小泉進次郎自民党衆院議員が、フリーアナウンサー滝川クリステルとの結婚を安倍首相と菅官房長官に報告し、その後の記者会見でそのことを発表した。滝川は懐妊しているという。この発表前後の進次郎報道で私の目にとまったものが二つある。
《山本太郎と藤井聡は小泉進次郎を批判》
一つは、れいわ新選組山本太郎の進次郎観である。BS−TBSの「報道1930」(2019年8月5日)で司会の松原耕二は、ゲストの山本太郎に対して「小泉進次郎と組んだらどうか」と質問をした。野党共闘を誰と組むかという質問の最後に聞いた。面白いところを衝いたつもりらしい。山本太郎はすかさず、「どうなんですかね?(小泉進次郎は)CSISと深いつながりがあるんではないですかね?」と返答した。そして、8月8日朝のニュースで、山本太郎は進次郎の首相官邸での結婚発表を「政治的利用を感じる」とコメントした。
二つは、藤井聡の厳しい進次郎批判である。京都大学大学院教授の藤井聡は、文化放送の報道番組(8月8日朝)で、政治家小泉進次郎を全否定する発言をした。藤井は、2012年から18年まで安倍内閣官房参与だった。政治家としての進次郎をよく知っている。そして新次郎は新自由主義の信奉者であり、農協解体などの「構造改革」を進めて日本農業を破壊していると言った。「バカ」であると呼んで藤井は政治家小泉を酷評した。
《太郎と進次郎の政権獲得闘争へ》
自民党は遂に切り札小泉進次郎を担ぎ出した。これは私の個人的な見立てである。 その背景には、安倍政治の八方塞がりがあり、れいわ新選組の躍進がある。ポピュリズム政治の時勢にあって自民党は、連立公明党や自党の石破茂、岸田文雄では勝てないと思ったのである。野党も山本太郎を軸にした共同戦線を張らなければ、進次郎ブームに圧倒されるだろう。
小泉進次郎とは何者なのか。管見の限り、政治ジャーナリストが小泉進次郎の政治理念、イデオロギー、政策とその実績を精査し報道したものを見たことがない。私が見るのは、は女性フアンに囲まれてキヤッチコピーを発しているテレビ画面の小泉進次郎である。
《誰も小泉進次郎の顔しか知らない》
小泉進次郎は自らの公式サイトで学歴・職歴を次のように書いている。 ・1988年 4月 関東学院六浦小学校入学、 以来中学・高校・大学と関東学院で過ごす ・2004年 3月 関東学院大学経済学部卒業 ・2006年 5月 米国コロンビア大学大学院で政治学部修士号取得 ・2006年 6月 米国「戦略国際問題研究所」(CSIS)研究員に ・2007年 9月 衆議院議員小泉純一郎秘書 ・2008年 10月 自由民主党神奈川県第11選挙区支部長 ・2009年 8月 衆議院議員 ・2011年 10月 自民党青年局長 ・2013年 9月 内閣府大臣政務官・復興大臣政務官 ・2015年 10月 自民党農林部会長 ・2017年 8月 自民党筆頭副幹事長 ・2018年 10月 自民党厚生労働部会長
ウィキペディアによれば、小泉進次郎はコロンビア大学ではジェラルド・カーティスに学び、シンクタンクCSISではマイケル・グリーンの下で研究をした。いずれも「ジャパン・ハンドラー」の代表的な人物である。ジヤパン・ハンドラーとは、日本の対米隷従システムの舵をとる米国側の日本専門家である。
《核心が見えにくい小泉進次郎の発言》
小泉のイデオロギーや実績を追跡したメディアは少ない。ネット配信「朝日RONZA」には、小泉インタビューがいくつか載っている。高齢化時代、人生100年時代の社会保障に関する発言が多い。現在の自民党厚生労働部会長という立場から当然である。 給付の削減か積み立ての増加か、という二者択一の問題設定に批判的であり、一見柔軟性に富む発言に見える。しかし選択肢の増加=生き方の選択肢への問題転化にもつながる。「企業の論理」を貫徹するために「生き方の選択肢」が増えるワナを警戒しなければならない。また進次郎の発言には、民主主義や平和外交の言葉が出てこない。出てくる「日米同盟の強化」や「国際社会への貢献」という言葉の現実は、自衛隊の海外派兵や米軍産体制に奉仕する政策に帰結しつつある。これが安倍長期政権の「成果」である。私は、小泉の新自由主義は巧妙に隠されているという印象をもつ。
小泉は2019年5月3日にCSISで講演をした。その全文と概要は小泉進次郎公式サイトからアクセス可能である。読者はそれを読んで拙稿の当否を判断して欲しい。今回は引用を控えたが、ジャパン・ハンドラーからの連想で小泉進次郎が日米支配層の情宣代理人であるとみるサイトが多い。
《徹底的に小泉進次郎の正体を報道せよ》
日本の政治ジャーナリズムに、小泉進次郎のコロンビア大学院修士論文やCSISでの研究論文を、日本で報道されていない発言を、徹底的に分析し報道してもらいたい。そして本人にその意図と本音を聞いてもらいたい。そのうえで自分の頭で考えた忖度なしの小泉進次郎論を展開してもらいたい。政治報道は芸人報道より重要である。国民の命につながるからである。(2019/08/08)
半澤健市(はんざわけんいち):元金融機関勤務
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
ちきゅう座から転載
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