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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年09月04日14時02分掲載
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検証・メディア
朝鮮半島の非核化 停滞の原因は米朝首脳会談での約束を守ろうとしない合衆国政府 Bark at Illusions
中国が朝鮮の非核化を妨げているとか、朝鮮政府からの書簡が「好戦的」だったとか。朝鮮半島の非核化が停滞している原因について、マスメディアは中国政府や朝鮮政府にその責任を押し付ける合衆国側の主張に沿った形でニュースを伝える傾向がある。
例えばNHKニュース7(18/8/25)は、ドナルド・トランプ大統領がマイク・ポンペイオ国務長官の訪朝中止を決定した際にツイッターで「北朝鮮の非核化のために努力していない」と中国を批判したと伝えた上で、
「中国は習近平国家主席が来月の北朝鮮の建国70年の式典に出席する方向で準備を進めていて、北朝鮮の後ろ盾として存在感がさらに高まることになります。難航する非核化の協議に、米中の対立が新たな影を落としています」
と、トランプに対する中国側の反論は全く伝えずに、あたかも中国政府が朝鮮政府に対して非核化に応じないよう圧力をかけているかのような印象を残してニュースを終えている。
日本経済新聞(18/8/31)も、「『非核化妨害』中国に矛先 トランプ氏、北朝鮮巡り批判再開」との見出しで「(米中の)貿易戦争が激化すれば、中国が態度を硬化させ北朝鮮の非核化の進展をさらに遅らせようとする展開は避けられない」と伝えている。
しかし中国政府は米朝間の緊張が高まっていた最中にも米朝双方に対話を促すなど朝鮮半島問題の平和的な解決に向けて外交的努力を重ねてきたし、今年6月の米朝首脳会談での合意も歓迎している。また、米朝の交渉が決裂して無法者の合衆国が朝鮮に軍事侵攻するようなことがあれば中国も影響を被ることからも、中国が朝鮮の非核化を妨げているという主張は馬鹿げている。
またニュース7(18/8/29)は、ポンペイオの訪朝が中止になったのは朝鮮政府高官からの書簡の内容が「非核化協議は危機的な状況で崩壊しかねないと警告する」もので「好戦的」だったことが背景にあると伝えた上で、合衆国の国連大使ニッキー・ヘイリーが
「北朝鮮が非核化に対して考えを変えた可能性がある」
と主張しているとか、ポンペイオが
「(朝鮮政府が)完全な非核化という約束を実行する用意が明確になれば、アメリカは関与する用意がある」
との声明を発表して朝鮮政府に「非核化に真剣な姿勢を見せるよう求めた」などと合衆国側の主張を無批判に伝え、報道ステーション(18/8/21)は、合衆国政府は朝鮮政府が「(米朝)首脳会談の前には全く終戦宣言には触れてこなかった」のに「最近になって急に強く主張してきた」ことを疑問視しており、「それが膠着状態につながっている」と説明した後、テレビ朝日ワシントン支局長の布施哲が
「終戦宣言をするということは、アメリカと北朝鮮が平和的な関係になるということを意味します。そうなれば今後北朝鮮に対して軍事力を使った圧力路線は使いにくくなる。つまり将来の選択肢を狭めることになる。アメリカの懸念はまさにそこにあります」
と、武力による威嚇を禁じた国連憲章を無視した解説を加えているが、米朝首脳会談で両首脳は「双方の国民の平和と繁栄を希求する意思に基づき、新しい米朝関係を構築すること」、「朝鮮半島の永続的かつ安定的な平和体制の構築に共同で尽力する」こと、「『板門店宣言』を再確認し、朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け努力すること」、「戦争捕虜や行方不明兵の遺骨回収に努める」ことを宣言している。朝鮮半島の非核化が停滞しているのは、朝鮮側がミサイル施設の解体や米兵の遺骨返還など合意を着実に履行する一方で、合衆国側が宣言を無視して朝鮮の非核化だけを要求し、平和条約締結に向けた交渉を拒否していることが原因なのであって、「非核化協議は危機的な状況」という朝鮮政府の書簡は「好戦的」な「警告」ではなく、正確な現状分析であるとともに、合衆国政府に首脳会談での約束を守るよう促す正当な要求といえる。「非核化に対して考えを変えた」のは明らかに合衆国政府の方であって、朝鮮側が非核化すれば「アメリカは関与する用意がある」とか、終戦宣言すると「今後北朝鮮に対して軍事力を使った圧力路線は使いにくくなる」といった主張は、首脳会談での合意に反するものだ。合衆国政府の方こそ、「非核化に真剣な姿勢」を見せなければならない。 また朝鮮政府は1974年以来、一貫して合衆国政府に平和協定締結を求めており、朝鮮政府が「最近になって急に」朝鮮戦争終結を「主張してきた」というのも事実と異なる。
合衆国政府もマスメディアも、朝鮮戦争の終結よりも朝鮮の非核化が先だと主張しているけれども、戦争状態に置かれている国が戦争終結を求めても拒否され、相手側が依然として敵視政策を続けている中で──米軍は首脳会談後の今年7月にも、核搭載可能なB52戦略爆撃機が参加する自衛隊との共同訓練を日本海上空で行っている(毎日18/7/29)──相手の侵略を防ぐための決定的な兵器を先に放棄するなどということがあり得るだろうか。 朝鮮半島の非核化を進めるために、合衆国政府は国際法を守って敵視政策をやめ、米朝首脳会談での約束を守って朝鮮戦争を終結させるための交渉を始めなければならない。今年3月まで米国務省の北朝鮮担当特別代表を務めたジョセフ・ユン氏も、朝日新聞(18/8/31)のインタビュー記事で次のように述べている。
「(朝鮮政府は)我々があきらめろと言って、核兵器を放棄することはない。彼らが思っているのは、百%安心し、安全が保障されるまで、核兵器をあきらめないということだ」、「北朝鮮の言うことにも一理ある。米朝首脳会談の共同声明には、終戦宣言(に向けた合意)も含まれていると思う。北朝鮮が『米国は約束したはずだ』と言うのは理にかなっている。率直に言って、終戦宣言は実行されるべきだと思う。戦争の終結を宣言することで、米国は何も重要なものは失わないと思う」
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