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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年09月02日10時18分掲載
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文化
「あいち事件」への違和感・II 問題「展」が伴う検閲の既視感 松本武顕
“事件”発生からひと月。展覧会主催者、左右を問わぬ外からの「表現の自由」への物言い、「再開」要求、…様々な声が響き、止まない。
事件の予兆は開会初日に報じられた芸術監督のツイッターに既にあったはずが、主催側と当該展実行委員会に事態への問題認識と危機意識、当事者感、或いは、当事者意識に基づいた怒り、憤りの表出は、希薄。事件をどう理解し、対応するのか、再開への提案、方針も明示されぬまま今に至る不可思議。もしや、問題「展」自体を「表現の不自由」“事件”につながる作品の「見世物小屋」にしただけだったのでは、とさえ見えてしまう。
開会当初から“事件”は「検閲事件」展なのだ―─作品の多くは以前の展示の場で、既に「表現の不自由」を強いられている。それも表現への臆面と忖度が行き交う公的な場でだ。 言い換えれば、公による“検閲 (censorship)”の屈辱を経ているのだ。主催者と実行委にこの前提(認識)があったか、見えない。
<事件の露出するもの> 主催者側は、展示の閉鎖を検閲とは認めないようだ。が、事件へのプロセスは―: 直前の「大量の抗議」=電話・メイル・ファックス、「ガソリン缶持参」の脅迫などを受けて、会場・鑑賞者の安全確保への不安を理由に閉鎖宣言。 すかさず起きた名古屋→大阪各市長⇒政権官房長官→神奈川県知事など、政治に連なる圧力の輪唱。その怒声を交えた歌唱をたどると、「平和の少女像」を「慰安婦」へ恣意的誤訳、昭和天皇を配した作品にヒロヒトの戦争責任を深読み。イチャモンに等しい罵倒を「国民感情」の発露と強弁。そこに、カネも口も出すスポンサーたちの歴史事実の否定・歪曲の声。直ちに、数オクターブ高まった裏声でナショナリズムへ転調、そのままドサクサ狂騒曲へ収斂、といったところだろう。
事件の誘因は、過去の歴史に封じ込めた古傷(「徴用工」)の疼きに耐えかねた政権の対韓措置=ホワイト国リストからの除外だったと言えよう。そして今、目前にあるのは、表現に「合法的検閲」の枷を嵌めようとする政権の強い意思である。
<展示再開は何故、必要?> 閉鎖への引き金は、前述2作品への保守エレメントによる短絡的反応、ヒステリックな罵声。続く「語るに落ちた」というべき、脛にキズ持つ身がひとり合点で己が罪をフラシュバック、取繕うすべもなく、脅しにかかった怒声と八つ当たりが面前の体たらく、と言えよう。そこには表現者と作品に向かい会う姿勢も感応への意思もない。独断で暴発したヒステリー、その結果が、「閉鎖」なのだ。
閉鎖の継続は、表現者と作品に対する声高で攻撃的な言辞と脅迫など、横暴の受容にほかならない。その先は、政権の意向を伺う忖度の蔓延、表現の自己規制。やがては、言論・表現の自由をはじめとする基本的人権とこれに関わるあらゆる自由への暴力の黙認、不感症を見ることに…。こうした危機感に基づく、表現への横暴と暴力の否定決意表明として、現状を問う公開討論、これを経ての同展再開を求める。
再確認として、権力への異議を明快にした表現が保障されないところに「表現の自由」だけがポカっと存在するわけがない。公の言う「中立」「公平」が保障する自由ではなく、表現主体の主張し得る自由こそ今、保障されなければならない。 加えて、閉鎖につながる作品攻撃の拠り所とされた先の侵略戦争に関わる事実の恣意的誤読と強弁を歴史修正主義の表出と危ぶみ、特にその歴史的総括と教育への早期反映を緊急課題として共有、提起すべき時との確認も必要だ。
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