TVスポンサー法案の提案シリーズ3回目です。この法案は消費者が商品を買ったり、サービスを買ったりする際に、それらの提供企業がどのようなTV番組のスポンサーになっているか、そして、その費用の上乗せ分を消費者が負担するかどうかの選択肢を得ることができることを狙いにしています。つまりは、対象となる番組は民放です。
NHKだけでなく、民放も特権を得て放送業務をしていることには変わりませんが、そこには公共性が課せられています。もちろん、放送局によって編集方針の違いもあり、編集の自主権もあるべきですが、だからと言って事実を捏造したり、重要な報道すべき事象を政権に忖度して取り上げなかったりするようだと公共性は失われたと判断することができます。BPOなどの放送倫理を審査する機構もあることはありますが、日々の放送内容まで把握することはできません。上記のような観点に立つと、第二次安倍政権以後、民放の中には公共性を失いつつある放送局があります。そうした場合に視聴者、あるいは消費者には何が可能なのでしょうか。
1990年代はバブル経済の崩壊で、年間3万人の自殺者が出る時代でした。その当時、民放のニュース番組のスポンサー企業にサラ金の武富士がありましたが、その当時、サラリーマン金融や闇金融の借金の返せない多重債務者が自殺をすることがブームになっていました。武富士のCMは武富士ダンサーズ(※)で記憶にあるかたも多いはずです。そのようなスポンサーを持つニュース番組が果たしてこの問題に真摯に取り組むことができたでしょうか?もちろん、どんな企業であれ、多かれ少なかれ同業のビジネスで社会問題が生じる可能性がありますが、1990年代は多重債務や取り立ての恐怖が大きな問題になっていた時代だったことを忘れてはいけません。当時は非常に高い利息が大きな問題になっていました。そんな中、放送局は借金しても消費を煽る文化を大々的に宣伝していたのです。
近年目立つのは報道的内容を含む番組でありながら、お笑いタレントや有名人がニュース映像やニュース解説を見て、それにリアクションをしたり、対談をしたりするスタジオ番組が増えています。お笑いタレントや有名人が政治やニュースを語っていけないことはありません。しかし、視聴率を稼ぐために娯楽化して、ニュースの本質が歪曲されるようなことがあってはいけないと思います。つまり、こうしたスタジオ番組も公共性を帯びているのです。そして、これらのスポンサーとなる企業も制作費を提供する以上、企業の責任を持っています。そして、その責任は〜見えなくされていますが〜そのコストを最終的に支払う消費者に転嫁されています。消費者はその商品を選ぶことに責任があるのです。
そうしたことを考えると、昨今、ニュースのあり方に疑問を持つ人々がYouTubeなどで独自に自主制作したニュース映像をUPするようになりました。中には放送局よりもクオリティの高いものが複数存在しています。しかし、その制作費は放送局の制作予算=スポンサー料と比べると比較になりません。ニュースの質や公共性を考えた場合、これは著しく不公平です。放送局以上に公共性を持つ番組がYouTubeにUPされながらも、ほとんど手弁当で作られているのです。そしてそれらの番組は少額でも寄付を受け付けています。
一方でニュースを娯楽化する番組が地上波の放送局で流され、一方で真摯に作られた番組がYouTubeにUPされていて、その経済基盤は恐ろしい格差があります。YouTubeに映像をUPしている企業(グループ)に寄付をする場合はたとえそれが200円とか500円であっても、寄付をする人はきちんと政治的な行動あるいは社会的な行動をしていると認識できます。しかし、民放のニュースにおいてはその番組に賛成であれ反対であれ、無意識のうちに日々徴収されるのみです。この矛盾を解消するには地上波の番組を消費者がより具体的にチェックし、アクションを起こせるように制度をデザインする必要があると思います。そして、その一歩が企業がどの番組のスポンサーになっているかの情報開示です。その商品やサービスを受け取る際に、チェックできるようなスポンサーになっている番組の明示を義務付けるべきです。TVスポンサー法の構想はそれを促す法案の構想です。
※武富士ダンサーズ 「武富士ダンサーズ(Takefuji Dancers)は、消費者金融業を運営していた大手企業・武富士(2010年倒産)のテレビCMに出演していた女性ダンサー集団」(ウィキペディア)
●税金で政党CM 自民・民主とも 100億円超 電通・博報堂が受注トップ (赤旗 2007年)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-06-02/2007060215_01_0.html ●給付金業務、97%を電通に再委託 不透明な769億円
https://www.asahi.com/articles/ASN5Y6R35N5YULFA00P.html
南田望洋
■TVスポンサー法の制定を 宣伝費を払うかどうかは消費者の権利として まずは表示から
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005151756405 ■TVスポンサー法の制定を 宣伝費を払うかどうかは消費者の権利として まずは表示から 2
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005160215166
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