欧州議会議員の選挙で今回、選出されたマノン・オブリ(Manon Aubry)氏は29歳。ジャン=リュク・メランション党首が率いるLa France Insoumise (服従しないフランス)の候補者リスト1位がこのうら若い女性マノン・オブリ氏だ。3位は前回書いたレイラ・シェイビ氏。レイラ・シェイビ氏は36歳と、いずれの女性も若く今年初めて議員に選出された。
シェイビ氏が力を入れてきたのは住宅問題やSDF(ホームレス)の問題、そして非正規雇用の問題など。これらはあらゆる世代が直面するテーマだが、若者にとっては特に身近な問題だ。
一方、マノン・オブリ氏は立候補する前は国際NGOのOxfamで大企業の課税逃れなどに取り組んでいた。議員に選出されても力を入れたいのが多国籍の大企業や富裕層などの国境を越えた課税逃れに対する取り組みだそうだ。最も利益を得ている組織や個人が国に応分の税金を払わないのだから、財政が乏しくなり、ますます庶民や貧困層に対する国の福祉の財源もしぼんでいく。とくに公的病院の財政難がとても厳しくなっていることはこれまで何度も指摘されてきた。だから、タックスヘイブンは大きな問題であり「服従しないフランス」が重視している問題の1つだ。
オブリ氏は名門大学Science Po (パリ政治学院)で学び、教鞭も執ってきた。オブリ氏と言えば、社会党にマルチーヌ・オブリという名前の党首を務めたこともある大物議員がいたが、マノン・オブリ氏は家族的には関係がないようだ。
党のウェブサイトや現地報道によると、オブリ氏は学生時代の2005年に〜彼女は15歳だったはずだが〜欧州連合憲法の採択に関する国民投票で”NO”を入れる運動に参加した。(フランス国民は結局、NOを突き付けたのだが、サルコジ大統領はそれを反故にし、憲法を承認して参加することになった)翌2006年には当時のド・ビルパン首相が導入した「初雇用契約」(CPE: Contrat premiere embauche)への反対運動を学生で組織している。これは初雇用に関して企業側が2年間の試用期間中は理由をつけなくても企業側の都合で自由に解雇できる法律だった。また、フィヨン首相が導入した一連の規制緩和「フィヨン法」(2004) にも反対運動をしていたそうだ。このようにオブリ氏は若くして政治運動に参加してきたため、現在29歳だが、すでに政治に関して15年くらいのキャリアはあると見てもよいだろう。議員になることだけが政治ではないのだ。
このマノン・オブリ氏が欧州連合本部のあるブリュッセルに行って、SNSでまず発信したのが、次のような事務所での会話だった。オブリ氏はこう言われたそうだ。
欧州議会本部の人 「あなたは議会の秘書ですか?」 オブリ氏 「いいえ、私は欧州議会議員です」
オブリ氏は、「若くて女性でも、議員になることができるってことを誰か、これらの人たちに伝えてください」とメッセージを伝えている。日本でも今後は将来性のある女性議員がもっと必要だろう。
■オブリ氏が市民の質問に直接ビデオで回答
https://www.youtube.com/watch?v=OEdmspozBPY
■Manon Aubry (La France Insoumise)
https://lafranceinsoumise.fr/actualites/elections-europeennes/les-candidat%E2%8B%85e%E2%8B%85s-aux-elections-europeennes/manon-aubry/
■Manon Aubry, tout savoir sur l'evasion fiscale et les inegalites
http://voxfemina.eu/actualites/manon-aubry-evasion-fiscale-inegalites.html
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