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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年02月19日21時53分掲載
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メキシコ映画ROMAの周辺 山端伸英
関係者は何も言わないが、オスカー賞にノミネイトされたメキシコ映画ROMAには、異常なほど「小津安三郎」の影響が見て取れる。スペインではアントニオ・サントスAntonio Santosの「Yasujiro Ozu」は映画関係者によく読まれており、ROMAのアルフォンソ・クアロン監督にも伝わっているだろうが、そのカメラワークとカットの取り方は小津の引き写しかとも思われるものだ。実際、アメリカやラテンアメリカではこのような映画製作思想は存在しなかったわけで、今回のROMAの評価は実際には小津の評価につながって欲しい。
この間、メキシコでは芸能界を中心にこの映画の主演女優に対する嫌がらせが横行した。主演のジァリッツァが先住民社会の出身で欧風の女優ではないことを標的にしていた。彼女の役割に対する非難は、むしろ監督や製作者に向けられるべきで小津の製作思想では原節子のような欧風女優は必要な人材だった。 また、メキシコの現在の社会状況を考えれば、ジァリッツァの登用は非常に時宣を得た配役だったともいえる。スペイン帝国の犯罪者捨て場であったプエブラ出身の俳優セルヒオ・ゴイリがその社会不安化体質そのものに彼女を「Pinche India(原住民を貶す言葉)」と表現したのは、メスティソや農村部での中国人弾圧傾向をわれわれにも思い出させる。 ネットでは彼に対する非難が大勢を占めた。
現在の日本の異常な嘘改竄人権剥奪政治に比べてメキシコは人類史に明るい光を当てている。このような時期にROMAが現れたことには、その一歩前進をROMAのテーマにも期待すべきであろうし、日本人メキシコ在住者は小津安二郎の日本における歴史的意味をメキシコ社会に提示する必要もあるだろう。映画ROMAは1970年代におけるメキシコ市のROMA地区で中産階級の家庭に雇われた女中さんのエピソードを追っている。階級社会の中での主役の生き方を通してメキシコ社会の病巣を背景的に扱っている。
(筆者はメキシコ在住。研究者)
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