イヨネスコの舞台を長年やっているパリのユシェット座で今上演されているのが女優マリーナ・トメ(Marina Tome )さんのオリジナル戯曲「白昼の月」(La lune en plein jour) 。トメさんはパリ在住ですが、出身はアルゼンチンで母語はスペイン語。この舞台はそんな彼女の人生を描いたものです。マリーナ・トメさんの姿を初めて筆者が見たのはセドリック・クラピッシュ監督の「猫が行方不明」("CHACUN CHERCHE SON CHAT"1996)というユニークな映画でした。個性的な存在の女優として、当時から目を引く存在でしたが、今、まさに輝いている時でしょう。舞台は一人芝居。以下はその短い紹介映像(Vimeo)です。
https://vimeo.com/215906762?fbclid=IwAR0YVLsPN1-ym9DhJvaipGn-rwgt8EyrpFSM29sfjElEMiKMIALcRf8wowo アルゼンチンから軍事独裁政権を逃れて命からがらパリに渡ってきた彼女の家族、そしてパリでも監視下に生きているアルゼンチンからの亡命者たち。しかも、彼女の場合はアルゼンチンにいた家族は、かつてポグロムというユダヤ人狩りが行われたポーランドを逃れてきたという苦難の歴史を持ちます。そんな中、彼女は二つの言語と二つの国のはざまに揺れながら、異郷パリの地でやがては舞台に、映画に、表現に生きる道をつかみ取ります。
様々なプロジェクトに取り組みつつも、その合間を縫って女優が自分自身の人生を見つめたドラマです。1月から4月6日までユシェット座(la Huchette)で上演。理不尽な政治や排外主義に翻弄される市民、という意味で、この物語はすでに日本人にとっても遠い物語とは言えないでしょう。演出はトメさんの盟友のアヌーシュ・セットボン(Anouche Setbon)さんによります。
マリーナ・トメさんと言えば、日刊ベリタを読んでいただいている方にはご存知の方もおられるかもしれませんが、パリで市民運動家としても知られている女優です。50歳から65歳までの女優が不当に映画や舞台で干されていることを指摘し、俳優の組合(AAFA)の仲間たちと“Tunnel des 50”(50歳のトンネル)の改善を呼びかける運動をしています。実際には社会でその年代の女性たちはばりばり活躍しているにも関わらず舞台や映画では不当に出番が少ない、として社会学者らも交えながら抗議の声を上げたのです。以下は、3年前の記事。
■50歳以上の女優にもっと出演の機会を!俳優たちが自ら立ち上がる 「50歳の女優のトンネル」委員会リーダーのマリーナ・トメ氏に聞く Intreview : Marina Tome (l’AAFA-Tunnel de la comedienne de 50 ans)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201701190456304
演出のアヌーシュ・セットボンさんもトメさんと同じ運動に参加しています。真の成熟社会を育てるためには必要な運動だと思います。
※ユシェット座のウェブサイト
http://www.theatre-huchette.com/
村上良太
■仏「50歳の女優のトンネル」(l’AAFA-Tunnel de la comedienne de 50 ans)が家族・児童・女性の権利担当大臣主催の男女平等推進コンテストに参加 インターネット投票部門で最高賞
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201703102254115
■50歳以上の女優にもっと出演の機会を!俳優たちが自ら立ち上がる 「50歳の女優のトンネル」 ルモンド紙でも報じられる 署名活動中
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201805130936260
■パリで演技と歌に打ち込むジージ・ルドロンさんに聞く Interview : Gigi Ledron ( actress )
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201709250254331
■仏映画「河で眠る人」俳優パスカル・トゥルモさんにインタビュー Interview : Pascal Turmo / acteur " Dormeuse Duval "
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201704071928035
■探偵ドラマから恋愛ドラマまで インタビュー エリザベート・ブールジーヌ(女優)Interview : Elizabeth Bourgine ( actress )
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201705031527013
■パレスチナの占領下を生きるための演劇 俳優、ムハンマド・ティティ さんに聞く Mohammed Titi (actor , "Yes Theatre " in Hebron) "Theater changed a lot of my personality, I became more optimistic."
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201702082210023 ■ベートーヴェンの交響曲第七番をルンバで演奏したピアニスト、ヨアキム・ホースレイ氏にインタビュー 「ハバナのベートーヴェン」はどうやって生まれたのか? Interview : Joachim Horsley ,who plays "Beethoven in Havana "
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201701211135406 ■音楽にかける青春 バイオリン奏者 ルドミラ・パヴロヴァー Ludmila Pavlova 人は演奏している音楽とともに生きていかなくてはならないことを知りました "During my music carrier I mainly found out that you have to live with the music you are playing"
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508200021584
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