サンぺのイラストが大好きで、つい買ってしまいます。 シンプルな線のイラストをよく見ると、クスッと笑ってしまうようなユーモアと暖かさ、哀しさ、そしてたまに毒もあります。
この本はパトリック・モディアノの文章にサンペが挿絵を描いていて、児童書という範疇です。 「児童書」といっても、実は「児童」の時に読んでも訳がわからず、大人になってから面白いと思う、そういう本です。 私にとっては「星の王子さま」「モモちゃんシリーズの後の方」などがそれに当たるのですが、それでもなお、児童に読んでもらいたい気もします。
なぜなら児童の時は情景が鮮明に記憶の中にことん、と落ちるからです。 その後少し大人になってからまた読み直してもらいたい。 そして自分と答え合わせをしてみてもらいたいのです。
この本でもサンペの描く、パリとニューヨークの光景を楽しみつつ、モディアノの文章で迷子になっていただきたいです。
この本の主人公、メガネの「カトリーヌ」は倉庫で働く「パパ」と二人で、パリに暮らしています。 一方アメリカ人のママはアメリカで暮らしています。 簡素化されたパパの名前にせよ、バレエの先生の素性にせよ、バレエ教室で出来たお友達にせよ、何もクリアなことはわかりません。まるでメガネを外したときの彼女のように。 そんなふうに思い出は出来ていて、でも大人になってみると、少しわかるようなわからないような。
おそらく彼女にとって、確実なことは、この本の最後に書かれています。(以下本文より)
パパとママが住んでいるレンガ造りの大きな建物の下で、私たちはタクシーを降りました。 アパートの上の方にある窓の一つに、パパのシルエットがうつっています。ネクタイを結んでいるようです。 パパはきっと、こういっているのでしょう。 「さあ、がんばろう」と。
スギハラ シズカ (東京下町に暮らすウェブデザイナー)
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