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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年11月27日14時07分掲載
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検証・メディア
「慰安婦」問題 加害者が被害者に謝罪すべきだという常識的な判断をすることができないマスメディア Bark at Illusions
日韓合意(2015年)に基づいて設立された「和解・癒やし財団」を韓国政府が解散させたことに憤慨する日本政府に歩調を合わせ、マスメディアは韓国政府の対応を非難し、財団の解散が日韓関係に与える影響を懸念している。しかし日韓合意がうまくいかなかったのは、日本政府の謝罪や賠償を求める元「慰安婦」の人たちの意向が反映されていなかったからだ。日本政府が言うように「慰安婦」問題を「最終的かつ不可逆的」に解決させ、日韓の「未来志向」の関係を築きたいなら、まずは日本政府が被害者の女性らに謝罪することだ。
日韓合意は、「慰安婦」問題解決のためと言いながら、被害者である元「慰安婦」の女性らは合意形成に参加できず、日本政府に対して誠実な謝罪と賠償を求めていた彼女らの意向は合意に反映されなかった。日本軍の責任を曖昧にした安倍晋三の「お詫びと反省」が岸田文雄外務大臣(当時)の代読で表明されたけれども、元「慰安婦」への直接の謝罪がなく、日本政府が拠出した10億円は「賠償金」ではなく「支援金」だった。 マスメディアは元「慰安婦」の7割の人が支援金を受け取ったことを根拠に元「慰安婦」の人たちが日韓合意を受け入れているかのような印象を与えているけれども、世論調査ではないのだから被害者全員が救済されなければ問題の解決にはならない。また支援金を受け取ったという7割の人についても、財団事業を検証した韓国政府の報告書が「高齢の元慰安婦が『現金の意味を正確に理解していたか、議論の余地がある』と、支給方法に疑問を呈し」ている(毎日17/12/31)ほか、パク・クネ前政権と「和解・癒やし財団」が支援金を「賠償にあたるもの」と欺いて元「慰安婦」の人たちを説得してきたとの報告(レイバーネット17/1/10)もある。7割の人が支援金を受け取ったからといって、日韓合意が被害者に支持されているかのように言うのは間違いだ。仮に元「慰安婦」が「賠償金」ではなく「支援金」だと理解して受け取っていたとしても、それは日本政府が自分たちに謝罪したり賠償金を支払ったりすることが今後ないだろうという絶望の下に受け取っていると解すべきだ。それでは被害者は救済されたとは言えないし、「慰安婦」問題が解決したとも言えない。
マスメディアではほとんど報じられなかったが、国連の強制的失踪委員会は11月19日に公表した日本に対する審査の最終見解の中で、「慰安婦」問題が「『最終的かつ不可逆的に解決した』との日本政府の立場に遺憾の意を示」すとともに、元「慰安婦」に対して「(強制的失踪防止)条約が定める適切な補償が十分に行われていないとして懸念を示し」ている(共同18/11/20)。 「慰安婦」問題は、加害者である日本政府が被害者の元「慰安婦」の人たちに対して謝罪と賠償を行わければ解決しない。この事は常識ある人間なら誰でも理解できることではないだろうか。
ところが、日本のマスメディアは韓国のムン・ジェイン政権が「世論に迎合した」とか(世論を政策に反映させるのが民主国家の基本姿勢であるけれども)「国際的な約束」を反故にした(合意文書が存在しない日韓合意は拘束力がない上、国会での審議など民主的な手続きを踏まなかったことや前述のような理由などから日韓合意には正当性がないけれども)などと言って韓国政府を非難したり、「ムン政権の狙いはどこにあるのか」とか韓国政府は「この問題の出口をどう考えているんでしょうか」などと言ってムン・ジェイン政権の動機や今後の対応を詮索したりするばかりで、加害者の日本政府が被害者の元「慰安婦」に対して謝罪すべきだという常識的な判断をすることができない。 例えばNHKニュース7(18/11/21)は、アナウンサーの鈴木奈穂子が
「私たちは隣国韓国とどう向き合っていけばいいのでしょうか」
と問いかけ、それに答えてNHK国際部長の伊藤良司は
「元『慰安婦』の問題や太平洋戦争中の徴用を巡る問題はもはや外交ではなく、日本に賠償などを求める韓国国内の主張を韓国政府自身がどのようにコントロールするのか、半ば韓国国内の問題になりつつあります。日本としては、いずれの問題も解決済みだとする姿勢を貫く一方で、韓国政府がこの問題をどのように処理しようとしているのか冷静に見極める必要があると言えます」
と、韓国政府に責任を転嫁している。
加害者である日本政府が被害者の女性らに対して謝罪や賠償を行っていないという事実に照らし合わせて、「私たちは隣国韓国とどう向き合っていけばいいのでしょうか」というのは、なんと身勝手で厚かましい問いかけだろう。鈴木奈穂子は番組の中で「支援金」という言葉を使って日韓合意について説明している。鈴木奈穂子がどこまで言葉の意味を意識しているかはわからないが、公共放送を自負するNHKの夜の主要ニュース番組のアナウンサーなら「支援」と「賠償」の違いぐらいは理解しているはずだ。鈴木奈穂子の問いかけに答える伊藤良司も、加害者の日本政府が謝罪と賠償を行っていないことは棚に上げて、問題を被害者側の韓国の国内問題にすり替えるとは、下劣と言うほかない。
ニュースウォッチ9(18/11/21)も日本政府の姿勢を批判することなく、キャスターの有馬嘉男がムン・ジェイン政権に対して
「未来志向の関係が、言葉だけにならないようにしてもらいたいと思います」
と求めるなど、加害者である日本政府が被害者に対して謝罪すべきだという考えが全く念頭にない。「未来志向の関係」というのは過去の犯罪の免罪符ではない。加害者側が過去に犯した罪の償いもせずに「未来志向の関係」とは、身勝手にも程がある。
またニュースウォッチ9で解説にあたったNHKソウル支局長の高野洋は、
「来年3月には日本の植民地支配からの独立運動が始まって100年の記念日も控えており、関係改善のきっかけをつかむのは当面難しいと言わざるを得ません」
と日韓関係の今後を危惧しているけれども、その原因が被害者に対して謝罪しない日本政府にあるということにまでは思いが至らない。日本がきちんと謝罪して賠償していれば、「100年の記念日」が関係改善の妨げになるだろうか。先日第一次世界大戦100周年を迎えたヨーロッパでは「記念日」を前に過去の戦争犯罪を巡ってドイツとフランスの関係がぎくしゃくしていただろうか。
毎日新聞社説(18/11/22)は、さらに下劣だ。曰く、
「韓国政府は元慰安婦らの意見に耳を傾けるという『被害者中心主義』を掲げる。だが、批判ばかりで代替案を示さないなら前進しない」 「韓国では最高裁が先月、韓国の元徴用工に日本企業が賠償するよう命じた。歴史問題において『被害者』の韓国は『加害者』の日本にどのような要求をしても構わないという考えがあるのではないか」
中国や朝鮮の人権問題には敏感に反応するくせに、韓国に対する自国の人権侵害が問題となると基本的な道徳観すら欠如してしまうというのはどういうことか。大日本帝国時代の頃と同じように、未だに日本以外のアジア諸国に住む人たちのことを見下しているのではないか。 その一方で、日本は帝国時代の人権侵害を認めて謝罪しないがために近隣諸国とうまくやれず、その帳尻合わせのためにいつまでもアメリカ合衆国の言いなりになっている。本当に情けない国だ。
少しは恥を知れ。
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