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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年06月26日23時04分掲載
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年金問題でNHKは公共放送としての責任を果たせ Bark at Illusions
金融庁の審議会の報告書で老後2000万円の資産が必要だという試算が行われていたことが発端となり、老後の生活への不安がクローズアップされている。政府は報告書の内容は国民に「誤解」を与えるとか「不適切」だと言って報告書の受け取りを拒否して議論を避けているが、多くの人が年金だけでは暮らせないことは事実だ。来月には参議院選挙も控えており、年金問題は重要な争点の一つになるだろう。NHKが公共放送だというなら、それにふさわしい責任ある放送を求めたい。
NHKもニュースウォッチ9(19/6/11、19/6/12、他)などが繰り返し指摘している通り、政府が報告書の受け取りを拒否したからと言って、私たちの老後の生活への不安が解消されるわけではない。実際、厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、65歳以上の人のうち年金だけで生活している世帯の割合は52%で、半数近くの世帯は「年金だけに頼れない暮らし」を送っている(ニュースウォッチ9、19/6/19)。多く人が年金だけでは生活できないことは事実であり、その対応策が問われている。
しかしその対応策が、安倍政権や審議会あるいは金融機関の思惑通りに、国民の「自助努力」であってはならない。金融庁の報告書は、「人生100年時代」への対応策として国民に資産運用などによる「自助」を求める安倍政権の方針に合わせて、確定拠出年金や少額投資非課税制度(NISA)などによる資産形成を促しているが、確定拠出年金やNISAでの資産運用には元本割れのリスクがある。何千万円もの資産のある富裕層なら少しくらい損を出しても生活にさほど影響はないかもしれないが、資産の少ない人にとってはそうはいかない。第一、高い保険料を何十年間も納めておいて、生活するに十分な年金が受け取れず、後は自分で何とかしろと言うのなら、何のための年金制度なのか。私たちは、過去に年金の積立金が財政投融資の資金として利用され、「経済成長を支えるため」に「社会インフラの整備や大企業の設備投資」に使われたことを知っている(長周19/5/14)。財政投融資のうち、「住宅金融公庫など特殊法人向けに貸し付けられた大部分は不良債権化し、ほぼ全額が焦げ付いているとも見られ、将来にわたって国民に還元されることはない可能性が高い」ことも知っている(同)。 そして現在、安倍政権は、年金積立金の運用を行っているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式運用比率を引き上げて、私たちが納めた金を株価の買い支えのために利用している。株価が上がり続けるならまだいいが、当然、株価が下落して損失を出すリスクもある。「第二の税金」であるかのごとく国民に強制的に保険料を納めさせておきながら、いざ年金を受け取る時になったら、十分な年金を受け取れない、「自助努力だ」というのでは、庶民にとって国家というものの存在意義も問われる。
老後を安心して暮らせる仕組みを作るための具体的な政策として、6月19日に行われた党首討論では、立憲民主党の枝野幸男が「万一の時に医療や介護が受けられる」ようにするために社会保障の自己負担総額に上限を設ける「総合合算制度」の導入を提案し、共産党の志位和夫は高額所得者優遇の保険料のあり方をただすこと(年収約1000万円を上限に保険料が増えない現在の仕組みを、上限約2000万円に引き上げて保険料収入を増やす)や高額所得者の年金給付の伸びを抑制することで毎年約1兆円の収入を確保し、これを財源に、年金給付額を削減する仕組みであるマクロ経済スライドを止めて「減らない年金」にすることを提案している。
しかしニュースウォッチ9(19/6/19)は、「自助努力」で何とか老後生活をやり繰りしようとする3人の男性の事例を紹介して年金だけでは暮らせぬ現状を伝え、キャスターの有馬嘉男が「一生懸命やり繰りしてる皆さんの不安は解消して欲しい」、「どれだけ議論を……深められるのかが問われている」などと述べているにもかかわらず、党首討論を伝える同じ日のニュースの中で、立憲民主党や共産党の上記のような提案は無視するか重要な部分を省略して伝えている。立憲民主党の提案は完全に無視され、志位和夫の発言も共産党の提案については
「マクロ経済スライドを止め、減らない年金にする財源に充てる。これが私達の提案であります」
という部分だけしか伝えられず、視聴者は共産党が何を「財源に充てる」と言っているのかわからない。 NHKニュース7(19/6/19)でも、立憲民主党の提案は無視され、共産党の提案については「高額所得者の年金給付の伸びを抑制する」ことと「毎年約1兆円の保険料収入を増やす」ことは伝えているが、高額所得者優遇の保険料見直しについては省略し、さらにマクロ経済スライド廃止には「7兆円の財源が必要でございます」という安倍晋三の答弁で共産党の提案を「馬鹿げた案」だと否定して、共産党の提案が非現実的なものであるかのような印象を与えている。 この「7兆円」という数字を、安倍晋三は党首討論で根拠を示すことなく持ち出したわけだが、党首討論後に厚労省が志位和夫の求めに応じて提出した資料によれば、
「7兆円はマクロ経済スライドによる基礎年金(国民年金)給付の減額幅を示したもので、2040年時点で本来約25兆円になるはずの給付額は18兆円に抑制されることになっていました。基礎年金給付の実に3分の1がマクロ経済スライドで奪われる計算で、現在でも6万5000円にすぎない基礎年金の満額はさらに約2万円も削り込まれることになります」(赤旗19/6/23)。
つまり、自民党・安倍政権に年金政策を任せておけば、40年間保険料を納めた人でも国民年金(基礎年金)は毎月約4万5000円しかもらえないようになるということだ。
年金の問題は私たちの生活に直結する問題であり、世論調査でも社会保障政策は常に関心の高いテーマのひとつだ。年金問題に限った話ではないけれども、参議院選挙を前に、NHKには各党の政策をしっかり伝え、公共放送として公正で責任ある放送を求めたい。
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