2019年1月29日、国連安保理が国連事務総長個人特使ホルスト・ケーラー元ドイツ大統領による西サハラ交渉の経過報告を受け、討議しました。 6年半以上も国連交渉を拒否し続けてきたモロッコを、交渉の席につけた個人特使ホルスト・ケーラーに、殆どの国連安保理参加国は称賛の拍手を送りました。 そんな中で、フランス国連大使は、「この個人特使は、新たな会議開催を宣言し確約したんだから、彼はそうするんだろうね、、」と、明らかに嫌味な水をさしました。 フランス人の国連事務総長報道官ステファンは、「私は、誰も幻想を抱いてないと思う、、この類の仕事は、我々サイドの多大な協力がないとやれない、、」と記者会見で、やれるもんならやってみろと言わんばかりの、突っぱねた発言をしました。 フランス人って、嫌味ですね、、
(1)国連安保理で西サハラ交渉経過報告: 「我々は、次の円卓会議(ラウンドテーブル)に向けて準備中だ。3月の会合は成功すると信じている」と、2019年1月29日の国連安保理会合で国連事務総長個人特使ホルスト・ケーラー元ドイツ大統領は、2018年12月のジュネーブ円卓会議報告に続いて、交渉計画を明かした。さらにホルスト・ケーラー元大統領は、「2月には、次回円卓会議のために、様々の関係者と個別交渉を続ける」と、言及した。 国連安保理西サハラ討議の後、フランス国連大使フランソワ・デラットレは、「安保理メンバーは挙って、第二円卓会議を構築しようとするケーラー個人特使の努力を、支持している。彼は具体的な日程を言わなかったが、ケーラーの言葉尻から察すると、目算ありなんだろうね、、彼は本当の状況を把握しているだろうし、円卓会議参加者全員の願望と信頼を得ているらしいし、、まあ、いい雰囲気だ」と、記者団に語った。 ドイツ国連大使クリストフ・ヒュースゲンは記者団に、「円卓会議についた誰もが彼を支持し、解決しなければならない紛争だと認識していることが重要だ、、この紛争解決は当該地域の住民にとって非常に喜ばしい。なによりもマグレブ北アフリカは未開の資源宝庫だからだ。その開発が進んでいないのは、ひとえに西サハラ紛争が解決していないからだ。彼は、前例にない彼独自のやり方で、作業を進めている」と、ホルスト・ケーラーの活動を援護射撃した。 続いて南アフリカ国連大使ジェリー・マジラは、「紛争解決のため、AU(アフリカ連合)はより一層活動しなければならない。一方モロッコは、信頼関係を築くため、良心と真心をもって拘束している西サハラ政治囚を開放し、人権活動家たちが占領地で検証することを許可し、西サハラ天然資源の強奪を止めなければならない」と、西サハラ人の人権と平和活動を援護射撃した。 ドイツと南アフリカは共に2019年から2001年にかけて、国連安保理の席につく。
(2)西サハラの反応とアメリカ国連代表部: 2019年1月29日の国連安保理西サハラ討議を受けて、同日、西サハラ難民政府SADR(サハラ。アラブ民主共和国)は、「個人特使のリーダーシップと安保理の協力に感謝している。我々のために、今、正当で平和的で恒久的な解決に達する希望に満ちた窓が開かれたのだ。その窓は、西サハラでの民族自決権行使へ導いてくれるものと信じている。この機を逃さず、西サハラ人民の不動な人権と民族自決を保証する具体的な方策を確立することを、国連安保理に強く要請する」と、声明を出した。 アメリカ国連代表部は、「西サハラの人々が、民族自決権を行使できる、双方(紛争両当事者)が納得のいく交渉を再開するべきだ」と、改めて国連安保理を急かせる声明文を出した。アメリカの声明文は、モロッコが提案している<モロッコ領土内での地方自治案>などに、触れていなかった。 この日1月29日の、国連事務総長定例記者会見で報道官のステファンは、国連安保理西サハラ討議の報告をしなかった。記者の一人から事務総長の見解を急かされたフランス人報道官はフランス国連大使の発言をオウム返しした。そして、「西サハラには、多くの個人特使が関わり、我々は長期にわたり働いてきた。この個人特使が新円卓会議を予告し、確約したんだから、彼はそうするんだろうね、、もう一度言っとくが、誰もいかなる幻想も抱いていないということだ、、この類の仕事には、我々側(国連スタッフ)の膨大な労力がいるんだよ、、」と、答えた。このフランス人報道官は、西サハラ紛争早期解決を嫌うモロッコを、応援しているのだろうか?
