8月6日、広島では慰霊の会を執り行った。 アメリカは終戦当初から、原子爆弾の被害を含めた情報を隠したがり、日本政府はアメリカ政府に気を使って触らないようにしてきたいきさつがある。それはとりもなおさず、国籍を問わず被爆者全員、並びに日本など被爆した国を「ないがしろにしてきた」ことに他ならないと思っている。
物語は、戦後7年、赴任してきた原爆の惨禍を知らない高校の先生が、授業中にラジオから流れる「0の暁 原子爆弾の発明・製造・決戦の記録」の朗読を生徒たちに聞かせている。原爆投下直前の原爆を積んだ飛行機の米兵の気楽な会話が流れ、いよいよ投下が迫る…。その時一人の生徒が鼻血と共に倒れ、白血病と診断されて入院。彼女は当時の記憶を手繰る。救護所に向かう船上で、娘を抱えて励ましている母親。目が見えなくなった娘さんがお弁当を差し出し「母が作ってくれたけど、もう食べられませんから」と。そして自分の名を名乗り、母に伝えてくれと言って息を引き取る。
学童疎開中に両親を亡くした少年のもがきも語られる。 教室には、被爆体験者がいるのだ。あの時の恐怖に突き落とされても、何ら不思議はない状況である。先生はそこから自分の生徒やその周りの人々が抱えている「広島」の現実を知っていく。
この映画『ひろしま』は、75年前の8月の広島の「記憶」である。つまり、人間が手に入れた核エネルギーとは何だったのかを、人類が忘れないための映画である。 全国の教職員労組がお金と8万人のエキストラを出し合い、1953年に関川秀雄監督によって完成した映画だ。被爆者でもある広島大学の長田新教授が編纂し、51年に出版された『原爆の子〜広島の少年少女のうったえ』(岩波書店)をもとにしている。これは原爆投下前後を子どもたちが綴ったもので、被爆の記録がほとんどなかった当時の貴重な証言集でもある。同じ本をもとにし52年に公開された新藤兼人監督の『原爆の子』があるが、当初は新藤兼人監督で制作するつもりだったが、シナリオ段階で意見が一致せず、別個に制作したいきさつがある。
51年に講和条約締結後、それまでの報道規制が緩和され、間隙を縫っての出版であり、映画製作であったと聞く。その後再び厳しくなったのか、この『ひろしま』は、配給会社の松竹が忖度したのか、アメリカを刺激するような部分の手直しを拒否したため、全国一斉封切り(いわゆるロードショー)はされなかった。とはいえ、2本立て館や上映会では、やっていた。 実はその頃、小学生だった私は、学校から見に行くことになっていたが、事情があって行けなかったので、近所の中学生を誘って行った。どんな映画かもリサーチしたのか、しなかったのか今ではわからない。彼女はオイオイ泣いていたのに、私は体が固まってしまい、覚えているのは銀行の階段の焼きついた子どもの影のみ。涙一滴流れなかった。それが、最近チャンスがあって、また見ることができた。
今見れば、この映画の生い立ちから現在までが、私たちの核への向き合い方、考え方の歴史でもあるといえる。私たちが忘れてはいけないテーマでもある。
この作品は、DVDとしても販売されている。2013年にDVD化されていているが、古いフィルムからのDVD化で、画像は相当に痛んでいるとか。しかし2018年秋に完成したリマスター版での公開・上映活動が、助監督だった小林大平氏の孫、小林開氏によって行われている。昨年の8月NHKなどで放送され、また上映会もあったが、今年も各地の映画館で上映が始まった。
監督:関川秀雄 /104分 DVD:紀伊国屋書店3800+税 現在の上映情報(リマスター) ・大坂 シネヌーヴォ 8/1(土)〜8/7(金) 11:00〜 15:15〜 http://www.cinenouveau.com/ ・大分 シネマ5 8/1(土)〜8/7(金) http://www.cinema5.gr.jp/ ・群馬 高崎電気館 8/1(土)〜8/20(金) https://takasaki-denkikan.jp/ ・浜松 シネマイーラ 8/7(金)〜8/20(木) http://cinemae-ra.jp/ ・広島 八丁座 8/7(金)〜8/13(木) https://johakyu.co.jp/schedule/month.html ・名演小劇場8/8(土)〜8/21(金) http://meien.movie.coocan.jp/ ・横浜シネマリン8/15(土)〜8/21(金) https://cinemarine.co.jp/ ・シネマハウス大塚8/22(土)〜8/28(金)(24日休館) https://mikata-ent.com/m-cinema/567/ ・奈良市西部会館市民ホール 8/29(土)30(日) https://www.nem-shiteikanri.jp/ …/nara/cg…/event_wn2/list.cgi
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