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2019年08月10日21時46分掲載
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文化
「あいちトリエンナーレ」少女像の展示中止 「表現の自由は戦いとったものだ」 根本行雄
名古屋市などで開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、従軍慰安婦を題材とする韓国人作家の「平和の少女像」が出品され、同市の河村たかし市長が撤去を要請していた問題で、主催する実行委員会会長の大村秀章・愛知県知事は8月3日記者会見し、像を展示していた「表現の不自由展・その後」コーナーを同日限りで打ち切ると発表した。多数の抗議を受け関係者や観客の安全を考慮したといい、同コーナーは8月1日の開幕から3日間で中止に追い込まれた。今回の問題における、河村名古屋市長や菅義偉官房長官の対応は、政治家としての見識の低さを示しているとともに、日本国憲法を理解していないことを露呈している。
「あいちトリエンナーレ」は、愛知県などが2010年から3年に3度開いている国内最大規模の国際芸術祭であり、4回目となった今回は30の国と地域から90組余りのアーティストが参加しているという。
芸術祭は津田大介氏が芸術監督を務め、名古屋市などを会場に、事業費12億円のうち愛知県が約6億、名古屋市が約2億円を負担し、民間企業の協賛金も見込んでいる。「表現の不自由展・その後」には420万円が充てられたという。
今回の、あいちトリエンナーレ における展示中止問題について、毎日新聞の記事を利用して、その経緯を明らかにしておこう。
芸術祭は文化庁から補助金約7800万円の交付が採択されている。交付は今年度末になる見込みだが、菅義偉官房長官が2日、「交付決定にあたっては事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と慎重な姿勢を示した。政府の対応に対しては、大村知事は「交付されるまで手続きを粛々と進める」と話した。
8月1日、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」が開幕された。「表現の不自由」をテーマに慰安婦問題を象徴する少女像などが展示されている。
事務局の愛知県によると、この慰安婦問題を象徴する少女像の展示をめぐって、8月1日の夕方までに撤去を求めるなど批判的な電話およそ200件、メールが500件寄せられ、8月2日も、これまでにほぼ同数の電話やメールが殺到しているという。
像の展示について、県には2日までに計約1400件の抗議の電話やメールが寄せられている。脅迫的な内容のものも多く、8月2日の朝には「ガソリン携行缶を持って行く」などと京都アニメーションの放火殺人事件をほうふつとさせるファクスも届いたという。実行委は県警などにも相談したが、差出人は不明だという。
8月2日、芸術祭の実行委員会の会長代行を務める名古屋市の河村市長は名古屋市東区にある芸術祭の会場を訪れ、担当者から説明を受けながら少女像などを視察した。このあと河村市長は記者団に対し、「どう考えても日本国民の心を踏みにじるものだ。税金を使ってやるべきものではない」と述べ、像の撤去を要求した。
これを受けて、菅義偉官房長官は文化庁の補助金約7800万円の交付について「決定にあたっては事実関係を確認して適切に対応したい」との姿勢を示した。
河村名古屋市長は、慰安婦問題は「事実でないという説も強い」として撤去を求める抗議文を大村愛知県知事に送っていた。大村知事は、河村市長の抗議文に関しては「何を言うのも言論の自由で、特にコメントすることはない」とした上で、「行政機関が展示内容に口出しをしては芸術祭にならない」などと持論を展開したという。
8月2日の夕方、芸術監督を務める津田大介さんが会見を開き、「行政が展覧会の内容について隅から隅まで口を出し、表現を認める認めないを決めようとするのは、憲法21条の『検閲』に当たる。多くの人が不快になる表現があることは分かっているが、これらの作品が公の美術館から撤去されてきたという事実が議論になればいいと思っている」と述べた。
8月3日、主催する実行委員会会長の大村秀章・愛知県知事は記者会見をし、像を展示していた「表現の不自由展・その後」コーナーを同日限りで打ち切ると発表した。多数の抗議を受け関係者や観客の安全を考慮したといい、同コーナーは開幕から3日間で中止に追い込まれた。
8月3日、津田大介さんは記者会見を開き、「抗議する側に文化事業をつぶす成功体験をさせてしまった。自分の責任で表現の自由を後退させる事例を作り、断腸の思いだ」と語った。 津田氏によると、抗議の電話は実行委だけではなく、県庁や県内の別の公立美術館、協賛企業にまで広がったという。「電話が鳴りやまない事務局の様子を見て、予想を超えたリスクだと感じた」と述べたという。
