評論誌「現代」(※)について僕ら編集委員が全員の署名入りで書いた文章が今日(※)、リベラシオン紙に掲載された。編集長だったクロード・ランズマン(※)が亡くなって1周忌なのだ。
ところで、僕には理解できない理由で、仲間の編集委員たちが、僕とジュリエット・シモンが書いた第一稿の中に出てくるクロード(ランズマン)が語った言葉を削って欲しいと要求してきた。それでやむなく、僕らはその言葉を削ったんだ、というのも僕らは人がいいからだ。
でも、クロードのその言葉は僕には嬉しいものだったんだ。というのもそれは「不愉快を与える」言葉だったから。僕は「現代」をめぐって起きた事態に対して不愉快を感じたから、ここで不愉快を与えないのはうんざりだ。その言葉をここでシェアしよう。
僕ら編集委員があまりにも露骨なイスラエル寄りの寄稿を受け取った時、ランズマンはそれらの文章を嫌悪感をもって遠ざけ、こう言ったものだ。
「そうじゃないんだ!『現代』はリクード党(※)の報告書じゃないぞ」
だが、僕の左翼のかなりの友人たちは「現代」は実際にリクード党の報告書だと思っている気がする。だから、「現代」が消えるのはいいことだ、と思っているのだ。彼らはこの点で、ガリマール社の相続人で社長のアントワーヌ・ガリマール氏(彼は左翼ではない)と考えが一致している。もちろん、仲間たちもガリマール社の後継ぎも「現代」を決して読んでいなかったのは確かだ。
それなのに、彼らは「現代」を投げ出した。彼らは「現代」についてもうわかっていると信じている。だからその先入観だけで判断しているのだ。僕には明らかにこの評論誌を救う力がない。だが、どちらも間違っていると言うことはできる。さらに、もっと言えばひどく間違っている。文字通り、ひどいものだ。
※評論誌「現代」(Les Temps Modernes) 1945年にサルトルとボーヴォワールが創刊。哲学者や文人が参加したが、象牙の塔にこもらず、世界で起きているアクチュアルな現実に対して考察した。2018年に編集長だったクロード・ランズマンが亡くなったため、これまでの出版の形としてはその歴史に幕を閉じることになった。
※クロード・ランズマン(1925-2018). 昨年7月、パリで没した。フランスのジャーナリストで、映画監督としては大作「ショア」などホロコーストの生存者たちにインタビューした記録映画を作った。サルトルらが創刊した評論誌「現代」の編集長を長年つとめてきた。
※リクード党 イスラエルの右派政党。ネタニヤフ首相が所属している現在の与党。
パトリス・マニグリエ (哲学者) Patrice Maniglier
翻訳 村上良太
■「レ・タン・モデルヌ誌」(Les Temps Modernes) サルトル、ボ―ヴォワール、メルロー・ポンティらが創刊 今も時代のテーマを取り上げる パトリス・マニグリエ(Patrice Maniglier パリ大学准教授・哲学者)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201606241454415
■「黄色いベスト」による革命の可能性 パトリス・マニグリエ(哲学者)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201903080354155
■パリの「立ち上がる夜」 フランス現代哲学と政治の関係を参加しているパリ大学准教授(哲学)に聞く Patrice Maniglier
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201605292331240
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