴木衛前学長(69)の2人が贈賄罪で在宅起訴され、トップ2人の刑事責任が問われることとなった。同大の「裏口入学リスト」とみられる内部資料が明らかになった。今年度の入試で文部科学省幹部の息子を不正合格させたとされる東京医科大が2011年以降、女子受験生の点数を一律で減点するなど男子受験生を優遇していたことも明らかになった。しかし、その背景にあるのは、医師の労働環境の劣悪さである。この労働環境の劣悪さは、医師だけではない。しかも、日本全国に広がっている。ここにこそ、真の働き方改革の必要性がある。
第196回通常国会は、会期末の7月20日に事実上閉会した。「森友学園」や「加計学園」を巡る問題で、政府・与党は疑惑解明に後ろ向きな姿勢を取り続け、約半年にわたった国会論議が深まることはなく、真相究明には至らなかった。与党は働き方改革関連法、参院定数を「6増」する改正公職選挙法に続き、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法も成立を強行した。安倍政権は、これらの問題を数多く抱える法律案を熟議することなく強引に成立させた。議席数にものを言わせて、国会の存在意義を根底からなし崩しにし、改ざん、隠蔽、虚偽答弁、強行採決などなど、議会制民主主義を亡ぼす道を押し進めている。 こういう安倍政権のあり様を見ていると、議会制民主主義においては単独の政党が三分の二以上の議席をもつ恐ろしさに背筋が寒くなる。ヒトラーのナチス政権も、さまざまな悪法、獰悪な政治を合法的に進めていたのだ。それは民主主義の死をもたらす。安倍政権は限りなく、ヒトラーのナチス政権の政治に似てきている。この劣悪な政治の果実を食べさせられるのは、「主権者」である国民なのだ。
□ 入試不正の背景
東京医科大学の関係者は読売新聞の取材に対し、「女子は大学卒業後、結婚や出産で医師をやめるケースが多く、男性医師が大学病院の医療を支えるという意識が学内に強い」と、男子を優遇した理由を説明していという。
今回の女性受験生を不当に差別した背景には、最初に報じた読売新聞は「女性医師が結婚や出産で離職すれば、系列病院の医師が不足する恐れが背景にあったとされる」とし、大学幹部の「必要悪」との発言があったことも報じている。 また、同大は2013年に文部科学省が公募した「平成25年度女性研究者研究活動支援事業(一般型)」に選ばれ、2015年までの3年間に合計8026万4000円の補助金を受けていたという。この支援事業は「女性研究者が能力を最大限発揮できるとともに、出産、子育て又は介護と研究を両立するための環境整備を行う取組みを支援することを目的とした事業」とされているが、SNSなどでは「ダブルスタンダード」「補助金詐欺」だと同大を糾弾する声があがっているという。
フランスのAFP通信は、「一般的に高学歴であるにも関わらず、日本の女性は家庭を持つと、この国の悪名高き長時間労働によって、職場を追われてしまう」と批判している。また、安倍首相の「女性活躍(ウーマノミクス)」方針についても言及し、「進展のスピードは遅い」と指摘している。 ロイター通信は「安倍晋三首相は、『女性が輝く』社会づくりを掲げているが、少子化にも関わらず女性は現在も就労では苦戦しており、出産後の職場復帰もハードルがある」と報じている。
□ 医師の過労死
毎日新聞(2017年10月26日)の 柳沢亮、南茂芽育記者は次のように伝えている。
新潟市民病院(新潟市中央区)の研修医、木元文(あや)さん(当時37歳)が過労自殺した問題を巡り、木元さんの夫は26日、同病院が木元さんの自殺後も医師らに時間外労働に関する労使協定(36協定)違反の残業をさせ続けたとして、片柳憲雄院長や市、篠田昭市長を労働基準法違反の疑いで新潟労働基準監督署に刑事告発した。 告発状などによると木元さんは2016年1月に自殺。夫は同年8月に労災申請し、同病院に長時間労働の是正などを求めたが、院長らはそれを放置し、今年1〜6月に延べ90人の医師に最大月177時間の残業をさせたとしている。
新潟労基署は今年5月、木元さんの自殺を労災に認定。同病院と市は6月に「緊急対応宣言」を発表し、軽症患者の外来対応制限などに乗り出している。 しかし夫の代理人弁護士によると、同病院は今も労働時間の把握を自己申告に頼っており「客観的な把握が必要だ」との遺族側の指摘を聞き入れないため告発に踏み切ったという。片柳院長は同日「労基署の調査に誠実に対応する」とコメントした。
□ 医師の労働環境
〇 香川県の状況 毎日新聞(2017年11月7日)