(3)モロッコはベネズエラ反政府運動便乗へと外交転換: CORCAS(王立サハラ問題諮問評議会)が、安保理討議から三日遅れで、「国連安保理がモロッコサハラ問題に関する討議を、国連事務総長個人特使の参加の下に行われた」と、やっと、発表した。モロッコ官製通信社MAP(マグレブ・アラブ・プレス)の国連取材を基にフランス国連大使の発言などを紹介したが、いつものような主張や独自の見解はない。 2019年1月30日、ホワイトハウスがメールやツイッターで、♠米大統領が暫定大統領への就任を宣言したベネズエラ国会議長グアイドに電話で支持を表明した。グアイドは即刻、♠米大統領の電話支持を支持者に公表し、大規模な反政府デモを国民に呼びかけた。米国務長官ポンピオは国連に出向き、安保理でベネズエラ制裁を提案し、国家安全保障補佐官ジョン・ボルトンは各国にグアイド支持を呼びかけベネズエラに経済制裁を科した。大量破壊兵器などの嘘をでっち上げイラク戦争に世界を巻き込んだブッシュ米政権、、<アラブの春>幻想ムードでリビアを潰したオバマ米政権を、連想させる。両国とも石油産出国だ。シリア潰しに失敗したアメリカは、中南米の石油産出国侵略を仕掛け始めたようだ。 MWN(モロッコ世界ニュース)が、「昨日(1月29日)、モロッコ外務大臣ナセル・ブリタが、ベネズエラ反政府勢力指導者のグアイドに電話で支持を表明した。この電話会談を受けてベネズエラ反政府外交補佐官マヌエル・アヴェンダノは、グアイド勢力は西サハラ国家承認を再検討すると、明言した」と、モロッコはベネズエラ内紛を利用しようとする外交作戦を公表した。ベネズエラは西サハラ難民政府SADR(サハラ・アラブ・民主共和国)を国家承認し、中南米での西サハラ支援を引っ張っている。モロッコにとって、ベネズエラ・マドゥーロ現政権崩壊は西サハラ中南米支援網を破ることに繋がる。そのうえ、モロッコのベネズエラ現政権打倒支援は、政権崩壊の仕掛人アメリカにゴマをすることにもなり、一挙両得の外交政策だと踏んでいる。 「ベネズエラ内紛の好機を逃がすな!」と、モロッコのマスコミは発破をかけている。
1月31日、モロッコ・マスコミは、「西サハラ紛争が早期解決するぞ!」というキャンペーンを張りました。 MWN(モロッコ世界ニュース)は「国連外交官たちは、西サハラ紛争の終結に希望を見つけた!」とか、「国連とアメリカは南スーダンの失敗を学べ!」とかの題目で、西サハラ紛争早期終結を牽制しつつ、モロッコ外交団を煽りました。 外交評論家たちはモロッコ外交団に、「なにがなんでもアメリカの支持を取り付けろ!」と、けしかけています。 しかし、モロッコ外交団を動かせるのはモロッコ国王、、そのモロッコ国王を動かすのは元宗主国フランスなんですけど、、
Youtubeにアップした「人民投票」(Referendum)を今年もご案内します。 「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いいたします。 「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2019年2月1日 SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
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