日本の政治がついに底をつくのは間近ではないか。そんな予感すらする2020年、安倍首相は国会で日本共産党が<暴力革命>の方針を持っている組織だと話しました。赤旗はそのやりとりを、より細かく報じています。日本維新の会の議員の質問に対する回答、という形での発言だったのです。
「日本共産党の志位和夫委員長は13日、国会内で記者会見し、同日の衆院本会議で、日本維新の会の議員が、「共産党が破壊活動防止法の調査対象となっている理由の説明を」「共産党を含む野党連合政権が樹立されれば、かつての民主党政権よりもさらにひどい悪夢が再来する」などと質問したのに対し、安倍晋三首相が「日本共産党は昭和26年から28年ごろにかけて団体の活動として暴力主義的破壊活動を行った疑いがある」「現在においてもいわゆる敵の出方論にたった暴力革命の方針に変更はないものと認識しており、破壊活動防止法に基づく調査の対象になっている」などと答弁したことについて次のように表明しました。」(赤旗)
日本共産党の新聞「赤旗」はさらに、日本共産党が暴力革命を目指している、というのはまったくの誤りだ、と続けています。<67年間、不当な調査を行いながら、「破壊活動の証拠」は何一つなし>としています。
「安倍首相は、わが党がかつて「暴力主義的破壊活動を行った疑いがある」と答弁しました。1950年代に、当時のソ連、中国による干渉が行われ党中央委員会が解体・分裂した時代、分裂した一方の側に誤った方針・行動がありましたが、これは党が統一を回復したさい明確に批判され、きっぱり否定された問題です。日本共産党は、「暴力主義的破壊活動」の方針なるものを、党の正規の方針として持ったり、実行したりしたことは、ただの一度もありません。」(赤旗)
日本共産党が衰退したフランス共産党と違ったのはソ連共産党と距離を取って独自路線を敷いていたからであり、だからこそソ連が崩壊し、冷戦が終わっても日本共産党は一定の力を維持しています。そのことは中国共産党との距離についても言えます。1950年代の日本共産党の分裂と再統一ですが、今から振り返れば賢明だったのです。
今週木曜日の2月27日は1933年に起きたドイツ国会議事堂放火事件から87年目に当たります。当時を振り返ると1933年1月にヒトラーは内閣を組織していましたが、より強固にするためいったん解散して3月5日にもう一度総選挙を行うことにしていました。ところが2月27日にドイツの国会議事堂が放火されて炎上し、ヒトラー達ナチスは共産主義者の陰謀だとして共産党議員を含めて共産主義者は次々と逮捕拘束されてしまいました。その結果、3月5日の選挙でナチス党がさらに議席を増やし、国会を無視して行政府が法律を制定でき、ヒトラーの独裁を可能にする全権委任法を制定します。共産党を委縮させて制定したこの全権委任法によって、ヒトラーはナチス党の一党独裁体制を築き、民主的なワイマール憲法の機能を永久に止めてしまったのです。安倍政権の幹部である麻生副首相には憲法改正のためにはナチスを見習うべきだ、という失言があったことは多くの人が記憶にとどめていると思います。安倍政権の背後にいる改憲を目指す日本会議の憲法学者もドイツの歴史を研究したとインタビューで答えています。
これまでの日本の政治文脈を振り返れば、安倍政権は「共謀罪」(※)を制定し、幅の極めて広い犯罪を対象にしています。犯罪が行われていなくても共謀した、というだけで構成要件を満たし、多数の人を逮捕しうるのが共謀罪です。日本共産党は2015年以来、野党共闘を推進してきた政党です。今回の「桜を見る会」の疑惑が国会で追及されたのも赤旗の記事が発端であり、それに基づいた日本共産党の田村智子議員の質問がきっかけでした。日本維新の会の質問と安倍首相の回答が国会で行われたのは、このような政治文脈の中でした。日本維新の会の議員の質問にあるように、共産党を含めた野党連合政権の誕生に対する不安を背景にした質疑だったのです。1933年のドイツと同様なことが起きて、総選挙が行われれば、野党共闘は混乱の中に敗北してしまう可能性もあります。ドイツの二の舞にならないための警戒が必要です。
※日弁連は共謀罪法の廃止を求めます
https://www.nichibenren.or.jp/activity/human/complicity_secret/complicity.html 「日本の刑法では、法益侵害の結果を発生させた行為(既遂)を処罰するのが原則です。ただ重大な犯罪については、結果発生の現実的危険のある行為を行ったが結果発生に至らなかった場合を「未遂罪」として、未遂にも至らない犯罪の準備行為は「予備罪」として、例外的に処罰しています。予備罪は例外中の例外です。ところが「共謀罪」は、277種類もの犯罪について、予備罪よりも更に前の段階の「計画」(共謀・話し合い)を処罰するもので、処罰の範囲を飛躍的に拡大するものです。」 「本法律では、「計画」、「準備行為」、「組織的犯罪集団」などの用語が使われています。これらの概念は不明確な上、国会での政府の答弁も二転三転しています。これでは、市民にとっては、何が犯罪であり、何が犯罪でないのかを知ることができません。」
南田望洋
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