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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2020年01月11日13時27分掲載
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文化
[核を詠う](290)「朝日歌壇」(2019年1〜12月)から原子力詠を読む(3)「原発がなければ仕事がないというそういう土地に原発はある」 山崎芳彦
2019年1月〜12月の「朝日歌壇」入選作品から、筆者が原子力詠として読んだ作品を記録してきたが、10月〜12月までの今回で終る。
◇10月◇ 汚染水と呼ばれし水の悲しみを溜めて千基のタンク黙せり (馬場あき子選 福島市・美原凍子)
六袋のフレコンバッグ積載し十トントラック今日も列成す (馬場選 茂原市・植田辰年)
浪江駅下り十一本の時刻表免許返納の時期を探れり (佐佐木幸綱選 いわき市・伊藤行和)
請戸(うけど)地区尾花繁りて雉子(きぎす)啼(な)く妻恋ふやうに人待つやうに (高野公彦選 朝霞市・青垣 進)
「汚染水」「処理水」同じフクシマの水の呼び名が立場で変わる (佐佐木・高野・永田和宏共選 観音寺市・篠原俊則)
線量計首から提げて案内(あない)さる浪江の更地「ここにわが家」と (永田選 朝霞市・青垣 進)
避難九年人影のなきわが家に赤きサルスベリの花咲き盛る (永田選 国立市・半杭螢子)
コンビニの灯りの向こうにくろぐろと廃炉に決まりし原発十基 (馬場選 茂原市・植田辰年)
核を持つ国のトップが他の国の核を禁じる あなたはゼウス? (高野選 五所川原市・戸沢大二郎)
汚染水のゆくえを問えば地の神の怒りのごとく曼珠沙華炎(も)ゆ (高野選 福島市・美原凍子)
生きるとは語り継ぐごとビルマにて戦死せる兄被爆死の姉 (馬場選 西海市・原田 覚)
何十年草花咲かせてきた土よ除染土となりて何処へ行くのか (佐佐木選 須賀川市・山本真喜子)
原発がなければ仕事がないというそういう土地に原発はある (永田・高野共選 観音寺市・篠原俊則)
幸いなことに死人は喋らないみんな助役のせいにしておく (永田選 宝塚市・岸田万彩)
毒茸のやうにによつきり高浜の原発二基は黙(もだ)深く建つ (馬場選 前橋市・荻原葉月)
ニッポンはオール電化の国となりオイルとウランにどっぷり浸る (馬場選 東京都・野上 卓)
「想定外」あれから便利に使われて責任という背骨失せたり (高野選 小山市・木原幸江)
◇11月◇ 汚染土積む四噸(トン)トラック一〇台が颱風禍に出て路肩に避難 (馬場選 福島市・澤 正宏)
貉(むじな)には何の恨みも無いけれど何か似ている関電幹部 (永田選 川崎市・小島 敦)
生活ヲタノム町アリ不夜城ノツヅク都会アリタカハマ愛(イト)シ (高野選 福井市・西田百合子)
◇12月◇ 大熊の町長選の候補者がいわき市内を連呼して走る (高野選 いわき市・守岡和之)
外交の交渉できる防衛と交渉相手いない防災 (永田選 福島県伊達市・佐藤 茂)
連なりてダンプが進むふるさとのひろき耕土の汚染土怖し (佐佐木選 二本松市・開発廣和)
原発事故、地震、水害に喘(あえ)ぎつつ民がささえる「桜を見る会」 (高野選 嘉麻市・野見山弘子)
首相よりまず被爆者と被災者の手を取るローマ教皇の手よ (高野・永田・馬場共選 観音寺市・篠原俊則)
きっぱりと核廃絶を求めつつハグしてキスして笑顔の教皇 (永田選 三鷹市・山縣駿介)
はろばろと被爆地に来て教皇が核は要らぬと世界に宣す (馬場・佐佐木共選 三原市・岡田独甫)
爆心地教皇立ちて祈りけり被爆の少年立ちしこの地に (馬場選 弘前市・今井則三)
教皇のミサの中継見届けて繙(ひもと)く歌集『とこしへの川』 (佐佐木選 福岡市・下村靖彦)
教皇のズケットの先の闇深し原爆ドームは秋雨に洗われている (佐佐木選 藤沢市・松山 裕)
「無関心こそ最大の悪である」との言葉を残しローマ教皇去る (永田選 埼玉県・島村久夫)
五万人集ふドームに万歳の声なくミサの曲は流れる (永田選 加賀市・敷田千枝子)
教皇の帰国を待っていた様に女川2号再稼働へと (馬場・高野共選 川崎市・小島 敦)
大雨のたびに建屋の水位増し汚染水タンク立錐の地に (馬場選 茂原市・植田辰年)
フクシマを忘れないでと願うのももう忘れてと願うも本音 (佐佐木選 福島市・稲村忠衛)
汚染土を積んだトラック列をなし黙々と行く仮置場へと (佐佐木選 須賀川市・山本真喜子)
どう見ても我の視線を意識してしかも平気で庭ゆく狸 (永田選 いわき市・馬目弘平)
次回からも原子力詠を読み続けたい。 (つづく)
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