香川県立病院で2016年度の1年間に計2258時間の時間外労働をした勤務医がいたことが6日、毎日新聞の情報公開請求で分かった。3病院の医師計207人のうち67人の残業時間が「過労死ライン」とされる月80時間を超えていた。 情報公開されたのは▽県立中央(高松市)▽白鳥(香川県東かがわ市)▽丸亀(同県丸亀市)−−の県立全病院に16年度に在籍した正規・嘱託の医師の勤務状況。 法定労働時間は1日8時間、週40時間だが、労使協定(36協定)を結んで労働基準監督署に届け出れば、上限を超えて労働させることができる。36協定で中央、白鳥両病院は「月100時間を6回を限度に、年800時間」、丸亀病院は「月70時間を3回を限度に、年480時間」まで延長可能としている。
〇 岐阜県の状況 毎日新聞(2018年2月10日)
岐阜大学が労使協定(36協定)の上限を超える時間外労働を医学部付属病院の医師を含む職員らにさせたとして、岐阜労働基準監督署から是正勧告を受け、その後も医師ら34人を協定の時間を超えて時間外労働させていたことが9日、病院への取材で分かった。 病院によると、昨年1月の労基署の立ち入り検査で、職員が上限の月45時間を超えて時間外労働していることが判明し、岐阜大学が同月18日付で是正勧告を受けた。 病院は各部署に注意喚起して改善するよう促したが、院内調査の結果、昨年4〜11月に医師や薬剤師、技師ら34人が上限を超えていた。医師数人は月100時間を超えて勤務していることもあった。病院は「勤務時間を確認し早めの退勤を促すなどしているが、医師不足のため早急に効果が出ない」としている。
〇 東京都の状況 毎日新聞(2018年1月14日)
日赤医療センター(東京都渋谷区)が医師の残業時間を「過労死ライン」の2倍に当たる月200時間まで容認する労使協定(36協定)を結んでいることが13日、明らかになった。医師20人は2015年9月からの1年間で月200時間の上限を超えて残業。渋谷労働基準監督署は昨年3月、センターに協定を順守するよう是正勧告した。 日赤医療センターは日本初の赤十字病院で常勤医師約260人、約700床の大型総合病院。月200時間の上限を過重と認め、協定を見直すとしている。 労使協定では、特段の事情が発生した場合に限り時間外労働を「1カ月200時間(年6回まで)、年間2000時間」まで延長できると規定。ただ、センターによると、200時間超えも頻繁に発生し、15年9月からの1年間で4回超えた医師が2人、2回が3人、1回が15人いた。
〇 アンケート 毎日新聞(2018年1月10日)
医療現場の長時間労働問題を考える医師らのグループが、若手医師や医学生を対象に実施したアンケートで、労働時間の上限基準が守れていないと感じている医師が7割に上ることが明らかになった。人手不足などが要因で、現場からは「疲れていては医療の質も保てない」と悲鳴が上がる。一方で「若手が働かなければ誰が働くのか。仕事量を減らさず、時間だけを制限すれば医療崩壊につながる」との声もあり、苦悩する医師らの姿がうかがえる。
□ 日本医師会のコメント
日本医師会(横倉義武会長)は、8月3日、「公平性、平等性を欠く行為で大変遺憾」とするコメントを公表した。 女性医師は、出産や子育てなどで離職や休職せざるを得ないケースがあるとしたうえで、「むしろ、短時間労働の導入や当直の軽減など、女性が働きやすい環境整備を進めることが大事」と指摘したという。
しかし、日本全国の医師たちの劣悪な労働環境、過労死に追い込まれている現状を知っていながら、日本医師会はこんなコメントを述べている。模範的な優等生が毒にも薬にもならない発言をしたという感じの内容だ。彼らが率先して、事態を改善していくことはあるだろうか。
□ 厚生労働省の有識者検討会
毎日新聞(2018年1月16日)の 古関俊樹記者は次のように伝えている。
厚生労働省は1月15日、医師の長時間労働を是正するため、看護師など他職種への業務移管を徹底するといった緊急対策案をまとめ、同省の有識者検討会に示した。勤務時間の管理の徹底や、労使協定(36協定)を超える残業をしていないかの点検も盛り込んだ。いずれも現行の制度で対応が可能で、検討会が了承すれば年度内にも全国の医療機関に周知する。
また、厚労省は同日、診療を求めた患者を原則として拒めない「応招義務」について、検討すべき課題として提示。医師個人ではなく、組織としてどう対応していくかなど現在のあり方を議論することにした。検討会は応招義務を含め、2018年度末までに最終報告をまとめる。 対策案では、医師の負担軽減のため、看護師など他職種への業務移管を推進すると明記。具体例として、検査手順や入院の説明▽服薬の指導▽静脈注射▽患者の移動−−などを挙げて、原則として医師以外の職種に分担して実施するとした。これらの業務は現在も研修を受けた看護師らに移管できるが、未実施の医療機関もあることから徹底を図る。 また、医療機関に対して、医師の出退勤時間の記録を上司が確認するなどして勤務時間を把握することや、36協定で定めた残業時間の上限を超える時間外労働がないかを自己点検することも盛り込んだ。短時間勤務など柔軟な働き方ができるようにし、女性医師が出産や子育てをしやすい環境の整備も求めている。
