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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年10月16日15時49分掲載
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農と食
地域と運動の現場から考える種論議(上)復活法案と県条例で対抗 大野和興
2018年4月から主要農産物種子法(以下、種子法)が廃止され、そのことをきっかけに種子に対する関心が高まっている。農業にとってはかなり重要な制度改変であるにもかかわらず、種子法廃止をめぐる国会審議は、安倍内閣の政治姿勢に典型ともいえる強引さで押し通され、あっという間に廃止法案が2017年3月に可決成立した。国会審議中から、種子法が廃止されることは日本の食料主権は放棄することに等しいといった反対論が盛り上がり、廃止後六野党が種子法復活法案を国会に提案したり、種子法運営の主要プレイヤーである県が、種子法の仕組みを継続するための条例を作るなどさまざまな動きが出ている。ここでは、そうした種子法の制度をめぐる動きを整理すると当時に、種子論議を制度論の枠組みから解き放し、人びとにとって種とは何か、という視点から考えてみる。
まずことの経過を整理しておく。廃止された種子法がいう「主要農産物」とはコメ、ムギ、ダイズの三つを指す。人びとの生命の再生産にかかわる基本食料といいかえてもよい。といっても、ムギ、ダイズはその供給のほとんどを輸入に頼っている(自給率は2017年概算でコムギが14%、ダイズが7%)から、ここで問題となるのはコメということになる。
種子法はこれら基本食料の育種、種子の生産・普及を国の管理のもとに都道府県に義務付けた。それを受けて都道府県の農業試験場は品種の開発や、原種や原原種などの遺伝子資源管理、奨励品種を定めて地域の生産者への種子の提供などを行ってきた。基本食料の種子を開発から生産、普及まで公的に管理してきたのが種子法なのである。同時に農業競争力強化支援法第8条4項で、種子や種苗について、民間事業者の開発を促進するとともに、国や都道府県の試験研究機関がもつ種苗の生産・育種に関する知見の民間事業者への提供を促進すること、を定めた。
こうした内容は、所管官庁である農林水産省から出てきたものではなく、内閣直轄の規制改革推進会議の農業ワーキンググループ(WG)の意見取りまとめそのものであるところに、種子法廃止に本質がある。同ワーキンググループにはこの問題の専門家は一人もおらず、グローバル企業の要求が直接現れるという意味では、きわめて分かりやすい展開だった。ほとんど審議らしい審議もなく、問題提起を無視して強行するという安倍政権の性格がもろに現れたのもうなずける。
種子法の廃止は、基本食料の公的管理を取り払い、民間に開放することを意味する。コメの育種を市場競争の中に投げ込み、コスト引き下げと同時にこれまで公費で開発されてきた技術や仕組みを民間に開放させる狙いがあると指摘されている。こうした動きに抗して4月19日、立憲民主党、日本共産党、希望の党、無所属の会、自由党、社民党の6野党は種子法復活法案を国会に提出した。廃止になった種子法をそのまま復活させると同時に、都道府県の種子生産に関する知見の海外流出を招きかねない「農業競争力強化支援法第8条第4号」を削除するというのがその内容である。復活法案は6月6日に衆院農水委員会で審議されたが、与野党の論議は平行線のまま終わった。
一方、県段階ではなんとか種子法の枠組みを残したいと、それぞれ独自の条例を制定したり制定に向け動いたりしている。直近までの動きでは、新潟、埼玉、兵庫の3県が条例を制定済みで、北海道、山形、長野、富山の4道県が制定に向けて動いている。それぞれ地域性を加味するなどの工夫もみられる。8月29日に骨子案を発表した北海道の場合、道・JA農協・生産者の連携と役割分担、北海道立総合研究機構などが積み重ねてきた知的財産の保護、財政措置などについて触れている。さらに、従来の種子法の枠組みを超えて、道農業の重要な構成要素である輪作体形をくるみこむ制度化も視野に入れている。 (続く)
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