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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年03月08日13時12分掲載
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強権的支配者、メキシコ元大統領ルイス・エチェベリアの末路 山端伸英
九〇年代にはまだ元気でしばしばテレビに登場したメキシコの元大統領ルイス・エチェベリアは最近公の場に登場することはなかった。久しぶりに週刊誌プロセソ三月三月号( Revista “Proceso” No.2209, 3 de marzo de 2019) の表紙に九七歳の素顔を登場させている。昨年暮れに現政府の方針で大統領年金を打ち切られたのが響いたのか、エチェベリアの家族が、この二五年間元大統領の世話を焼いてきたマリア・モデスタ・ヒル・セディジョ女史を解雇した顛末が記事となっている。この週刊誌プロセソの成立にもエチェベリアは言論抑圧者として関与している。雑誌は、過去のいくつかの案件をフォローしている。
日本には第三世界主義、非同盟外交などの日本左翼好みのキャッチフレーズで左派として認知されてきたエチェベリアは、国内では強権主義支配の代名詞として依然として君臨していると言っても過言ではない。一九六八年メキシコ・オリンピック直前のトラテロルコ三文化広場での学生大虐殺。最近のメキシコ映画「ROMA」でも描かれた、一九七一年の地下鉄ノルマル周辺での学生運動襲撃事件。一九七六年の新聞エクセルシオルの故フリオ・シェレル社長追放。七〇年代の対ゲリラ弾圧、政治リーダーたちの行方不明事件など、内務省長官・大統領時代の抑圧にとどまらない。一九九四年一月一日に起きたチアパス州サン・クリストバル・ラス・カサスでのサパティスタ国民解放軍の蜂起とその後の運動、その年の政権党「制度的革命党PRI」幹事長フランシスコ・ルイス・マシウに対する白昼の銃弾による暗殺などの背後にエチェベリアの名前が登場していた。当時大統領だったサリナスは、大統領職を終えたあと、一時期、追い詰められ、その回顧録でエチェベリアを名指しにして糾弾した。エチェベリアの創設した「第三世界研究所」には七〇年代後半、故アドルフォ・シンセルなど青年層知識人が結集していた。
九七歳の彼は、彼の身の回りを見ていた女性が息子のべニートに悪し様にされ暴力を受けるのを目前にしながら、か細い声で息子に「落ち着いてくれ」と制止をはかる老人の姿になっている。しかし、この物悲しい老人の姿に対し、弾圧された言論人フリオ・シェレルが創設した週刊誌プロセソでさえ「孤立化され閉じ込められた老人」として家族による人権侵害状態を憂慮している。
PRIは昨年の選挙で第三党に転落した。国民選挙委員会INEや最高裁判所など制度的革命党PRIや国民行動党PANなど旧勢力の浸潤している組織はまだ虎視眈々としているが、依然として強権と恐怖の時代の象徴的人物であったエチェベリアの現在の姿は、九七歳だからといって侮れない人物ではあるが、ある種の過去の終幕を予告しているのかもしれない。あるいは雑誌プロセソは、未だにラテンアメリカに根を張るペルソナリスモの文化の中で、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールAMLO現大統領の強権化傾向を牽制しているのかもしれない。革命後九〇年間メキシコを支配してきたPRIは既にその傾向を指摘しているが、自分たちの作ってきた政治文化そのものを自己省察の糧ともしないで、汚職と無法を政治に持ち込んだこのほとんどマフィア集団と化した旧支配政党に健全な野党としての務めが果たせるのであろうか。
(筆者はメキシコ在住 研究者)
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