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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年05月20日00時23分掲載
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コラム
昭和の最後の日
平成の時代が終わり令和の時代が始まろうとする頃、平成の歴史を振り返るテレビ番組がいくつも放送されていた。前の昭和の最後の日は1989年1月7日で、その日、天皇が亡くなった。僕はその日、ある事情で京都駅から新幹線で広島に向かおうとしていたのだが、新幹線に乗り込む直前に号外で知った。当時、毎日新聞大阪本社編集局で夜勤の学生アルバイトをしていた僕は1988年の秋ごろからXデーに備えた紙面づくりの準備をしていたのを覚えている。僕は整理部の号外担当者のために新聞社のライブラリーへ天皇の写真を何枚か取りに行ったのだ。
その後、何年か後に僕はTBSのドキュメンタリーを手がけてきた吉永春子氏のプロデュースでテレビ番組を作るようになった。吉永氏には「報道のお春」というニックネームがあった。「魔の731部隊」というスクープがあるが、「天皇と未復員」という番組も強烈である。ここで未復員というのは第二次大戦に出征し外国の戦場で精神を侵された兵士たちのことである。彼らは実際には帰国したのだが、書類的には「未復員」と扱われていたらしい。帰国してもお国のために任務を全うできなかったとして、家族の肩身が狭くなるために、彼らは東京の精神病院に送られ、そこで細々と集団で生きていたのである。吉永氏はそうした番組を過去に作っていたのだが、昭和の最後の日に吉永氏は撮影クルーともう一度、その精神病院を訪ねたのだった。敗戦から44年、病院の中に閉じこめられて生きることになった元兵士たちに会うためだ。彼らは病院の中のテレビで、天皇崩御のニュースを見ていた。その彼らに、「今、どう思いますか」と吉永氏は一人一人尋ねた。戦時中まで主権は国民にはなく、日本の軍隊は天皇の軍隊であり、皇軍と呼ばれていた。
昭和の最初の20年は大恐慌とファシズムと戦争の時代だった。暗い時代は20年続いた。その時代、政府は子供に教育勅語を押し付け、天皇のために戦って死ぬことを奨励した。NHKは戦争に負けていても勝っていると嘘をつき、大本営の発表をそのまま放送した。そうした時代は二度と来させてはならない。
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