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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年03月16日16時26分掲載
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検証・メディア
マスメディアは朝鮮政府の主張にも耳を傾けるべきだ Bark at Illusions
ベトナムのハノイで開催された2回目の米朝首脳会談で、両首脳は朝鮮半島の平和と非核化に向けて具体的な成果を上げることができなかった。マスメディアの多くは合衆国側の主張をそのまま真実として受け入れ、合意に至らなかったのは朝鮮政府が一部の核施設の廃棄だけで、完全な制裁解除──あるいは事実上、完全な制裁解除──を要求したからだと説明して、会談が物別れに終わった責任の大部分を朝鮮側に押し付けている(実務レベルでの協議を省いて首脳同士で解決を図る「トップダウン方式」の外交の限界や、「安易な妥協」をしたと批判されることを恐れたトランプが朝鮮に譲歩できなかったということを指摘しているものも多数あるが、いずれも朝鮮側が最小限の非核化で最大限の「見返り」を得ようとしたということが前提になっている)。
マスメディアが合衆国に好意的な世論を創り出すためのPR(=プロパガンダ)機関ならそれでいいかもしれないが、真実を追及することがマスメディアの仕事であるならば、朝鮮側の主張にも真剣に耳を傾けるべきだ。
会談終了後の記者会見で、合衆国のドナルド・トランプ大統領は合意文書への署名を見送った理由について、朝鮮政府がニョンビョンにある核施設の廃棄と引き換えに「全面的な制裁解除」を求めたが、「我々はそれには応じられなかった」と説明した。当日の夜のニュース番組や翌日の全国紙の朝刊は、このトランプの発言をそのまま真実として受け入れ、朝鮮政府が合衆国にとって受け入れられないような「高いボール」を投げたとか、内政で苦境に立つトランプが譲歩すると見て強気に出たなどと決めつけた上で、ニュースを伝えている。
しかしこの問題に精通した専門家も指摘しているように「ニョンビョンの施設だけで完全な制裁の解除というのは難しいっていうことは、北朝鮮もわかっていたはず」(南山大学・平岩俊司教授 NHKニュース7 19/2/28)であり、朝鮮政府がこれまで主張してきた「行動対行動」の原則(段階的で同時並行的な措置)からも外れる。朝鮮側が「全面的な制裁の解除」を求めたというトランプの主張は疑ってかかるべきではなかったか。また合衆国では、議会下院が首脳会談当日にぶつける形で開いた公聴会で、大統領選を巡る「ロシア疑惑」などに関連してトランプの元弁護士だったマイケル・コーエンがトランプに不利になる証言を行っており、トランプが自身の思い通りに会談を行えたかどうか疑問だ。さらに、いくつかのメディアが注目したように、参加する予定のなかった対朝鮮強硬派の大統領補佐官・ジョン・ボルトンが2日目の交渉テーブルに着いていたことから、当初楽観ムードだった会談の風向きがこの時点で変わったと推測することができる。合意に至らなかった理由として、この会談に対する合衆国側の変心を疑う要素も十分にあった。しかも、この段階では朝鮮側の見解がまだ得られていなかったのだから、朝鮮政府が「高めのボール」を投げたと決めつける前に、マスメディアは朝鮮側の主張を確かめるべきだった。一方の見解だけを根拠に断定的にニュースを伝えるというのは、報道機関として一番やってはならないことではなかったか。
果たして、朝鮮政府は現地時間の深夜に会見を開き、朝鮮側が求めた制裁解除は2016〜17年に課せられた制裁決議のうち「民政」に関連するものだけだと述べてトランプの主張を否定したわけだが、またしてもマスメディアは朝鮮政府の反論に対する合衆国側の反論をそのまま受け入れ、朝鮮側が解除を要求した「一部の制裁」は制裁の「核心部分」だとか、「北朝鮮の要求は全ての制裁の解除と捉えられるもの」だなどと説明し、朝鮮側の主張をまともに取り合おうとしていない。結果、今回の会談で合意に至れなかったのは、一部の核施設の廃棄の「見返り」として最大限の制裁解除を要求した朝鮮側に責任があるという認識が支配的になっている。
しかし例えば朝日新聞(19/3/4夕刊)は合衆国のニューヨーク・タイムズ(19/3/2電子版)の報道を紹介しているが、それによると、トランプは「すべての核施設を廃棄すれば制裁解除に応じる」と提案したが、
「ボルトン米大統領補佐官やポンペオ米国務長官ら大統領側近は、トランプ氏の提案が実現する可能性は『ほぼゼロ』と考えていた。一方、ポンペオ氏らは事前にトランプ氏に対し、『寧辺核 施設の廃棄だけで合意すれば正恩氏にだまされたと見られることになる』と忠告していたという」
つまりボルトンやポンペイオは国内での支持率に影響するとトランプを脅した上で、朝鮮側が受け入れることのできない提案(トランプ自身はそのことに気付いていたかわからないが)をトランプにさせていたことになる。これが事実なら、合衆国側は最初からこの会談で合意に達するつもりがなかったというふうに考えるのが自然ではないだろうか。
首脳会談が物別れに終わった原因は何か。現段階で断定することは難しいかもしれないが、朝鮮半島の平和と非核化を実現させるために、マスメディアは少なくとも米朝間で主張が食い違っている点について検証する必要があるのではいか。
つまり合衆国政府の主張通り、朝鮮側の要求は「全ての制裁の解除と捉えられるもの」なのか、あるいは「民政」に関連する制裁の解除を要求しただけだという朝鮮政府の主張が真実に近いのか。そしてさらに重要なことは、1回目の米朝首脳会談で「新しい米朝関係」を築くことで合意した米朝両政府が平和と非核化の実現に向けた交渉を進める上で、朝鮮に対する制裁を続けることが妥当なことなのかどうか。正当なことなのかどうか。実際、朝鮮に対する制裁の中には、食品や繊維製品の貿易に関するものなども含まれている。国連の人道支援にも甚大な影響が出ている他、石油や石炭は市民生活にとっても不可欠であり、制裁が朝鮮に住む一般の人々を苦しめていることも事実だ。報道機関を自負するマスメディアは、そのことを検証する必要がある。
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