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2020年03月04日21時51分掲載
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公共放送としての役割を怠り、検察官の定年延長問題で世論をミスリードするNHK Bark at Illusions
安倍政権が東京高等検察庁の黒川弘務検事長の定年を延長したことが問題になっている。検察庁法では検察官の定年延長について規定がないため、安倍政権は国家公務員法を根拠に黒川弘務の定年延長を閣議決定したが(1月31日)、国家公務員法の定年延長の規定は検察官には適用されないというのがこれまでの政府の見解だった。政府が法解釈を変更した経緯についての法務大臣らの答弁も滅茶苦茶で、法解釈変更の正当性が問題視されている。しかし「健全な民主主義の発展と文化の向上に役立つ、豊かで良い放送を行うことを使命としてい」る(『NHK倫理・行動憲章』)はずのNHKは、この問題について十分に説明することを怠っている。
NHKの主要ニュース番組であるニュース7とニュースウオッチ9は、この問題について、2月27日までにそれぞれ4回放送している(ニュース7:20/2/12、20/2/17、20/2/26、20/2/27、ニュースウオッチ9:20/2/20、20/2/21、20/2/26、20/2/27)。しかし、ほとんどが国会での野党議員の質問に対して、
「(検察官の定年について)特例が何かということは、検察庁法を所管する法務省の解釈に任せられております。定年制度自体は……他の公務員と同じようにとっているという風に解釈をいたしますので矛盾はしていない」(森雅子、ニュース7、20/2/12)
とか、
「検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、検察庁を所管する法務大臣から閣議請議より閣議決定されたものであると、何回か答弁をさしていただいておりますが、何ら問題無いものと考えております」(安倍晋三、ニュースウオッチ9、20/2/26)
などと切り返す安倍政権の説明を無批判に紹介するだけでニュースを終えており、何が問題になっているのかほとんど説明していない。最も詳しく説明しているのはニュースウオッチ9(20/2/27)だが、それでも
「法務省は先月下旬に国家公務員法の解釈を変更し、検察官の定年延長が可能になったと説明しています。一方、野党側は、後付けの法解釈だなどと批判。検察の独立性や三権分立を踏みにじる暴挙だとしています」
と述べているだけだ。またニュースウオッチ9(20/2/21)は、全国の検察幹部が集まる会議で検事正の一人が検事長の定年延長に関して批判的な意見を述べたことや、憲法学者などが抗議声明を発表したことを伝え、定年延長に対する批判が野党議員だけでなく検察内部や市民社会にも広がっていることを伝えているが、その後、
「検事長の定年延長について法務省は、検察官の定年による退職は、広く捉えれば国家公務員法の定年による退職に包含される。検察官にも国家公務員法の規定が適用されると解するのが自然だなどとする文書を国会に提出しています」
と説明して、法務省の見解に何ら疑義を呈することなくニュースを終えている。法務省が提出したというその文書自体が問題になっているというのに……。 NHKのニュースを見ると、安倍政権は法律に則り正当な手続きを踏んだうえで黒川弘務検事長の定年延長を決定し、国会での説明責任もしっかり果たしているかのような印象を受ける。
しかし公共放送を自負するNHKの放送内容は、「放送の公平・公正を保ち、幅広い視点から情報を提供」することを宣言した自らの『行動指針』に反して偏っている。 ニュース7とニュースウオッチ9は、次のような重大な事実を一度も伝えていない。
・ 国家公務員法に定年延長制度を導入する際の国会審議(1981年)で、人事院は、定年延長は「検察官には適用されない」と答弁していること。 ・ この1981年当時の人事院の見解について、人事院の松尾恵美子給与局長が2月12日の国会答弁で、現在も「同じ解釈を引き継いでいる」と述べていたこと。 ・ その翌日の2月13日に安倍晋三が衆議院本会議で、「検察官の勤務延長については、国家公務員法の規定が適用されると解釈する」と答弁した後の19日に、松尾恵美子が12日の答弁を撤回し、「つい言い間違えた」などと弁明したこと。 ・ 前出のニュースウオッチ9(20/2/21)が言及した、法解釈変更の経緯を示すために法務省が2月20日に国会に提出した文書は、文書を作成した日付が記載されておらず、政府は作成日時を証明できる電子データ(プロパティ)の提出を拒んでいること。また文書は正式な決済がとられていないことが判明したが、法務大臣であるはずの森雅子が「口頭決裁」で問題ないと豪語していること。 ・ 1980年に政府が作成した国家公務員法の改定案に関する「想定問答集」には、国家公務員法に導入される定年延長制度について、検察官には「適用が除外される」と明記されていたことが明らかになり、法解釈の変更で検察官の定年を延長できる余地がないことが明白になったこと。つまり国家公務員法の解釈変更で検察官の定年延長が可能になったという政府のこれまでの主張が覆されたこと。 ・ 黒川弘務は安倍政権下で法務省の官房長や事務次官を務めるなど、安倍政権に近いと評される人物であることから、安倍政権には検察内部の人事に介入し、黒川弘務が検事総長になる道を開き、桜を見る会を巡る問題など安倍晋三の不正に対する捜査を回避する思惑があったのではないかと疑われていること(桜を見る会を巡る疑惑では、既に憲法学者らが1月14日に背任容疑で安倍晋三に対する告発状を東京地検に提出している)。
立憲民主党などは2月27日、森雅子に対する不信任決議案を提出したが、自民・公明・維新などの反対多数で否決された。ニュース7(20/2/27)が何のコメントもつけずに紹介しているように、森雅子は採決後に次のように語った。
「法務行政への取り組みまたは国会での答弁の正当性、真摯な姿勢が理解していただけたものと思っております」
不信任決議案の否決は、市民の「理解」と関係なく、決議案は与党とその補完勢力の数の力で否決されたというだけのことだが、もし森雅子の法務大臣としての「正当性」と「真摯な姿勢」が市民に理解されているなら、それはNHKのおかげだ。
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