フランスで昨年11月17日に始まり、今も週末ごとに続いているマクロン政権への抵抗運動、いわゆる「黄色いベスト」は単なる乱暴狼藉の無頼漢の集合体というわけではありません。彼らの黄色いベストの背中には様々な思いが書き記されているのです。そこから何が読み解けるのでしょうか。パリで2016年3月31日に始まった運動の「立ち上がる夜」に参加したのち、「黄色いベスト」にも参加しているデザイナーのルイーズ・ムーランさんによる写真です。一連の写真はパリで行われた黄色いベストの参加者のものです。
Je pense donc j'y suis !
(私は考える ゆえに私はここにいる!)
これはデカルトの「我思う ゆえに我あり」の変化形でしょう。ものを考えるからこそ、私はこの運動に参加しているのだ、という強いメッセージです。みんなで「マクロン、辞任!」と唱和するときもありますが、こうして一人一人がベストの背中にマジックなどで書き込みをして、個別のメッセージを発信しているのです。
Si vouloir vivre est un crime ,alors nous sommes tous coupables.CRS on se bat aussi pour toi pour une France plus just
(もし生きたいと願うことが犯罪であるなら私たちは皆有罪です。機動隊よ、私たちはあなたのためにも闘っているのです。もっと正義が実現された1つのフランスのために)
機動隊によって失明したり、負傷したりした黄色いベストの参加者やジャーナリストは多数に上ります。ある情報では重傷者が100人くらい存在していて、彼らの痛々しい写真がソーシャルメディアに出回っています。その多くはフラッシュボールと言う球によるものです。球はゴム製ですが、これが当たると流血したり、大きく腫れあがったりしています。とくに頭部が狙われていることは重大です。ある統計では8割近くが頭部の負傷なのです。目に当たると失明してしまいますが、実際にその報告があります。筆者はカメラマンが頬にフラシュボールを浴びて路上に倒れこみ、流血した写真を見ました。そのカメラマンは傷ついた頬をさらしてなおもカメラを構え続けていました。そして、さらに機関銃を持った機動隊員も控えていると報じられております。
Ni homophobe, ni raciste, ni antisemite. Ma haine n'est dirigee que contre l'injustice sociale !
( 同性愛への嫌悪でも、人種差別主義でも、反ユダヤ主義でもありません。私の憎しみはただ一つ、社会の不正義に対するものです)
「社会の不正義」に対する憎しみ、あるいは社会的正義のための行動などなど、黄色いベストの参加者にはフランス社会における正義とか公正さが侵されている、という思いが強くあることがうかがえます。これは富裕層がますます豊かになる反面、貧困な人たちはますます追い詰められていることが背景にあるのかもしれません。また、不正義と言う点では大企業や大富豪の中に利益をケイマン諸島などの金融口座につけかえてフランス国家に税金を払っていないこともあると思われます。
写真 Louise Moulin
村上良太
■黄色いベストの背中にこめたメッセージ その2
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201901281155061 ■黄色いベスト、立ち上がる夜、そして日本
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201901012250292 ■フランスの現地ルポ 「立ち上がる夜 <フランス左翼>探検記」(社会評論社)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201807202152055 ■マクロン大統領と金融界 マクロン大統領の政権の本質を理解するには本山美彦著「金融権力」が不可欠
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201812151001036
■2016年 腐敗した大統領・朴槿恵の退陣を求めたソウル市民の闘い ドキュメンタリー写真家、ロ・ヨンヒョン(Roh Yong Heon)さんの記録
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201803272127402 ■2016年 腐敗した大統領・朴槿恵の退陣を求めたソウル市民の闘い ドキュメンタリー写真家、ロ・ヨンヒョン(Roh Yong Heon)さんの記録 その2 ロウソク集会から年明けて2017年
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201803290145164 ■ソウル 朴大統領の退陣を求める大規模抗議デモ 80年代以来最大の怒り
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201611270951150
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