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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年05月17日00時06分掲載
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欧州
現代イタリア映画の監督たち 〜 チャオ!!イタリア通信(5)
2013年にイタリア映画「グレートビューティー」がアカデミー賞外国語映画賞を受賞して、イタリア映画が注目されました。イタリア映画も日本と同じように戦後世界的に知られるようになり、多くの映画人に影響を与えました。 戦後のイタリア映画の特徴として“イタリアン・ネオリアリズム”と呼ばれる一連の映画があります。戦争の悲惨さや戦後の貧しさを描き、多くの人々の共感を得ました。代表的な作品として、「自転車泥棒」や「無防備都市」、「ひまわり」などがあります。
その後、60年代、70年代には世界的に有名な監督が続々出てきます。フェリーニ、ヴィスコンティ、パゾリーニなど、今見ても全く色褪せることがありません。逆に、取り扱うテーマといい、物語の語り口といい、現在でもモダンな感じさえ受けます。 フェリーニは現代社会をファンタジーの手法で皮肉り、ヴィスコンティは徹底したリアリズムで人間の醜さを描き出し、パゾリーニは強烈な問題提起を行いました。その他、エットーレ・スコラやタヴィアーニ兄弟、マカロニ・ウエスタンの巨匠セルジオ・レオーネも個性的な映画を作りました。
今のイタリア映画はどうでしょうか。
「グレートビューティー」を作ったパオロ・ソレンティーノは一躍有名になり、ハリウッドでショーン・ペンと映画を作ったり、イギリス俳優マイケル・ケインと「グランドフィナーレ」を作ったりと国際的に活躍しています。 「グレートビューティー」は、フェリーニの「甘い生活」を彷彿とさせるようなローマの上流階級の人々の病んだ様子を描いていました。起承転結のあるストーリーというより、主人公の彷徨う内面を、主人公が出会う人々を通して描いている映画で、難解な部分もあるかもしれませんが、とても興味深い映画でした。 また、「イル・ディーヴォ」と「ロロ」で、それぞれイタリアの政治に良くも悪くも多大な影響を与えた前首相ジュリオ・アンドレオッティとシルヴィオ・ベルルスコーニを主人公として映画を作りました。政治的な映画というより、アンドレオッティとベルルスコーニの人物描写に焦点が当たっていて、イタリア現代史に足跡を残した二人の政治家を一人の人間として、どんな人物だったのかを描いています。そこに、監督の政治的視点を見出すことは難しいのですが、現代において、なかなか見られないジャンルの映画ではあります。
もう一人、今面白い映画監督がいます。マッテオ・ガローネで「ゴモラ」を作った監督です。 「ゴモラ」は、ナポリのマフィアによる抗争などを書いたロベルト・サルヴィーノの本「ゴモラ」を基にした映画です。「ゴモラ」を見た時に、戦後のネオリアリズムが戻ってきたと思いました。知っている有名な俳優がほとんどいなかったということもあるのですが、ドキュメンタリーを見ているような感覚で、マフィアとマフィアに絡めとられていく普通の人々の生活をじっと見つめる描き方が印象的でした。 最近、この監督の新作「ドッグマン」を見ました。この作品では、ローマのオスティア(映画監督パゾリーニが殺害された場所)を舞台にチンピラの友人の悪行に巻き込まれる、善良な男の哀しい顛末を描いていてとても良い映画でした。実際に起きた事件を基にストーリーを脚色しているのですが、実際は映画とは違ってマフィアが絡んでいるような、今もって謎が残る事件のようです。 映画では、事件を起こした善良な男の暮らしや心情、友人に対する感情が変化していく様子を中心に描いています。日本でも、8月に公開されることが決まったので、ストーリーを言ってしまうと面白みがなくなってしまうので言えませんが、この監督の好きなところは、普通に地味に暮らしている人々が、あるきっかけでもって、思いもかけない変化をするという誰にでも起こりうるような、社会の仕組み、社会の落とし穴にはまってしまうような、そんな変化を描いているところです。
他にこの監督の作品で、「リアリティー」という作品がありまあす。これもナポリで魚屋を営む男が、イタリアで若者が有名になりたくて出たがる番組のオーディションを偶然受けたことで、現実の生活からどんどん離れて行ってしまうという皮肉な映画でした。 主人公には優しい妻や子どもたちがいて、仕事や友人にも恵まれているので、テレビ番組の虚構の世界が自分の現実になり、自分を見失ってしまいます。これもいわゆる現代社会の落とし穴だと思うのです。地道に働いて身近な幸せをつかむより、ちょっと有名になって周りからチヤホヤされたいという欲望。本当の幸せや本当の人生が分からなくなっていくという皮肉を描いていました。この監督の視線が、とても興味深いし、共感するところがたくさんあります。
機会があったら、ぜひイタリア映画を見て下さい。ハリウッドの勧善懲悪的アクション映画に少し飽きたら、とっても人間味を味わえる映画がたくさんあると思います。(サトウ・ノリコ=イタリア在住)
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マッテオ・ガッローネとドッグマン主人公の俳優
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