森友学園問題と言えば9億5600万円の土地評価額の国有地を1億3400万円に値下げして民間業者に売却した件である。国の土地がこんなにディスカウントされて民間に売却された例がほかにあるのだろうか。特に問題視されたのはこの異常な割引きの背景に安倍首相夫妻が関係しているのではないか、という疑惑からだった。その国有地にゴミが埋まっているとしてゴミ撤去費用8億2000万円が割り引かれたということだが、ほんとうにそんなにゴミが埋まっているかどうかもはっきりしない。国民の目線から見ると、疑問だらけの事案だ。このまま終わらせてはいけない、と立憲民主党の川内博史(かわうちひろし)衆院議員は森友学園問題に絡む打合せの記録資料を情報公開法にのっとり財務省や国交省に請求した。しかし、結果は全部不開示の決定だった。呆れた川内議員はツイッターにこう綴った。
「森友学園に関する財務省内部の打合せ記録・国会での想定問答、国交省内部の打合せ記録、財務省と国交省の打合せ記録。以上4件の情報開示請求をしていたが、これまで報告してきた通り全て不開示。紙1枚出てこない。不開示4連発。『それは、いくら何でも御容赦ください』は、こっちのセリフだ。」
国会には国政調査権があると思うのだが、その国会議員が一国民と同じ立場で情報公開請求をしているのである。衆参両院に設置された委員会ではなく、一議員の自由意志として情報公開請求を省庁にする場合は国政調査権としては受け付けられないのだという。川内議員を訪ねて、その経緯を聞いた。
川内「土地の値引きをはじめとしていろんなことがばれそうになると、隠蔽、改ざんが行われてきました。国民の多くはおかしいと思っています。書類の廃棄や虚偽答弁が行われましたが、誰も責任を取らされていないのです。本件事案に関係していた人では現場レベルの人がいろんなことを押し付けられて一人自殺していますが、その他、この案件を指揮し、主導したであろう人々はみんな出世しているんです。みんなが出世していること自体が首相案件であったことを物語っているのではないでしょうか。改ざんの中心で値引きにも関与した財務省理財局の中村(稔)総務課長も停職一か月があけると、財務省の大臣官房参事官となっていて、出世しているんですよ」
この件に関して財務省が過去に900枚以上の面接記録を公表しているが、そこには本質の部分は出てきていないと川内議員は考える。そこで値引き、改ざん、書類の廃棄と言った点に関して役所内および役所間でどのような連絡があったのか、その記録を財務省や国交省に提出するように請求を行った。公文書管理法の規定で、こうしたやり取りは記録されることになっているからだ。だが、不開示ばかりだった。
「森友学園に対する国有地の貸付け及び売払いに関する近畿財務局と理財局間での関係資料」についての不開示の理由は「開示請求に係る左記の行政文書については、行政機関内部又は相互間の審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ及び不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあること、並びに事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ及び契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国等の財産上の利益や当事者としての地位を不当に害するおそれがあることから不開示とした」(財務省)というものだった。
「森友学園に対する国有地の貸付け及び売払いに関する近畿財務局と大阪航空局間での関係資料」の開示請求でもこれとまったく同じ文言で不開示とした理由が送られてきた。いちいち省内の会議を情報公開させられたら、自由な会話ができなくなって業務にも支障をきたす、ということが不開示理由として述べられているが、これは普通の国有地売却ではない。極めて異例なケースであり、割引額も8億円以上と1つの学校法人にとってみれば莫大な額である。民間の土地売買ではなく、国有地の払い下げ事案であり、国民にはなぜそのようになったのか、知る権利がある。行政文書を残す必要があることも、情報公開請求制度の存在理由も、まさにこのようなケースを国民がチェックできるようにするためにこそであろう。
川内議員は総務省の情報公開・個人情報保護審査会にこの「不開示」について不服申し立てをこれから行う予定だという。もしこの件がうやむやのまま幕引きされてしまったら、将来、行政府は国民に秘密で、どんなことでもできることになりはしないだろうか。この件はその試金石となるだろう。
※総務省の情報公開・個人情報保護審査会
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/jyouhou/
村上良太
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