8月3日、「平和の少女像」などの展示中止が決まったことに関連し、日本ペンクラブ(吉岡忍会長)が声明を発表した。河村たかし名古屋市長が「(展示の)即刻中止」を求めたことや、菅義偉官房長官が同展への補助金交付の是非について検討する考えを示したことを「政治的圧力そのもので、憲法21条2項が禁じている『検閲』にもつながる」などと批判した。 また、ホームページでは、「制作者が自由に創作し、受け手もまた自由に鑑賞する。同感であれ、反発であれ、創作と鑑賞のあいだに意思を疎通し合う空間がなければ、芸術の意義は失われ社会の推進力たる自由の気風も萎縮させてしまう」という声明を発表している。
8月3日、展示中止となった「表現の不自由展・その後」の実行委員会は、芸術祭の実行委に対し「主催者自らが弾圧する歴史的暴挙。戦後日本最大の検閲事件となる」との抗議声明を出した。声明では「開始からわずか3日での中止は到底信じられない。決定は一方的に通告されたもので、法的対抗手段も検討している」という。
8月4日、「あいちトリエンナーレ2019」で、従軍慰安婦を題材とする「平和の少女像」の展示中止が決まったことを受け、新聞労連や民放労連などでつくる「日本マスコミ文化情報労組会議」(MIC)は、声明を発表した。少女像の撤去を要請していた河村たかし・名古屋市長に対し、「行政が展覧会の内容に口を出し、意に沿わない表現を排除することになれば、事実上の『検閲』にあたる」と批判し、発言の撤回を求めた。
8月5日、大村秀章愛知県知事と、河村たかし名古屋市長は、「表現の自由」を巡って互いを非難し合った。 河村市長は記者会見で、慰安婦問題について「日本が強制連行した証拠はない」と述べ、「税金を使った展示で『名古屋市と愛知県が従軍慰安婦はあったと認めた』と見られてしまう」と改めて企画に異議を唱えた。その上で「表現の自由には一定の制約がある」とし、「展示までのプロセスを公開すべきだ」と県などに求めた。 一方、大村知事は会見で、河村市長の一連の行動を「検閲ととられても仕方がない。公権力が出品作品を『これは良い、これは悪い』と決めるのは許されない」と指弾。表現の自由に関する市長発言も「憲法21条に違反している疑いが非常に濃厚」と批判した。 以後、さまざまの団体から同様の声明や申し入れが相次いだ。
8月6日、企画展「表現の不自由展・その後」が中止された問題で、同展の出品作家を含む芸術祭の参加アーティスト約70人が、連名で政治的介入と暴力、脅迫に抗議する声明を発表した。 声明は芸術祭の目的を「個々の意見や立場の違いを尊重し、すべての人びとに開かれた議論を実現するため」と位置付け、一部であれ展示が中止されれば作品を見る機会が奪われ、作品を理解、読解するための議論が閉ざされてしまうと指摘。一部政治家の介入やテロ予告などの脅迫を批判し「芸術祭の回復と継続」を求めたものだという。
まず最初に、銘記しておかなければならないことは、表現の自由という基本的人権は平和的に友好的に贈られたものではないということだ。近代憲法に明記されている基本的人権も、また、人類の流血の歴史を通して獲得されたものである。戦い取られたものであるということである。
芸術作品もまた、政治的な評価を受けずにすまないものである。しかし、政治家ならば、近代憲法を理解していることは当然のことであり、基本的人権について、表現の自由について理解しておくことは必要不可欠のことであるだろう。
河村たかし市長は記者会見で、慰安婦問題について「日本が強制連行した証拠はない」と述べたという。こういう誤った歴史認識の所有者が公職についているのは名古屋市民の恥である。そのうえ、日韓関係が悪化している現状を踏まえて展示の中止を求めるに至っては、明らかな「検閲」行為であり、表現の自由の侵害であり、憲法を理解し、順守することを忘れているものだと言わざるをえない。彼のした行為は、名古屋市長でありながら、「ガソリン携行缶を持って行く」などと脅迫している反社会的勢力に加担するものである。しかも、今回の中止の決定により、反社会的勢力の行動を容認することになってしまったのである。その責任は重い。
菅義偉官房長官の発言もまた、政治家としての見識の低さと、憲法を理解し順守していない安倍政権の本性を暴露しているものだ。
「あいちトリエンナーレ」にかかわる人々の安全を確保することは必要だが、中止という判断は、危ないからナイフを使わせないという発想と同質のものである。私たちは、「ガソリン携行缶を持って行く」などと脅迫している反社会的勢力と断固として闘う必要がある。このような脅迫行為を容認することは、脅迫や暴力やヘイト行動を容認することになり、それはますます増長させることになり、社会にはびこっていくことになる。カビと同じように、初期の段階で、しっかりと除去しておくことがカビ対策の基本である。
表現の自由はプレゼントされたものではない。戦い取られたものである。わたしたちは近代憲法を理解し、基本的人権について、表現の自由について理解し、戦い取っていく行動をしなければならない。安倍政権という、憲法を理解せず、順守する義務を守らず、議会を軽視している政権が議会の過半数を占めているのが、日本の現状であり、私たちはそういう時代を生きているのである。
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