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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年06月21日10時45分掲載
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政治
前川喜平氏講演会「21世紀の平和教育と日本国憲法」<6>地球を守り、多文化共生をめざす人間を育てよう
高等学校の学習指導要領が2022年度から大きく改訂される。今までは世界史が必修であり、日本史が必修ではなかったが、改定後は近現代に焦点を当てて、総合して歴史を学ぶ「歴史総合」という科目ができる。私は、この科目創設はいいと思っている。今までは世界史が必修であったがために、第一次世界大戦を学ぶ頃には3学期が終わってしまい、現代に繋がってこなかった。それを世界史と日本史を一緒にし、18世紀から20世紀の近現代を中心に、世界史と日本史を一緒にして市民革命以後の現代までの歴史を学ぶというものであり、「平和教育」という視点ではうまく活用すれば、よい結果が出るのではないかと思っている。
▽地球市民としてグローバルな公共空間をつくる また、地理総合という教科があるが、これも世界に学ぶという点で、平和の礎となる教科として活用する価値がある。加えて、公共という教科がある。
「公共」という教科を作りたいと言ってきたのは自民党であり、高校版の道徳として作ったものである。彼らがいう「公」とは滅私奉公の「公」であり、個人を否定し、より高い価値としての国家などを想定したものであるが、日本国憲法にはそのような意味を示す「公共」などはない。個人の尊厳の集合体としての公共というものはあるが、個人を超えた価値として公というものがあるわけではないとしている。しかし、「公共」という教科を持ち込もうとした人達は、上から与える公というものを考えており、これが危ない。一方で、本当の意味で市民が作りあげていく公共というように捉えて活用していくのであれば、この教科はすぐれたものになり得る。
例えば、地球市民的な意識を持つという教育としては、国連で定められた「SDGs(Sustainable Development Goals)=持続可能な開発目標」に資する「ESD(Education for Sustainable Development)=持続可能な開発のための教育」というものがある。これは、国境を越えて地球規模で取り組む必要のある事柄に関する教育で、人権、平和、地球環境、食糧、エネルギー、感染症、宗教対立などについて学ぶというものである。本当は、こういうことこそ、道徳の時間でやるべきである。
安倍政権は、グローバル人材の育成を推し進めているが、これは「グローバルな市場経済で勝ち抜くことができる人材」を意味するものである。このような世界中を敵にするような考え方ではなく、力を合わせて地球を守っていくという「グローバル人間形成」というような地球市民として、グローバルな公共空間を作っていけるような人間を育てることが重要である。
▽国内のグローバル化に外国人と力を合わせる 日本国内のグローバル化はどんどん進んでいる。安倍政権は入管法の改正で、外国人労働者に門戸を開くように踏み切ったが、「彼らは労働者であり移民ではない」と言い張っている。しかし、外国人を使い捨ての労働力として受け入れ、いらなくなったら帰ってもらうというような都合のいいことはできない。日本に入ってきて日本で暮らす人たちとは、我々の仲間として、一緒に暮らすということを覚悟しなればならない。
私は、夜間中学に関わっているが、今、夜間中学では1800人くらいの生徒が学んでおり、その7割がニューカマーの外国人である。その外国人の内の4割ほどが中国人で、残りは様々な国の外国人がいるが、一番多いのはネパール人、他にはベトナム人、フィリピン人、インドネシア人、カンボジア人などが学んでいる。夜間中学校については、これまで文部科学省が冷たい対応であったが、私が局長であった頃から変わり、この5年ほどで「全国に夜間中学校を作っていく」という方針に転換をした。
日本に入ってくる外国人が増えていく中で、日本語教育を無償で提供するということは必ずやらなければならないことである。現状は、公立の夜間中学は授業料がないため、そこに外国人が入ってきて、日本語の学習機関として活用しているという側面がある。しかし、本当は日本に入国してくる外国人のために、日本で暮らすために必要な日本語を無償で学ぶ機会を保障していかなければならない。それが移民政策の第一歩となるが、現状はこれを雇用主の責任に転嫁してしまっている。これは国の責任でやるべきである。
また加えて、様々な国から来た人たちが、自分たちの言語・民族・文化を学ぶ機会を保障することが大事である。古くから日本にいる外国人として在日コリアンがおり、在日コリアンが自分たちの文化を学ぶために作った学校として朝鮮学校がある。朝鮮学校に対する安倍政権の対応は「官製ヘイト」だと言っても過言ではなく、迫害や弾圧とも言えるような対応をしている。安倍政権は、このような対応を他の外国人労働者に対しても行っていく可能性が高く、これにより日本の社会を不安定にさせる可能性がある。あちらこちらで、ヘイトクライムやヘイトスピーチが行われ、アメリカの白人至上主義のような日本人至上主義の在特会(在日特権を許さない市民の会)のような団体ができ、外国人との間で様々な対立や摩擦が起こることが予測される。
そうではなく、外国人と一緒に多文化共生社会を作っていくということが我々の社会の中で非常に重要になってくる。つまり、国の外で地球規模の問題に取り組むというESDのような取り組みを行っていく一方で、国の中でも多文化共生社会を作るために努力することが大事になってくる。多文化社会になることは必然であるが、それが多文化“共生”社会になれるかどうか、現在大きな曲がり角に立っている。放っておくと、多文化“分断”社会になってしまう。そういう時に日本の言葉と文化を理解し、自らのルーツとなる言語や文化も理解しているようなバイリンガルでダブル・アイデンティティを持っているような人たちが増えた方がいいと考えている。
すでに様々な外国人が日本に入ってきているが、子や孫の世代になると、もともとの自分たちのルーツである言葉や文化を忘れてしまう場合が非常に多い。これは在日コリアンでも一世と三世の間で起きたことであるが、家族の中で言葉が通じなくなるということが起こっている。一世として、初めに日本に来た人たちは中々日本語がうまくならず、自分たちの母語だけで話すが、その子供や孫になると、自分たちの母語を忘れてしまい、日本語だけで流暢に話すようになる。そのため、兄弟同士では日本語で話しているが、親とのコミュニケーションがとれなくなるというケースが出てくる。
私は、日本語教育だけでなく、母語や自民族文化を学ぶ機会を保障していくということが、ダブルアイデンティを持つ人を増やしていき、これにより文化と文化を繋ぐ人たちが増え、多文化共生社会が安定していくのではないかと感じている。 (つづく)
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