自民党、安倍政権は、働き方改革関連法を成立させた。国会でろくろく議論をすることなく、彼らが強引に押し進めている発想法の背景にあるのは、「現行の制度で対応が可能だ」というものだ。そして、彼らの一番の狙いは、「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)にあることは明白だ。 対象は年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタント、研究開発職など「働いた時間と成果の関連性が高くない仕事」が想定されている。残業時間に対して割増賃金を支払うという労働基準法上の規定が適用されなくなる。 労働者の意思で、この制度から離脱できるというが、現状の強圧的な労使関係の下では、適用の同意を拒むことも離脱を申し出ることも労働者の自由意思ではできないだろう。また、対象を1075万円以上とすることで「大方の労働者に関係ない」という印象を与えているが、いったん導入されれば年収要件が引き下げられ、労基法の根幹を崩す恐れがある。
この制度は残業の概念をなくすもので、この制度は働かせ放題で「過労死ライン」を超える労働を誘発する恐れがある危険なものだ。
□ 働き方改革関連法
毎日新聞(2018年7月15日)は、次のように伝えている。
総務省が7月13日発表した2017年の就業構造基本調査によると、働く人全体の数は6621万人で、2012年の前回調査から179万人増加した。このうちパートや有期契約、派遣などの非正規労働者は90万人増の2133万人となり過去最多を更新した。団塊の世代が定年退職し、有期契約や派遣で再就職する事例が増えたためとみられる。
前回調査からの5年間は安倍政権のアベノミクスと重なる。雇用情勢は改善し、人手不足を反映して女性や高齢者でも働く人が増えているが、役員らを除いた雇用者数に占める非正規の割合は依然約4割と高い。6月に成立した働き方改革関連法では、定年後の再雇用を含む非正規労働者の待遇改善が盛り込まれており、企業側の対応が急務になっている。
都道府県ごとの非正規の割合は、沖縄が最も高い43・1%。最低は徳島の32・6%だった。非正規の中ではパートとアルバイトが計1472万人で最多。契約社員は303万人、派遣労働者は142万人だった。希望しても正社員の働き口がない「不本意非正規」の割合は12・6%。
世間では、「派遣労働者は自分で派遣を選んだ」と思っている人が多いが、実際には、雇用者側が非正規雇用の割合を増やしたため、正社員として就職したくてもできない例が増えているのだ。労働者派遣法を作らせ、改正によって適用範囲を広げ続けて事実上、自由化し、「同一労働同一賃金」が問題になる事態を作り出したのは雇用者側であって、労働者側ではない。
法定労働時間は1日8時間、週40時間だが、これでよいだろうか。もっと労働時間を短くすべきではないのか。それこそ、法定労働時間は1日4時間、週20時間とし、ワークシェアリングができるようにするべきではないのか。労使協定(36協定)という脱法行為を容認にしてしている現状をなくす必要がある。 真の働き方改革を押し進めることができるのは、労働者自身なのだ。問題点を剔抉せよ。抉り出せ。そして、抜本的に改革することを考えて、行動せよ。 非現実的だとか、理想論だとか、現実を直視していないとか、もっともらしい現状改革論などでごまかされるな。既成概念をとっぱらえ。もっと理想を語れ。夢物語を実現することに夢中になれ。
日本全国の労働者の環境は劣悪だ。雇用者と労働者との関係は対等ではない。一人一人に分裂している労働者は弱い。現状の強圧的な労使関係の下では、個人の力を結集することなく、改革を進めることはできない。 「万国の労働者よ。団結せよ。」 真の働き方改革を押し進めることができるのは、労働者自身なのだ。 仲間が過労死をしていく前に、そして、やがては自分が過労死をする前に、知恵を出せ。汗を流せ。団結せよ。真の働き方改革を押し進めることができるのは、労働者自身なのだ。
人類の歴史は人権をめぐる戦いの歴史である。人権とはだれかの善意や恩寵によって与えられるものではない。すべての人権は戦い取られたものなのだ。労働環境を、生活環境を改善していくのは、労働者自身なのだ。 「万国の労働者よ。団結せよ。」
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