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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年03月09日10時24分掲載
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検証・メディア
国会パブリックビューイング運動の射程 村上良太
昨年始まった国会審議を公共の場で広くともに見る国会パブリックビューイング(国会PV)という運動についてその現場を訪れて、何回か記事を書きました。今後のことは未知数ですが、この運動が長く続いていくといいな、という思いを筆者は持ちました。
国会審議はTVで中継されることもありますが、多くの国民や市民はそれを同時中継で見ることが実際にはなかなかできないですし、さらにTVや新聞でのちに報じられたものが、必ずしも実際の審議の場を的確に描写したり、編集したりしているかと言えばそうではないようです。そこには編集デスクやプロデューサーたちの主観も入りますし、政治的な忖度も混じることがあるでしょう。仮に政治的な忖度がなかったとしても、報じる人の主観的判断が作用しますから、様々な政治的見識や批判的精神を持つ人が社会に共存する以上、本質的にどんな報道であれ異論を持つ人が出てきてもおかしくないのです。
そんな中で市民の目線、あるいは研究者の目線で国会審議を構成して見せる、というのは既存のメディアに対する1つのオルタナティブ運動でもあるかと思います。国会PVがTVや新聞で報じられている内容を市民が立ち止まってチェックする機会を提供するからです。今、放送局も新聞社もそれぞれ幹部に位置する人々は編集権を握って大きな権力を有しています。マスメディアは「第四の権力」と言われています。その編集権は報道の自由や表現の自由の証拠でもあり否定されるべきものではないはずです。司法・立法・行政から独立しているというそのことが「第四の権力」と言われる所以です。メディアの人々が自由に判断して自由に報道できることが大切です。だからこそ権力監視の役割も果たせるはずです。
しかし、第二次安倍政権が発足してから放送局も新聞社も〜すべてではないにしても〜大きな影響力を持つメディア企業の幹部らが安倍首相と頻繁に会食してきたという現実があります。そうした事実が続いてきただけに本当にメディアが自主独立なのか、と疑いの目でメディアを見る人が本当に多くなりました。本来、他の3つの権力から独立してあるべきメディアが行政府の仲間になっているのではないかと見られています。メディアを批判的に見ること自体はそもそも悪いことではないと思いますが、新聞不信あるいはTV不信というような形になるのは好ましくない傾向だと思います。
今から10年前あるいは20年前を思い出してみると、当時は新聞に活字になっていることは基本的に正しいと多くの人は感じていたのではないかと思います。それが最近、大きく崩れてきています。その理由は、様々な要因が複合されていると思いますが、新自由主義によって貧富の差が拡大し、社会が二分化してきたことも大きな要因となっていると感じます。中流層が減り、多くの人の実質所得が減っている反面、一部の人は収入が増えています。そういう二分化された経済構造になってきた今、報道は誰の視点に立ち、何をテーマにするか、そしてどう報じるか。報道は多くの人が中流意識を持っていた20年前、30年前とは比較にならないくらい難しい作業になってきたのではないしょうか。その困難な状況の中で、たとえば、かつて高市総務大臣(当時)が「電波停止」という言葉でマスメディアに圧力をかけたことを忘れてはいけないと思います。
こうした文脈の中で、国会PVが国会だけでなく、国会を報じるマスメディアをチェックする機会も広く市民に提供しています。市民の目にさらされることで、各メディアが「編集権」という建前上の言葉とは裏腹の実質的には政権への忖度に逃げ込むことができなくなり、より公正な報道を心掛けざるを得ない、そういう状況につながるといいと思っています。メディア監視について言えば国会PV以前には右派の側からのメディア監視運動がありました。その運動がどこまで客観性があったかはここでは置くとして、市民がメディアを批判的に見ることは情報化社会においては多かれ少なかれ必要になってくることだと思います。
国会PVは政権与党である自民党と(公明党の)連立政権の不正を現在国会審議の中で監視していますが、だからと言ってこの運動が反自民党の運動という風に考えるのは違っているのではないか、と思います。現在たまたま国会審議で統計の不正問題を追及しているのが野党議員なので、その発言の映像が国会PVでも引用されることが多いのですが、もし将来、自民党が下野した場合は新たに与党になった政党が監視されることになるのではないでしょうか。党派性に縛られないことがこの運動が長く続く社会的なインフラになる上で大切だと思います。自民党を支持してきた人でも、あるいは他の政党の支持者であっても国会PVをいつか自分たちでも活用できる、そういう広がりを持つことを期待しています。そして何より、メディアの仕事に携わっている人々自身が自分たちを振り返ってみるために活用できるインフラではないかと思います。
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