・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・国際
・農と食
・教育
・文化
・アジア
・入管
・中国
・市民活動
・米国
・欧州
・みる・よむ・きく
・核・原子力
・検証・メディア
・反戦・平和
・外国人労働者
・司法
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
・沖縄/日米安保
・難民
・医療/健康
・環境
・中東
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年11月22日
・2024年11月21日
・2024年11月20日
・2024年11月18日
・2024年11月17日
・2024年11月16日
・2024年11月15日
・2024年11月14日
・2024年11月13日
・2024年11月12日
|
|
2019年02月21日11時24分掲載
無料記事
印刷用
地域
アベノミクスを地方から考える 「これではおカネはまわらない」 小野田明子
青森県は、自他ともに認める賃金の安い県だ。昨年は、鹿児島県より1円高く、762円で、ビリから2番目だった。自他ともに認めるとは、客観的に全国でも最も貧しい県だということと、主観的にも、経営者も「うちは苦しい経営なので、最低賃金で」と言い、労働者も「最低賃金でも貰えるならいい。会社がつぶれては困る」と応じる県民性にある。大企業は、数少なく、ほとんどが中小企業。しかも、親族会社となると採用も身内やその周辺だとすると、「労使関係」などという緊張関係は皆無といってよいだろう。はっきり言えば、日本で一、二番を争う安い労働力を提供している、都会から移住した者から見ると本当に人の好い県民なのである。
そういう環境の中でアベノミクスが成功し、地方のすみずみまで好経済が行き渡るという安部内閣に期待した青森県民は多かったのではないか。まさに他力本願だが、このことを検討し、青森県民の収入がどのぐらいあがり、都会と地方の格差が縮まったのかを検討するのも意味があるように思われる。
まず、第2次安部内閣が始まった2014年の青森県の最低賃金は、679円。4年後の2018年は、762円。83円上がっている。東京はどうかというと、97円あがって、2018年は、985円だ。青森の場合、月収にして、約14,000円、年収にして、173,000円だが、ここから、厚生年金、保険料を差し引かれた実質賃金を考えると、生活に余裕ができたという声は聞かない。
東京との格差はどうかというと、2014年は209円の格差。2018年は、223円で格差は縮まるどころか、ひらくばかりだ。時給で223円の差があると、年収いくらの違いがあるかといえば、月収で38、757円、年収で約465,000円の違いだ。労働者の最低生計費は、2016年の労働総研・全労連の調査では、25歳単身で全国で時給1,216円から1,413円で、平均で1,300円。月収にして23万円、年収にして276万円という結果が出ている。年収300万が、家庭をもち、子供を生める経済的な指標というが、その場合は、時給は1,500円となる。 青森と東京では、物価や家賃が違うという指摘もあるが、光熱費、水道料は東京よりも高く、介護保険料も約600円も青森の方が高い。とても、暮らせないというのが実感なのではないか。ちなみに国内で賃金格差のある国は、中国、カナダ、インドネシア、日本だけで、賃金の一元化が世界の常識なのだという。
この格差もさることながら、今の日本の危機は、東京の最低賃金でも、憲法で守られている生存権を保障する賃金に追いつかないのが現実なのである。全労連では、2010年の 雇用戦略会議における政府・労働者・使用者の合意では、「2020年までに早期に800円、経済状況を見ながら平均1,000円を目指す」としているが、そんな悠長なことをいっている場合ではないのである。なぜなら、最低賃金を大幅な引き上げこそ、人口減少に歯止めをかける最大の政策ということもあるし、もし働けなくなった時の生活保護、働き終えた後の年金の土台となるものだからである。
しかし、最低賃金を大幅にあげることはできるのか。専門家によれば、それは可能だという。大企業の内部保留、つまり大企業が貯めている425兆円から、最低賃金を引き上げ、労働時間の短縮、正規化などによって労働者に還元することができる。中小企業は、ほとんど大企業の下請けであり、この内部保留のお金を地方の中小企業まで回すこと可能だろう。また、最大の争点である消費税率10%で増収されるという5兆円は、法人税の実質税率を中小企業と同じに大企業も、今の10%(研究開発減税など)から18%にする。これで、4兆円の税収が見込まられるという。さらに株取引にかかる課税をいくら儲けても20%から、儲けた金額によって税率をあげれば、軽く1兆円は増収し、国民生活、ことに年収の少ない国民に多大な影響を与える消費税の増税は不要となるというのだ。大企業ばかりに目を向ける現政権ではできない仕事なのだろうが、もし、本当に国家存亡も危機と考える政治家であれば、ここに手をつけるのが本当だろう。
なぜなら、お金が回らないということが、資本主義の最大の危機だからであり、消費者なき企業は存続できないのは、当然だ。ここに気が付いている起業家は、いないでもないのが希望だが、政策として展開していかないと回復不能なところまで来ているのではない。「もう、だめだ。将来が見えない」という国民の悲鳴が聞こえないのだろうか?
政府のいう「全世代型社会保障」は、世代間で分配をかえるだけのものであって、人生の全過程での生存権の保障とは異なる。そういう意味でも、まずは、「どこに住んでいても同一賃金」を実現させていけば、地方も元気を取り戻せる。これが、火急に実現させて欲しい経済政策だとしたら、中央から地方へのトリクルダウンを目指すアベノミクスとは真逆ということになる。非正規労働者が、およそ40%というが、生業による安定した収入がなければ、安定した精神生活も送れないのは当然である。これは、経済問題でもあり、労働問題でもあるが、それだけに集約されるものではない。国民一人ひとりが、自分の幸福を求めることこそ、健全な国家ではないだろうか。その基礎がゆらいでいる。青森県は、最低賃金から脱することよりも、労働の価値、生存権はどこに住んでいても同じ。最低でも時給1、500円と主張することが、未来を切り拓く道なのではないかと考えるが、どうだろうか。
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
|