パリの街角、フードデリバリーのプラットフォーマー企業、Frichtiの前に先週金曜、黒人数十人と左派政党「服従しないフランス」のレイラ・シャイビ欧州議会議員らが集まり、抗議の活動を行っている様子がツイッターで発信されていました。シャイビさんは「立ち上がる夜」という2016年春の市民運動の参加者の一人。その際はホームレスの増加や不動産投機などについて、住宅問題の面から改善に取り組んでいました。その後、昨年、政党から立候補して議員となったばかりです。シャイビ議員の隣にいる女性は同じ「服従しないフランス」のパリ市議会議員、ダニエル・シモネ氏です。
https://twitter.com/L_insoumission/status/1270297758935769094 この日、シャイビさんらが駆けつけたのはFrichtiに労働者の待遇を改善し、正規雇用にせよ、と訴えるためです。集まった労働者たちは、これまで二輪車で食品を配達していた黒人の人々。3月半ばから5月まで新型コロナウイルス対策として、マクロン大統領の指示でフランス人は自宅に籠って過ごしていましたが、そうした人々に感染リスクを冒しながらも食品を毎日届けてくれたのがこれらの労働者たちです。彼らは「サンパピエ」(紙なし=労働許可証を持たない人)すなわち、フランスで正規の労働許可を得ていない不法労働者です。
映像に出てくる黒人労働者、イブラヒム・キテさんはフランスの理想を信じて、自分たちを正規に雇ってほしいと訴えています。みんな雨の日も雪の日も、真夏の猛暑の日も毎日、食品を配ってきたのだから、と。彼らは正当な報酬を与えてられていないばかりか、話の中では時給5ユーロと語られています。これはフランスの最低賃金よりもかなり低い額です。その上、国家から助成金を受けることもできません。また、彼らは市民が外出禁止から解除されたのちは、使い捨てるように労働から排除されようとしていると訴えています。
それはどういうことか、と地元のフィガロ紙の記事を参照すると、「サンパピエ」の人々はデリバリーの仕事にアクセス権が与えられないようになったのだということでした。少し前まで、コツコツ自宅にこもるパリ市民のために働いてきたのに、ひどい、という思いがそこには込められています。なぜ今かと言えば記事によると、リベラシオン紙にFrichtiのサンパピエの人々の労働条件のひどさが報じられ、実際の労働者のケースが取材されていたことが引き金となったようです。以前から言われていたことですが、サンパピエの人々はその弱い立場ゆえに法外な悪条件で仕事をせざるを得ないのは常態化していたことでした。これがきっかけで、Frichtiが労働法順守という方向に突如舵を切ったのですが、たとえサンパピエであったとしても、これまで働いてきた人々からすると、あまりにも労働者の身になっていない、ということなのでしょう。
デモの時、労働者たちはFrichtiの職員と電話で話をした模様ですが、まだまだ今後の展開が注目されます。
■Figaro <En colere, des livreurs sans-papiers manifestent devant des locaux parisiens de Frichti>
https://www.lefigaro.fr/social/en-colere-des-livreurs-sans-papiers-manifestent-devant-des-locaux-parisiens-de-frichti-20200605#xtor=AL-201
■レイラの4度目の挑戦〜欧州議会議員に当選〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201905281430292 ■フランス国会議員選挙 「服従しないフランス」 レイラ・シャイビさんはマクロン新党の候補者に敗れる
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201706200954022 ■フランス政治の新しい力 ” La France insoumise ” ( 服従しないフランス)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201706011016254 ■フランスの現地ルポ 「立ち上がる夜 <フランス左翼>探検記」(社会評論社)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201807202152055
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