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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年12月07日20時27分掲載
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GSOMIAの維持決定で東アジアの平和と安定は遠のいた Bark at Illusions
日本政府に対して破棄を通告していた日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、韓国政府は、「いつでも効力を終了できる」という条件付きながら、協定失効直前になって「終了通告の効力」を「停止」すると発表した。日本政府やマスメディアからは安堵の声が聞かれるが、東アジアの平和と安定を考えるなら、今回の韓国政府の決定でその実現は遠のいたと言わねばならない。
マスメディアは、東アジアの安全保障環境を理由に日米韓の軍事的な連携の重要性を主張する日本政府や米国政府の見解が正しいという前提でニュースを伝えている。韓国政府のGSOMIA終了通告は、
「安全保障環境を完全に見誤った対応」(茂木敏充外務大臣、11月12の会見など)
だとか、
「日米韓の足並みの乱れは北朝鮮だけではなく中国、ロシアも利する」(茂木敏充外務大臣、11月12日のマーク・ミリー統合参謀本部議長との会談)、
「北朝鮮への対応のために日韓、日米韓の連携、協力は極めて重要だ」(安倍晋三、11月22日、韓国政府のGSOMIA終了通告の効力の「停止」を受けて)
という日本政府の見解や、
「GSOMIAの失効や日韓の対立で恩恵を受けるのは北朝鮮と中国だけだ」(マーク・エスパー国防長官、11月15日の韓国チョン・ギョンドゥ国防相との会談後の共同記者会見)、
「日米韓3カ国は北朝鮮・中国・ロシアという脅威に対抗するため結束しなければならない」(ジム・リッシュ外交委員長、11月21日の声明)
などという米国議会や政府の主張を無批判に伝え、日韓のGSOMIAが終了すれば、ミサイル実験を繰り返す朝鮮や、軍拡を続ける中国とロシアを利することになると主張して、日米韓の軍事的な連携の重要性をPRしている。
しかしこうした見方は、東アジアでの米国の軍事的・経済的覇権を維持したい勢力の立場から見た一方的な見解だ。実際には、世界の他の地域と同じように、米軍の存在や米軍を中心とする軍事的な同盟・連携が、東アジアの緊張を高めている。 既に日刊ベリタ(19/9/6)で述べたことの繰り返しになるが、朝鮮半島の平和と非核化を実現するには、米国政府が朝鮮に対する敵視政策を止める必要がある。朝鮮政府は安全の保証がなければ、米国に対する抑止力として開発した核兵器を放棄することができない。今年に入って朝鮮が繰り返し行っているミサイル実験は、今年8月に行われた米韓合同軍事演習やステルス戦闘機F35 Aの納入を続ける韓国軍などへの反発という側面や、米国との交渉で譲歩を得るための圧力という思惑も考えられるが、より実質的には軍事力向上を図る米韓に対応するための安全保障上の措置という側面もある。朝鮮だけがミサイル実験を行って東アジアの緊張を高めているという事はできない。プンゲリにあった核実験場を廃棄して昨年6月のシンガポールでの米朝首脳会談に臨み、その後ミサイル施設の一部解体や米兵の遺骨返還などを行ってシンガポールでの合意の履行に努めてきた朝鮮政府は、更なる非核化の条件として米国が朝鮮に対する敵視政策を止めることを求めている。防衛大臣の河野太郎はGOSMIAの失効が回避されたことを受けて、「誤ったメッセージを発することなく……日米韓3カ国が連携して厳しい安全保障状況に当たっていく」と述べているが、GSOMIAの維持は、今後も米国政府は敵視政策を続けるという「メッセージ」として朝鮮政府に受け止められ、朝鮮半島の平和と非核化の実現が遠ざかるのとになるのではないか。 また中国の軍拡の背景には、自国を取り囲むように存在する400以上の米軍基地や米国政府による砲艦外交がある。沖縄県名護市辺野古で建設が進められている米軍の新基地や、自衛隊の南西諸島での基地建設も、中国を刺激し、中国の軍拡の一因になっている。 ロシアは、日韓の迎撃ミサイルシステム、特に日本のイージス・アショアの配備計画を、「ロシアを標的」とする「中距離ミサイルの発射に使用できる攻撃システム」と受け止めている(スプートニク日本19/7/24)。今年7月にロシアと中国が日本海で共同警戒監視活動を行ったが、それは「日韓米軍事面での相互関係の強化に対する露中の回答」(同)と捉えることができる。日米韓の連携が強まれば、中国やロシアは対応措置を迫られ、更なる軍拡や中ロの軍事的連携強化が図られることになるだろう。
日韓のGSOMIA維持は、朝鮮や中国、ロシアを軍事力でねじ伏せ、米国の覇権を維持したいと考えている人にとっては必要なことかもしれないが、東アジアの平和と安定を考えるなら、韓国政府の今回の決定は誤った決断だったと言わねばなるまい。
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