・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・農と食
・国際
・アジア
・核・原子力
・入管
・反戦・平和
・教育
・文化
・中国
・市民活動
・米国
・欧州
・みる・よむ・きく
・検証・メディア
・外国人労働者
・司法
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年12月02日
・2024年11月30日
・2024年11月29日
・2024年11月28日
・2024年11月27日
・2024年11月26日
・2024年11月22日
・2024年11月21日
・2024年11月20日
・2024年11月18日
|
|
2020年06月26日14時24分掲載
無料記事
印刷用
検証・メディア
朝鮮半島の平和と非核化を求めるなら、米国と韓国の合意不履行を問題にすべきだ Bark at Illusions
韓国の脱北者団体が朝鮮のキム・ジョンウン委員長を非難するビラを散布したことをきっかけに朝鮮政府は韓国に対する批判のトーンを高め、今月16日には南北両首脳によるパンムンジョム宣言(2018年)に基づいて設置した南北共同連絡事務所を爆破した。「南北融和の象徴」と言われる共同連絡事務所が破壊されたことは残念だが、今回の事態を招いたのは、パンムンジョム宣言など南北首脳会談での合意が未だに実現できていないことの結果だと捉えるべきだろう。マスメディアは朝鮮政府の意図をいろいろと推測しているが、どうすれば南北間の合意を実現できるかにもっと焦点を当てるべきだ。
朝鮮政府が共同連絡事務所を爆破した狙いについて、マスメディアは朝鮮国内の不満をそらそうという思惑があるとか、韓国を挑発して「譲歩」を得ようとしているとか、あるいはキム・ジョンウン委員長の妹のキム・ヨジョン朝鮮労働党第一副部長の「権威づけ」を狙っているのではないか、などと分析している。例えば、
「北朝鮮は国際的な経済制裁に追い打ちをかける形で、新型コロナウィルスの影響によって最大の貿易相手国である中国との国境を閉鎖せざるを得なくなり、経済状況の悪化に拍車がかかっていると見られています。北朝鮮指導部は今年10月の朝鮮労働党創立75年を重要な記念日と位置付けていまして、国内の不満を抑えつつ結束の強化を図る必要に迫られています。そうした中で、外に対する敵意を煽るというのは、北朝鮮にとっていわば常套手段です」(NHKソウル支局長・高野洋、ニュースウオッチ9、20/6/16)
「北朝鮮内にくすぶる体制への不満をそらすとともに、危機をあおって韓国から譲歩を引き出し、米朝交渉の打開にもつなげる狙いがみえる」(日経 社説20/6/18)
「北朝鮮への国連制裁は16年から大幅に強化され、外貨獲得の道が次々と閉ざされた。最近は、新型コロナウイルスの影響もあって首都の市民生活まで苦しくなったと見られる。金氏には、挑発によって苦境を打開しようという思惑があるのだろう」(毎日 社説20/6/18)
「ヨジョン氏が前面に立って強硬な対応を主導している背景には、その指導力を強調し、権威づけを図ろうとする動きがあると見られます」(高野洋、ニュース7、20/6/17)
いろいろと憶測を立てることはできるが、問題は朝鮮半島の緊張がこれ以上高まることを防ぎ、再び朝鮮半島の平和と非核化に向けて動き出すにはどうすべきかということだ。 毎日新聞(20/6/17)や日本経済新聞(20/6/19)なども伝えているように、朝鮮政府が今回取った措置には、2018年の南北首脳会談で合意したパンムンジョム宣言や9月平壌共同宣言での約束を、韓国政府が履行していないということが背景にある。例えば、南北両政府はケソン工業団地やクムガンサン観光事業の再開などで合意しているが、国連制裁などが障壁となって実現できていない。また韓国政府は米国との合同軍事演習を行ったり、ステルス戦闘機F35Bなどの最新鋭兵器を導入するなど、南北間の合意に反する行動をとってきた。
キム・ヨジョンは共同連絡事務所爆破後の談話(朝鮮中央通信20/6/17)で、脱北者が行っている「対北ビラ散布」はパンムンジョム宣言に違反していることを指摘した上で、「いったい、板門店宣言と9月平壌共同宣言で南朝鮮当局が履行すべき内容をまともに実行したのが一条項でもあると言うのか」と述べて、米国との「同盟」を優先して南北間の約束を守ろうとしない韓国政府を痛烈に批判しているが、彼女が述べたことは筋が通っている。こうした状況を踏まえれば、朝鮮にとって共同連絡事務所は既に「存在価値と象徴的意味を喪失」(朝鮮中央通信20/6/17)していたのだ。 朝鮮半島の平和と非核化を実現させるためには、韓国政府が合意を履行しなかった──あるいは米国政府の圧力できなかった──ことを問題にすべきだ。
同じことは、米朝関係についても言える。米朝両政府はシンガポールで行われた2018年の米朝首脳会談で「新しい米朝関係の構築」と「朝鮮半島の永続的かつ安定的な平和体制の構築」、「朝鮮半島の完全な非核化」、「戦争捕虜や行方不明兵の遺骨回収と返還」に向けて行動することを約束しているが、朝鮮側がミサイル施設の一部解体や米兵の遺骨返還など合意を着実に履行する一方で、米国政府は米韓合同軍事演習の縮小や延期しか行っていない。 朝鮮のリ・ソングォン外相はシンガポール合意から2年を迎えるにあたって発表した談話(朝鮮中央通信20/6/12)の中でこうした経緯を問題視し、「実際に朝米関係が良くなったのは一つもないのに、シンガポールで握手した手を引き続き取っている必要があるか」と述べて、米国政府との合意を維持することに対して疑問を呈している。
これ以上、関係国の相互不信を高めて東アジアの緊張を高め、核戦争の一歩手前だったシンガポール合意前の状況に後戻りするわけにはいかない。朝鮮半島の非核化と平和のために、市民社会やマスメディアは米韓両政府に朝鮮政府との合意の履行に向けて行動するよう迫るべきだ。
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
|