オーストリアがグリホサート禁止に向けて動き出した。これまでにオーストリアでは社会民主党がグリホサート禁止を主張していたが、先ごろオーストリア国民党との連立を解消した極右政党のオーストリア自由党のノルベルト・ホーファー党首は6月12日、「グリホサートが環境とヒトの健康にもたらすリスクを実証する十分な研究があり、禁止を進めることは責任ある環境政策の証である」と述べたという。(有機農業)ニュースクリップ
この発言を受けて、社会民主党のヴァーグナー党首は、グリホサートの禁止に関する社会民主党の長年の努力が「ようやく実を結ぶ」ことに「満足している」と述べたという。
ポリティカ(電子版)によれば、7月初めの議会農林委員会で審議されるだろうという。オーストリア自由党と社会民主党でオーストリア国民議会の過半数を占めることになり、グリホサート禁止に一歩前に進んだことになる。社会民主党は、グリホサート禁止を早急に実施したいとしている。
オーストリアにおけるグリホサート禁止の動きは2017年暮れにも明らかになった。当時、連立政権与党のオーストリア自由党とオーストリア国民党がそれぞれグリホサート禁止に言及し、欧州の環境NGOが歓迎する声明を出していた。しかし、連立政権では具体的にグリホサート禁止の動きはなく、立ち消えのような状態となっていたという。
・Politico, 2019-6-13 Austria reignites Europe’s weedkiller war
https://www.politico.eu/article/austria-europe-glyphosate-war/
・Politico, 2019-6-12 Austria moves to ban glyphosate this year https://www.politico.eu/article/austria-moves-to-ban-glyphosate-this-year/
EUでは、期限を切って禁止に向けて政策を進めているドイツやフランスのような加盟国もあれば、ベルギーのようにグリホサートの個人使用を禁止したり、デンマークのように発芽後の作物への使用を禁止するなどの規制を強化したとしても、いずれの加盟国も全面的な禁止には踏み切っていない。オーストリアがグリホサートを禁止すれば、EU加盟国としては初めてとなる。
一方、米国のラウンドアップ損害賠償訴訟における有害性の認定と高額賠償判決を契機に、ベトナムとマラウィはグリホサートの輸入を禁止した。ベトナムは近いうちに使用禁止に踏み切るという。
ラウンドアップ(グリホサート)の開発メーカーであったモンサントを買収したバイエルは、米国で1万3千件あまりの損害賠償訴訟に直面し、二進も三進も行かない袋小路に追い込まれている。バイエルは6月14日、グリホサートに替わる除草剤の開発に、今後10年間で50億ユーロ(約6千億円)を投資すると発表している。
世界的にはグリホサートの使用禁止や規制強化に動いているのは確かだ。日本政府は、2021年の見直しにあたって優先的に見直し作業を行うとだけ明言している。このところ日本におけるグリホサートの出荷量は増加し続け、食品の残留基準値も緩和される一方だが、はたして見直しが規制強化や禁止につながるのかはなはだ疑問だ。
※随時更新 ・グリホサート関連年表 http://organic-newsclip.info/nouyaku/glyphosate-table.html
【関連記事】 ・ネオニコ系は減少傾向 グリホサートは4%の増加 17年度出荷量 http://organic-newsclip.info/log/2019/19050978-1.html
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