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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2020年05月28日10時11分掲載
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司法
元裁判官有志が「少年法適用年齢の引下げ反対」の意見書 法務省に「歴史の批判に耐える審議」望む
2020年5月26日、少年法の適用年齢を引下げる「改正」に反対する元裁判官有志177名による意見書が法務省(法務大臣)に提出された。現時点で名前が公表されたのは、呼掛け人の9名だけであるが、追って177名全員の名前が公表される予定である。このなかには、元高裁長官5名、元家庭裁判所長74名、最高裁家庭局OBなど、幅広い元裁判官が含まれ、現行少年法の理念と再犯防止機能が有効であると訴えている。先に、検察庁法「改正」に関し、元検察官OBや元特捜検事OBによる反対意見書が出され、法案審議に少なからぬ影響を与えたのと同じく、元裁判官による反対意見書は前代未聞のことであり、今後の影響力が注目される。意見書はコンパクトなものであり、参考までに全文を紹介したい。(伊藤一二三)
法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会長殿
「少年法適用年齢引下げに反対する意見書」について
私たちは、少年事件を担当したことのある裁判官有志です。現在、貴部会において、少年法適用年齢引下げ及び若年者に対する新たな処分について検討がされております。その概要は、民法等により成人とされた18、19歳の年齢層について、少年法の適用を排除した「新たな処分」を新設しようとするものであります。しかし、この年齢層について少年法の適用を排除する合理的根拠は存在しません。その理由は、添付の「意見書」記載のとおりであります。
この意見書について、元裁判官に賛同の署名を求めたところ、連絡が取りにくい状況にあるにもかかわらず、本年4月下旬から5月初めにかけての短期間において、呼掛け人も含めて、166名もの賛同の署名が集まり、現在177名となっています。多くの元裁判官が18歳、19歳の者について、少年法の適用を排除し、「新たな処分」の対象とすることに危惧感を抱いていることを示しており、従前どおり、18歳、19歳の者についても、現行少年法の適用に基づく処遇を続ける必要があるとの認識を表明しています。
貴部会におかれては、歴史の批判に耐え得るような適切な審議を行っていただくよう切に望むものであります。 よって、本日、ここに、少年事件を担当した経験のある元裁判官有志である別紙の177名の総意として、添付の意見書を提出するものです。
2020年5月26日
呼掛け人 (氏名・修習期) 池 本 壽美子(31期) 大 内 捷 司(19期) 大 塚 正 之(31期) 奥 山 興 悦(18期) 川 尻 恵理子(56期) 木 谷 明(15期) 野 崎 薫 子(25期) 林 醇(22期) 若 林 昌 子(17期) (五十音順)
少年法適用年齢引下げに反対する意見書
少年事件を担当した元裁判官有志一同
現在、法制審議会の少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会(以下「部会」といいます。)では、民法における成人年齢の引下げに伴い、少年法適用年齢の引下げについて検討がされています。
私たちは、裁判官としての少年事件実務経験から、現行少年法実務の現状、少年法の基本的理念及び刑事政策的視座の重要性を考慮し、少年法適用年齢問題について、下記の理由により意見表明する次第です。
【1】 現在、家庭裁判所では、再犯のおそれなど犯罪的危険性(要保護性)の高い18歳、19歳の少年については、家庭裁判所調査官による調査、裁判官による審判を通じて内省を深めさせ、被害(者)に対し真摯に向き合わせるとともに、必要に応じて少年院に送致し、あるいは、保護観察に付するなどして、少年に十分な教育的措置(保護的措置)を講じ、非行性を除去するとともに、非行に陥りやすい環境を調整することを通じて再犯防止を図っています。 【2】 家庭裁判所でのこのような少年事件の取扱いについては、部会を始め、学者・実務家の間においても、18歳、19歳の少年について効果的な処遇が実施されていて少年法適用年齢を民法の成人年齢と必ずしも一致させる必要がないとの共通理解のもとで、議論がされています。 【3】 少年非行の件数は年々減少を続けており、現在の取扱いを大きく変更しなければならないような事情は生じてはいません。現在でも、16歳以上で重大な事件を起こせば、原則として刑事処分となっています。 【4】 少年事件が刑事事件として扱われると、その多くが懲役刑の執行猶予又は罰金刑となり、少年の非行性が除去されず、内省が進まないまま放置されるおそれがあります。更に18歳又は19歳で懲役刑等の前科を有することとなった場合、就職が困難となり、逆に前科があることが勲章となる暴力団等の反社会的集団の予備軍となる可能性が高まります。そうすると、更生が難しくなり、ひいては見過ごすことのできない再犯、犯罪被害の再発の危険が高まります。 【5】 18歳又は19歳の非行少年の多くは高校生又は専門学校生、大学生であり、大半は自立できておらず、その非行は、年齢的な抑制力の欠如に起因しており、成人と同様の刑事罰を科することが非行の抑止力になりにくい現実があります。その反面、これらの少年は、可塑性が高く、家裁の教育的措置(保護的措置)や保護観察、少年院収容などの教育的処遇による立ち直り(再犯防止効果)が期待できます。 【6】 特に、最新の脳科学的知見によれば、18歳、19歳程度の青少年の脳の構造は、大人と異なり、未成熟である反面、可塑性が高く、その時期に教育的処遇を施すことにより、犯罪抑止効果が上がるとされ、既に米国では、少年に対する厳罰化を改め、その未成熟性に対応する処遇へと変化してきています。 【7】 現在、部会では、18歳、19歳を成人と少年の中間層として位置づけ、新たな処分が検討されていますが、その内容自体が曖昧であり、この新たな処分が立法化されても、これまでと同じ効果が期待できるか明らかではなく、上記の問題の解決にはつながりません。
以上の理由により、私たちは少年法適用年齢の引下げに反対します。 (以上)
2020年4月
(住所又は事務所所在地・事務所名)
(修習期・氏名) 期 ㊞
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